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    ぎぃ。

    @gigigigiiiii
    ぎぃ。だよ!!!
    ポケモン絵と創作絵と過去絵とかもなんかアップ出来たら見やすいんじゃないでしょうか?

    二次創作SSもおいてるよ。ラッシャイ!!

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    ぎぃ。

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    しずく、しずか、しずむ【二二】本当にもう無理だ!!

    俺は寝具を掴み、伝い、どうにかしてベッドを這い降りようとした。
    だが、長い尾を巻き付けられていて、這った分だけ逆にウサミの方へ引き寄せられる。
    「うっ、あ……」
    「どこに行くんですか?」
    ずるずる戻って、あっさりと腕の中。
    「勝手に行かないでください」
    乱れた寝具と尾が折り重なり、それらに囲まれるとベッドが怪異の巣のように見えた。
    「僕のなにがいけないんですか?」
    本気でわからない、といった顔でそう問われる。
    「足りないんですか? どうしたら伝わります?」
    「ちがう! 足りないとかじゃなくて、俺がもう限界なんだって……っ」
    「限界……?」
    「そ、そう!」
    「じゃあつまり、門倉さんは僕のことが“好きになった”ってことですね?」
    「なんでそうなる!?」

    ウサミはうれしそうに続ける。

    「だって、限界までいくってことは、十分に僕で満たされてるってことですよね!つまり、僕の想いが伝わったってことじゃないですか?」
    「違う!体力的な限界の話であって…… それに、おまえの理屈おかしいよ」

    ウサミは首を傾げる。

    「想いなんて、必ずしも相手が受け取るとは限らないし──それに応えるとは、もっと限らないだろ」

    ウサミは動かなくなってしまった。

    「……う、うさみ?」
    「どうして」

    首を傾けたまま、まっすぐに見つめてくる。

    「じゃあ、僕はどうしたら門倉さんに好きになってもらえるんですか?」

    戸惑う俺に、言葉が降ってくる。

    「僕は、あなたのことがこんなに好きなのに。 あなたの全部がほしい。気持ちも、体も、命も、魂も──一滴ものこらず掬って、皿の底までさらって、全てを味わいたいのに!」

    そして、世界が反転した。

    ベッドに叩きつけられるように押し倒され、両手首を怪異に捕まれる。
    そこへ体重が、じりじりとかかる。

    「いッ……」

    見下ろすその瞳は、ただひとつしか映していない。

    「ああ、そうですね。“気持ち以外”なら、手に入るんでした。今すぐにでも」

    舌が、揺れる。揺れながら降りてくる。
    本当に、こいつは──

    「……おまえ、“北風と太陽”を知らないのか」
    「? なんですか、それ」
    「北風は強引に男の服を剥がそうとした。でも、結局服を脱がせたのは、ぽかぽか陽気の太陽だったって話だ」

    顔を離し、俺の体を見下ろす。

    「でも、門倉さん。 服、着てないじゃないですか」
    「おまえが脱がしたんだろうが!」

    ぐったりと吐き出すように言うと、俺はそのまま、童話の話とそこから導かれる“教訓”を語って聞かせた。

    ──強引じゃ、脱がせられない。

    寝物語のように話しながら、ふと浮かんだのは別の話。
    あったよな、王に殺されないように命を繋ぐため、朝まで紡がれる、引き延ばしの物語。

    「……って話なんだ。 わかったか?」

    千夜もあれば、こいつも何か変わるのか。

    「よくわからないです」
    「あー、うん、そうだよな……」
    「でも、また聞きたいです」

    ──けれど、俺は。

    「じゃあ、“また明日”に、な」

    千夜をもたせる自信は、あまりない。
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