雷は空を昇る:日常が非日常で、非日常が日常のジン生テンゼロが臨戦態勢を取ったことを男は無言でただ見つめていた。槍を構える素振りはない。テンゼロは目を凝らして男の表情、瞳、所作から感情や考えを読もうと試みたが全く読めてこない。脳裏に同じように無表情なミストの顔が浮かんだがわかりづらいだけで彼には機微が存在していた。だがこの男の無表情には得体の知れない不気味さがある。まるで本当に感情がないかのように空虚だ。
「…そう構えるな、と言ったところでお前はその重心も朧げな構えを解かんのだろう」
男はテンゼロの敵意も気にせず平坦にそう発言すると、磔にされていた兵士たちの方に向きを変え槍を構えた。
「ひっ!!」
「や、やめ…!」
テンゼロが動くより先に槍が兵士たちを一閃する。ガレオンよりはるかに強力な一撃が兵士たちの身体を真っ二つに…
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