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    名無し

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    メイン呪術、最近pkmn、他作品の小説をあげます
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    名無し

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    格好いい五条先生が書きたかった
    嘔吐表現有
    棘乙有りだけど薄め

    特級過呪怨霊がいなくなったただの一般人。
    特級から四級に落ちたばかりの僕は、陰でそんなふうに言われていた。里香ちゃんが手の届かない所に逝ってしまって、溢れ出る呪力のコントロールが出来なくなった事が要因なのは分かっていた。鍛錬を積んだとはいえ実戦経験が乏しい僕は、力の半分も扱えてない宝の持ち腐れ状態。この世界で生きていく為には、この汚名を払拭しないといけない。
    鍛錬と同時に任務に赴く機会を増やした。休む時間より、大好きな狗巻君や皆と会えない時間が増えた事が寂しい。でも、少しでも早く今の自分を変えたかった。




    「やぁ憂太、お疲れ様。」
    「あ、五条先生、お疲れ様です。」

    そんなある日、報告の帰りに五条先生に話しかけられた。久しぶりに伊地知さん以外の人と会う気がする。こちらに歩み寄ってくる先生は、いつも通りの陽気な雰囲気を纏っていて、任務帰りで緊張していた力が抜けていく感じがする。

    「聞いてるよ、最近大活躍なんだって?親戚である僕の鼻も高いよ。」
    「それ程でもありません。まだまだ、頑張らないと…。」
    「うんうん、意欲があることは良いことだね。」

    かつかつと靴音をたてて、先生は僕の目の前まで来ると足を止めた。右手が頬に添えられたかと思うと、強引に上を向かされる。

    「なるほど連絡通りだ。顔色が悪い、頬も痩けてる。ご飯はいつ食べた?あぁ、サプリメントは含まないでね。」
    「せ、先生…?」
    「あぁ、目の下の隈が一番酷いね。…最近の睡眠時間は?」
    「っ!」

    僕は思わず間合いを取って刀を抜いた。相手は先生だと分かっているのに、一瞬自分に向けられた殺意にも近い気配に体が反応してしまったからだ。
    どうして、先生が僕にそんな事を。

    「良い動きだ。きちんと術師として成長してるよ、憂太。」
    「…せん、せい…?」
    「でも。」

    それは瞬きをする一秒にも満たない時間。先程まで離れた場所にいた筈の先生が、僕の目の前に立っていた。

    「やりすぎ。」
    「がっ…はっ!」

    お腹に今まで受けた事のない衝撃が走った。痛みと同時に胃液が逆流してくる。抑えきれずこみ上げるものを全て吐き出して、たまらずその場に膝をついた。僕の吐瀉物を見て先生はため息をつく。

    「やっぱり、ご飯食べてないんだね。」
    「ごほっ!せ、んせ…ごほっ、ど、して…ごほっ、げほっ!」
    「暫く任務には出るな。僕が良いと言うまでしっかり寝て、しっかり食べる事。」
    「でも、…つぎ、の…ごほっ!」

    痛みで反転術式すら困難だった。咳の止まらない僕の背を先生が優しく撫で、口元の唾液か胃液か分からない液体を、躊躇せず指で拭ってくれる。

    「そんなのは別の術師に回すさ。と、いうことで、おやすみ〜。」
    「え?」

    とん、と首に衝撃を受けて、僕の視界は真っ暗になった。





    目を覚ますと白い天井が目に入った。かぎ慣れた消毒液のつんとする臭いから、ここが保健室である事が分かる。どれくらい眠っていたのだろうか分からないけど、頭が凄くクリアになった気がした。
    体を起こそうとした時、左腕に管が繋がっているのが見えた。その管を追うと、宙にぶら下がる萎れた透明な袋へと繋がっていた。
    点滴、と理解した時、視界の隅から人影が現れる。

    「おっ、起きたか乙骨。」
    「家入先生…僕はどうしてここに?」
    「悟が運んできたんだ。お前は数時間寝ていたんだよ。」
    「そ、そんなに!?そ、そうだ、次の任務…いっ!」

    体を起こそうとしたが、腹部の強烈な痛みで再びベッドに倒れ込んだ。そんな僕を見向きもせずに、先生は点滴の注射針を抜き絆創膏を貼ってくれた。

    「任務は別の術師が引き継いでる。あと、そこは治してないから。自分でやりなよ、自業自得。」
    「…自業、自得?」
    「不思議そうな顔をしてるね。何故そこだけ治さなかったか分かる?」
    「…いえ。」

    先生は点滴を片付けると、ベッドの側の椅子に腰を掛けてこちらを見下ろした。

    「乙骨、伊地知の忠告無視してたね?」

    伊地知さんという言葉にギクリと体を震わせる。僕の任務に必ず補助監督として付き添ってくれた伊地知さん。任務を重ねていくに連れて、最近よく言われていた事がある。

    「任務も良いが、飯も睡眠も休息も取るように言っていただろ。なのにお前は聞かなかった。だから伊地知は五条に相談して止めさせたんだ。」
    「…だからって殴らなくても。」
    「まぁ、それについては、伊地知が相談した相手が悪かったと思え。あれ、が言うには。」

    『憂太ってば頑固だから、僕が言っても聞かないでしょ。だったらだらだら説得するんじゃなくて、一発強いの入れて沈めたほうが早いじゃん?』

    「だとさ。」

    確かに五条先生に止められても聞かなかっただろう。だからって、あんなに強い打撃を入れなくても良いんじゃないだろうか。しかもただの打撃じゃなかったな、一瞬だけど蒼が見えた気がする。

    「体調管理は大切なものだ。一歩間違えれば死に繋がる。次からはきちんと改めるように。」
    「…すみませんでした。」
    「謝罪は伊地知にでもしときな。とりあえず応急処置で点滴は入れておいたけど、今日からはしっかり飯を食べること。良いな?」
    「はい。」

    僕は拙くなった反転術式を使い、自分の腹部の痛みを少しずつ治していく。漸く感覚を取り戻し始めたけど、まだあの時みたいに瞬時に治すことはできない。これも早く扱えるようになりたい。
    反転術式については家入先生に教わるのが良さそうだけど。と家入先生をチラリと見たが軽く視線を反らされる。どうやら体調を整えるまでは無理そうだった。

    「迎えが来たな。」
    「迎え?」

    突然大きな足音が此方に向かって来る。それはこの部屋の前で止まると、ガラッと勢いよくドアを開いた。

    「…い、ぬまき、くん?」
    「…しゃけ、高菜すじこ?!」
    「うん、もう平気だよ。ありがとう。」
    「狗巻そいつを部屋に。後、飯を用意してやってくれ。暫くろくに食べてないそうだからな。粥が良いだろう。」
    「っ!おかか!おかか!」
    「え、うわっ!」

    狗巻君は僕の所に足早に来ると、あっという間に横抱きに抱え上げられた。

    「…こんぶ。」
    「そんなに軽い?!筋肉は付いてるはずなんだけど…ってそうじゃなくて!降ろして!」
    「おーかーかー。」
    「ま、まって!恥ずかしいから、このまま行かないで!お願い狗巻君!狗巻君ってば!」
    「…高菜、ツナ!」
    「何言ってるか分からんが、気をつけて戻りなよ。」

    僕の抵抗も虚しく、狗巻君はそのままの状態で保健室を後にした。
    無言のまま廊下を歩く音だけが鳴る。恐る恐る狗巻君を見ると、こちらを見もむせずに、彼はぽそりと呟いた。

    「…すじこ、こんぶ?」
    「そんな、狗巻君が役に立たないなんて事はないよ!僕が強くならないとって、勝手に任務を入れて、五条先生に止められただけだから…。」
    「高菜明太子。」
    「…心配したし、悔しかった…どうして?」

    狗巻君は視線を僕に向ける。その目はなんだか寂しそうだった。

    「…ツナ、すじこ。」

    恋人だから、止めたかった。そう言われてふと思う。
    恋人だから…もし逆の立場だったら。僕もとても心配しただろう。五条先生じゃなくて僕が止めてあげたかったと思う。
    狗巻君も同じ気持ちだったら?
    悲しませてしまった、心配させてしまっただけじゃない。恋人なのに何もしてあげられなかった歯がゆさを、彼が感じていたとしたら?
    とてつもない罪悪感が僕を襲った。

    「…ごめん。ごめんね、狗巻君。」
    「…いくら?」
    「うん、もうあんな無茶しない。約束する。」
    「しゃけ。」

    そう言うと狗巻君はふわりと笑った。
    里香ちゃんが遠くへ逝ってしまって、心のどこかで一人きりになったと錯覚してたのかもしれない。でも、今の僕には皆と狗巻君がいる。分かってた筈だけど、やっと実感できたような気がする。

    「ツナマヨ、憂太。」
    「僕も大好き…って、ちょっと待って。」

    その場の流れでキスをしてしまいそうになったけど、とある事を思い出していた静止した。

    「おかか?」
    「違っ!嫌じゃなくて、実は僕、吐いたまま口洗ってないんだ。」
    「明太子。」
    「で、でも…っ。」

    僕の静止は遮られ、彼と何度目かの口付けを交わした。
    この後彼の献身(意味深)な介護によって、僕は謎の疲労感を持ちながら無事体調を戻していった。
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