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    名無し

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    メイン呪術、最近pkmn、他作品の小説をあげます
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    名無し

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    棘乙

    名は体を表すと言うけれど「…報告はこちらになります。」
    「ご苦労様でした乙骨君。後は私が処理しますので、もう帰って大丈夫ですよ。」
    「はい、失礼します。」

    部屋を出ると、先程までの緊張が一気に抜けた。
    過去に特級という位置までいた僕だけど、里香ちゃんを失ったことで階級は落ちた。それに加えて実践経験も少なく戦いはまだまだ未熟。ようやく最近になって一人で三級程度の呪霊を祓えるようになってきた。少しずつ、でも確実に強くなっていきたい。
    一先ず

    「ふぅ、終わったー。」





    同学年の皆はまだ学校にいるとの事だったので、とりあえず教室を覗いてみる事にした。がらりと扉をスライドさせると、中にはもはや見慣れたパンダの姿があった。

    「パンダ君、ただいま。」
    「憂太お帰り。今回は早かったな新記録だ。」
    「うん。前よりは手こずらなかったよ。あれ、真希さんと狗巻君は?」
    「今外で鍛練中。俺は腕の診断待ちで絶賛休憩中だ。」

    今は特に変な所はないが、彼の腕は前回の戦いで破壊されてしまっていた。どんな仕組みで治ったかは分からない。突然変異呪骸とは本当に不思議だ。

    「そっか。腕、元に戻って良かった。」
    「もう殆ど前の状態と変わらないぞ。パンダは強いからな。」

    パンダ君は腕をぽんぽんと叩いてニヤリと笑った。それにつられて自然と笑みが浮かぶ。
    この空間がとても落ち着く。
    刀を壁に立て掛け、少し休憩したら自分も鍛練に加わろう、等と思いながら席に座ろうとした。
    その時目の前がぐらりと歪み、体からふっと力が抜けた。

    (っ、な、何…。)

    なんとか倒れないよう足に力をいれたものの、椅子に雪崩れるように座ってしまった。それを見て、パンダ君が心配そうにこちらを伺ってくる。

    「憂太大丈夫か?」
    「…ちょっとふらついただけ。…平気だよ、大丈夫。」
    「…ここ最近任務に出ること多かったから、疲れが出たんだな。よし、飲み物でも買ってこよう。」
    「えっ、良いよ。それくらい自分で…。」
    「遠慮すんなって、何が飲みたい?」

    断りをいれる間もくれず、席を立ち僕の頭を撫でながらパンダ君はリクエストを聞いてくれた。

    「…じゃあ、お茶を…。」
    「了解。ひとっ走り自販機に行ってくるぜ。」
    「ありがとう、パンダ君。」
    「良いってことよ。ゆっくりしてな。」

    そう言ってパンダ君が教室を出ようとすると、廊下の方からパタパタと靴音が聞こえてきた。

    「棘!待て、まだ鍛練中だぞ!」

    遠くから聞こえてきたこの声は真希さんだ。棘と言っていたが狗巻君の事だろう。
    だんだん音が大きくなっているから、こっちに向かってきているのか。二人は鍛練中だと聞いたばかりだったが、何かあったのだろうか?

    「ん、真希か?どうし…。」
    「明太子!」
    「どわっ!」

    丁度入り口付近でパンダ君に突撃したのは狗巻君だった。瞬時にかわしたパンダ君だったが、その拍子でバランスを崩し、尻餅をついて倒れてしまった。そんなパンダ君をよそに、狗巻君はそのまま僕に向かって走り寄ってくる。

    「高菜!」
    「わっ、狗巻君!」

    狗巻君は椅子に座ったままの僕を腕の中に閉じ込めた。そのままぎゅうぎゅうと抱き締められる。

    「高菜!ツナツナ!」
    「ふふっ、ただいま。」
    「棘!…あぁやっぱり憂太の所か。ん?パンダ何でこんな所で座ってんだ?」
    「座ってるんじゃなくて、転けただけ。」

    真希さんとパンダ君との会話で、漸く自分がパンダ君とぶつかりそうになったことを思い出した狗巻君は、申し訳なさそうにパンダ君を見た。
    腕の中に僕を閉じ込めたまま。

    「…こんぶ。」
    「いや気にするな。大したことじゃない。」
    「……こんぶ。」
    「うん、分かったから。もう大丈夫だから。」

    パンダ君からお許しが出ると、今度は頬を擦り合わせ甘えてくる。二人が見ている前では気恥ずかしくて、そっと離れようとしたがびくともせず引き剥がせない。
    見た目より力強いんだよな…。

    「相変わらず棘は憂太が好きだな。」
    「しゃけ!しゃけ!」
    「まるで憂太の飼い犬みたいだな。狗巻だけに。」
    「漢字は違うけどな。」

    クックッと二人が笑うと、狗巻君は僕から顔を離して、不満そうにそちらに視線を向ける。

    「…おかか。」
    「だってそう見えるんだから仕方ねぇだろ。」
    「…むっ。」
    「おっ、図星刺されて怒ったか?」
    「真希~煽ってやるなよ~。」

    二人は楽しそうに狗巻君をからかっている。
    ふと僕の体に回っていた腕が離れ、その手が制服のジッパーに向かっていった。
    まさか

    「い、狗巻君、さすがに呪言はマズイよ…!」
    「おかか。」
    「お、落ち着いて!二人共止めて!」
    「短気になったな~棘。」
    「まぁまぁ、落ち着けよ~棘。」

    止めるどころか二人はニヤニヤしながら更に煽る。恐る恐る狗巻君を見上げると、こめかみに筋が浮き出ていた。
    もうジッパーは下ろされて、狗巻君の顔が露になっている。
    ダメだ僕が止めないと!

    「…しゃ、べ…!」
    「狗巻君ストップーーー!」
    「っ!」

    僕の咄嗟の大声に驚いたのか、狗巻君の動きが一瞬止まる。その隙に手持ちの飴玉を鞄から取り出し、彼の口に入れた。

    「んっ!」
    「狗巻君、いくらなんでも呪言はダメ!危ないでしょ?!」

    一度緊張した空気が無くなったせいか、狗巻君は漸く落ち着いたようだった。それでもちょっと苛立ちが残ってたのか、口の中の飴を味わいもせずガリガリ噛み砕いて飲み込んだ。

    「………こんぶ…。」
    「うん。二人も、これ以上煽っちゃだめだよ!」
    「はいはい、もうやらねぇよ。」
    「ごめんなー棘の反応が面白くてつい。」

    なんとか落ち着いたようで一安心した瞬間、体がズンッと重くなった。ぐらりと体が揺れ、体が倒れそうになる。
    そうだった、僕は体調があまり良くなかったんだった…。

    「「憂太!」」

    パンダ君と真希さんが駆け寄ってくる姿がスローモーションのように見えた。瞬間、視界が驚いている狗巻君に変わった。彼は瞬時に腕を伸ばして、僕の腕をしっかりと掴んだ。そのまま彼の体に強く押し付けられる。
    とくとくと心臓が早鐘をうっているのが伝わってきた。この状況下なのだが不思議な事に、とても落ち着く。

    「憂太、大丈夫か!?」
    「…うん……温かい。」

    思わず心の中の事を口走ってしまったようで、ワンテンポ遅れてそれに気がついた。真希さんの「はぁ?」という呆れた声が聞こえ、恥ずかしくなる。そっと狗巻君を見ると、優しい眼差してこちらを見ていた。

    「そうだ、憂太は疲れてたんだったな。さっきも目眩起こしてたし。」
    「ばっ!早く言えよそんなこと!」
    「無理言うなよ…タイミング無かっただろ。」
    「真希さん、パンダ君、僕は大丈夫…だから。」
    「おかか。」

    狗巻君は僕を優しく椅子に座らせると、手を頬に添えて顔を狗巻君の方へ向くように固定された。先程の優しい眼差しが心配そうな目に変わっている。「本当に、大丈夫だから。」と言いながら笑いかけようとしたが、依然彼は変わらない。
    どうしたものかと思い、ふと彼の口元に目線がいった。
    狗巻家の呪印。口元と、彼の舌にも刻まれている。

    (…舌。)

    …狗巻君の、舌…その舌を何度も見てきた。何度も、口内に招き入れて…何度も重ねて…何度も…。

    (…な、何を思い出しているんだ僕は!)

    どっと出た疲れのせいか、思考がうまく回らない。恥ずかしさで脳内がぐるぐるしていると、視線に気付いたのか狗巻君はこてんと首をかしげた。

    「ご、ごめんね。じっと見て。」
    「…おか、か……すじこ。」

    何を思い付いたのか、狗巻君は僕にぐっと顔を近づけた。その状態で口を少し開けて舌をちろりと出す。そのまま彼は自分の上唇をなぞり、挑発するようにニヤリとと口角を上げた。
    同い年とは思えない妖艶さにドキリと胸が高鳴る。

    「しゃけ?」
    「い、狗巻君っ!」
    「ん?どした、憂太?」
    「な、何でもない…。」
    「まったく何を遊んで…あっ!」

    突然、真希さんは思い出したかのように声を荒げた。

    「そうだ棘、まだ鍛練終わってねぇんだから戻るぞ。」
    「…おかか。」
    「嫌じゃねぇんだよ!」
    「おっと、俺も自販機行ってくるか。診断結果次第でそっちに合流するから。」
    「おう。棘行くぞ!」

    不貞腐れていた狗巻君だったが、さすがに鍛練をサボるわけにもいかないと思ったようだ。名残惜しそうに僕から離れると、真希さんに従うように後を追う。
    仕方がないとはいえ、行ってしまうのが寂しかった。

    「…あ。」

    思わず小さく声を漏らすと、それが聞こえたのか狗巻君はこちらを振り向いた。
    そして僕の顔を見るなり、すたすたと戻ってきて
    耳元に口を寄せ囁いた。

    「ツ ナ マ ヨ。」
    「っ!?」

    そのまま頬にチュッ、とキスをされた。

    「い、狗巻君!」
    「ツナツナ。」
    「…はぁ、ここに里香チャンがいたら大乱闘だったな。」
    「まぁまぁ、仲が良いのは良いこった。」

    真希さんは狗巻君を犬みたいと言ったが
    犬よりもっとたちが悪いよ!
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