「皆、皆…傷ついていく…どうして、どうして皆がこんな事にならないといけないんだ…!僕がもっと、早く戻ってさえいれば…っ!」
「おかか。」
二度と腕が通らなくなった制服の左袖。それを掴み震える背中を、残った右手であやすように叩く。
お前は悪くない、無事に戻って来てくれてありがとう。ずっと前線に立ってくれてありがとう。という気持ちを込めて。
「…うっ、あぁ…ぁあぁあぁぁぁぁああああ!」
俺が傷ついた事なのに、俺以上の涙を流してくれる。改めて、そんな優しい君を好きになって良かったと思った。
もう泣かなくて良い、自分を責めなくていい、これからはずっと俺が側にいる。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔も愛おしくて、嗚咽を漏らす唇にそっと口付けた。
と先程までは神妙な空気だったのに。
「狗巻君、ご飯食べさせてあげる。あーんして?」
一応俺右手はあるから一人で食べれるけど…まぁいいや。憂太の炒飯うめぇ。
「あ、狗巻君は動かないで!僕がやるからじっとしてて!ね?」
いや、ちょっと手を伸ばせば届く位置にあるスマホを取りたかっただけなんだが。そんな、褒めてと言わんばかりに目をキラキラさせて、可愛い奴め。ご褒美に頭を撫でてやろう。
「狗巻君の体は僕が洗うね。全身隅々まで綺麗にしてあげるから。」
全身!?全身と言った!?なら文字通り、頭から体からち○こまで綺麗にして…くれた!ち○こは凄く綺麗になった…気持ち良かった…!
「何かあったら絶対起こしてね?お休み狗巻君、大好き。」
お休みのちゅーとか可愛い過ぎる…しかも添い寝してくれてるからか良い臭いまでするし…やべ、また勃ちそう…。いやいや、しっかりと寝て、きちんと体力を付けておくんだ。
「…ん?狗巻君勃ってる?…さっき出したばっかりなのに…ふふっ、良いよ。僕が全部してあげる。」
ちょっ、憂太!だめ、そんな口に入れるとか…あ、あっ、あっ、あぁーーー!
あれ、俺ここに何しに来たんだっけ?
翌日ーオマケー
「おめーら、状況理解してんのか?」
「え?うん、分かってるよ真希さん。」
「しゃけ。」
「じゃあ何で棘は、女侍らすように憂太とパンダを側に置いて座ってるんだよ。」
腕を組んで仁王立ちしている真希。見下ろす視線の先には、ソファーにドンと座る狗巻。左隣には縋り付く憂太が、右隣には腰(辺り)を抱かれた小さなパンダがいた。
「もしかして俺、棘の愛玩動物にされてる?」
「ツナァ…?こんぶ。」
パンダの腰を抱いてる手が、さわさわと胸辺りを弄り始めた。
「きゃっ!棘君のえっち!好きだなんて言って、私を弄ばないで!」
「ツナツナ。」
「…狗巻君、僕は?」
寂しそうに眉を下げて、棘の肩に擦り寄る憂太。そんな彼を熱の籠もった瞳で見つめる。
「ツナマヨ。」
「っ…嬉しい…狗巻君、大好き。」
「何やってんだか。」
「真希、高菜。」
呆れたようにため息を付く真希に、棘はこちらに来いと手招きをする。
「誰がいく…いや、そうだな。」
「すじこ?」
真希は棘達の向かいにあるソファーに腰を掛けて足を組むと、挑発するようにニヤリと笑った。
「私が欲しいなら跪いて乞え。気が向いたら可愛がってやるよ。」
「高菜ー!」
「真希さん、かっこいい…!」
「きゃー!真希イケメンー!抱いてー!」
「狡いパンダ君!真希さん僕も抱いて!」
「憂太、おかか。」
誰しも心の中で思う。こんな日がいつまでも続いて欲しいと。でも、そんな願いはいつか必ず叶わなくなる。だから、今日も後悔のないように、皆で笑いあって生きていこう。