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    ぎぃ。

    @gigigigiiiii
    ぎぃ。だよ!!!
    ポケモン絵と創作絵と過去絵とかもなんかアップ出来たら見やすいんじゃないでしょうか?

    二次創作SSもおいてるよ。ラッシャイ!!

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    ぎぃ。

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    🐍の怪異宇と門倉さんが寒い日にわちゃわちゃ

    しずく、しずか、しずむ【二〇】「ただいま」と言えば、「おかえりなさい」が返ってくる。
    それが、当たり前になってしまった。

    今日も。
    「ただいま」
    「おかえりなさい」
    何気ない、日常の一コマだ。

    出迎えてくれる。いつも通りに。
    だが、暗がりから俺の顔を確認したウサミは、するするとまた闇へと引き返していく。

    (今日は、いつにも増して冷え込んでるからな)

    怪異は、すっかり炬燵に封印されてしまっていた。

    一人暮らしだからいいかと使っていた小さな炬燵は、怪異には手狭だった。
    白蛇の尾は入りきらず、窮屈そうにとぐろを巻き、それに押し出される形で俺の足は完全に締め出されてしまった。
    だからこいつのために、俺はわざわざ大きな炬燵を買いに行ったのだ。
    まさか壊れてもないものを買い換えるなんてな。
    そうしたら、この通り。
    尾の先まですっぽり収まり、上半身も肩まで埋もれ、ぬくぬくと気持ちよさそうにしている。
    俺はさ正直、服を着た方が絶対にあたたかいんじゃないかと思ってな。
    とにかく見てるこっちが寒いのよ。
    だから冬の始まりに、俺は厚手のマフラーを買ってやった。
    巻いてやると、顔をうずめて嬉しそうにはしていたが──待てども、ちっとも温まった様子はない。
    当然だ。こいつには、熱源がない。 どれだけ着込んでも、こいつの体温は上がらない。
    服はあくまで「人間の文化に興味がある」から身につけたり、真似したり、なぞっているだけ。
    外気を多少は遮るかもしれないが、本質的な寒さを防ぐことはできない。
    付けなれないせいか、マフラー姿はどこか窮屈そうだった。
    結局、寒さ対策としては意味のないものを贈ってしまったな、と。
    しかしそれ以降も「門倉さんがくれたものだから、つけていたいです!」と言って、出かけるたびに巻いてくれとせがむようになった。

    似合うと思って選んだんだ。 仕舞い込まれるよりは、な……。

    ただ、店に入っても、暖かい屋内でも、絶対に外そうとしないので、このままだと夏にも巻き続けると言いそうな勢いだ。
    だから俺は今から、春までに上手い説得方法を考えておくつもりだ。
    話を戻すと、怪異は、炬燵に封じ込められた。
    正直──大人しくしてくれて助かっている。
    ゆっくり風呂に浸かり、冷蔵庫からビールを取り出し、湯冷めしないうちにウサミの尾の隙間に足をねじ込む。テレビを眺めながら、静かで穏やかな週末を過ごす。

    なんてさ。そんな、ほろ酔い気分だったのに。

    「……いッ!?」
    炬燵の中。
    わざわざ避けていたウサミの尾が、俺の足に絡みついてくる。
    「つめたいです」
    「なんだよ、あったかいだろ」
    冬の暖房費は、ウサミと暮らし始めてから跳ね上がった。
    寝室にもヒーターを置き、寝る前には布団を温めるようになった。
    そうしないと、寝ている間に俺の体温をまるごと持っていかれるからだ。
    「そうじゃなくて、僕にです」
    するり、するり。尾が這い上がってくる。
    「それは……具体的にどこよ?」
    「お風呂にも誘ってくれないですし」
    「いや、一回も誘ったことないからね」
    勝手に入ってくるんだ。
    狭い風呂に無理やり入ってきて、ギチギチになって、足を折って、お湯は溢れてちょっとしか残らない。
    「そもそも!おまえは最近、炬燵から出てこないだろ。俺は、少しでも寒くないようにって── うッ」
    伸びる尾が、股の間を撫でていく。
    「僕の肌がつめたいから、門倉さんもつめたいんですね」
    「そ、それは…… まあ……」
    「僕がつめたいから、触れたくないんですか」
    「ちがうって! 誤解だ!」
    必死で否定する俺を、さらに絡め取るように、尾が脚を伝って登ってくる。
    「僕は、あなたの熱がほしいのに!」
    そう言い放ち、ウサミはするり、と炬燵の中に潜り込んだ。
    「う、ウサミ!?ちょっと待て!!」
    炬燵という、暗くて温かな箱の中で。  ウサミの体が、蠢く。
    腰を引こうにも、がっちり足を捕まれて、逃げられない。
    「な、なぁ…… 俺、この買ったばかりの炬燵、汚したくないんだけど……」

    「大丈夫です」

    炬燵の中から、柔らかな声が響く。
    「一滴も、こぼしませんから」
    そういう物理的な話だけじゃなくて、気持ちとかも含んで言ってるんだよ、俺はさ。
    けれど炬燵に突っ込んだ下半身は、絡みつく尾にすっかり包まれてしまった。  熱を、飲み込まれている。
    炬燵の中は見えない。だが、感覚だけは鮮烈に伝わってくる。
    無数の蛇が、絡み、蠢き、引きずり込もうとするかのような感触。

    “そこにいるのはウサミなんだよな?”

    吐精し、肩で荒く息をする。 炬燵の中から這い出してきたウサミは、すっかりご機嫌で、いつもの顔で笑んでいた。

    「──僕しかいませんよ、門倉さん」
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