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    名無し

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    名無し

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    狗巻棘君HAPPY BIRTHDAY2023
    始終五条視点

    棘乙風味クラッカーの音と同時に、暗かった部屋が明るくなる。目を丸くしていた本日の主役は、目の前に差し出された【棘君お誕生日おめでとう】のプレート付ケーキを見ると、丸い目を細くして微笑んだ。

    「狗巻先輩!誕生日おめでとう!」
    「おめでとうございます。」
    「めでてぇな棘!ほら、吹き消せよ!」

    ケーキの上で仄かに点っていた火を吹き消し、改めて同級生と後輩からの祝いの言葉を受ける。そんな彼の様子を、少し離れた場所から僕は見守っていた。
    呪言師を産み出せる家系でありながら、呪言師を排除する家に産まれた棘。決して皆から誕生を祝われてはいなかった筈だ。呪術界隈には自分の保身しか頭にない、こり固まった老害が多いから。でも、そんな界隈内で彼が心優しく育ったのも、今こうして笑顔でいられるのも、恵まれた人間関係があっての事だろう。
    (本当に、良かったね棘。)
    皆がパーティーの食事を用意している最中、僕のスマホの着信音が鳴った。それに数名反応してこちらを振り向く。

    「先生ーこんな時くらい着信音切っとけよー!」
    「本当に気が利かねぇなお前。」
    「メンゴメンゴ!許してチョンマゲ!」
    「うわっ、古っ!」

    苦笑を軽く受け流し、スマホの画面に視線を移す。伊地知の名前を確認して、パスコードを入力し内容を見た。
    どうやら頼み事は時間的に難しかったようで、その謝罪と『本日中に何とかそちらに向かってみる。』と書かれてあった。それに頼むと返信を送り、祝いの席に着いて切り分けられたケーキを頬張る。
    こちらをジトっと睨んでいる、主役の視線に気が付かないふりをして。





    「はっぴーばーすでーとーげー!改めてお誕生日おめでとうー!」
    「おかか。」
    「えー何で機嫌悪いの?誕生日だよ?主役だよ?」

    パーティーが終わり解散した後、僕は伊地知から『到着した。』と連絡を受け、部屋に戻った棘の元へ向かった。ノックを数回無視されたけど、諦めない僕に根負けして渋々といった顔で迎えてくれる。
    どうして彼がこんなに機嫌が悪いのか、僕は知っていた。
    それは、僕が一ヶ月前に棘の大好きな憂太を、内緒で遠征に出したからだった。だって事前に言ったら、どんな手を使ってもついてくるでしょ絶対。出立を知った後狂犬のように詰め寄られて、呪言を直接脳内に叩き込まれた時はどうしようかと思ったけど。

    「…すじこ?おかか、こんぶ。」
    「ごめんって!用はちゃんとあるんだよ!棘にサプライズプレゼントを持ってきたんだ!」
    「……おかか。」
    「まぁまぁ、そんな事言わないで!あ、きたきた!ナイスタイミング!」

    廊下に視線を移すと、目的の人物が大きな風呂敷を抱えてこちらに駆け寄ってきた。その人物を扉の前に通すと、無愛想だった棘の顔が一瞬で緩む。

    「海外遠征中棘の為だけに一時帰国した乙骨憂太君でーす!」
    「狗巻君、ただいま。」

    帰国したばかりの憂太は、息も切らさず、疲れも見せず、いつものふにゃりとした笑顔を見せた。棘は急いで駆け寄ると、その体をこれでもかというくらい強く抱きしめる。

    「高菜!…高菜!」
    「僕も会いたかったよ!狗巻君に会って、ちゃんとお祝いを言いたくて、五条先生に連れて帰ってきてもらったんだ!」
    「…っ!ツナマヨ…!」

    憂太は棘から少し距離を取ると、手に持っていた風呂敷を解いて棘に差し出す。

    「改めて、お誕生日おめでとう。これ、誕生日プレゼントだよ。時間がなくて、綺麗にラッピングできてないんだ。ごめんね。」
    「…すじこ!」

    棘はそれをキラキラした目で確認して、その中の一つ、見たことない機械を掲げるように取り出した。横からひょっこり憂太の手元を見ると、たくさんのビー玉と高そうなステーキ肉という、珍妙な組み合わせを持っていた。

    「何なのこれ?」
    「あぁ、狗巻くんの持っているあの機械でビー玉を溶かして、それでお肉を焼くんですよ。狗巻君が前動画で見てて、いつかやりたいねって話したことがあって。」
    「へぇー。」
    「いくら!いくら!」
    「うん、さっそくやろう!」

    子供らしくはしゃぐ二人の可愛い後輩達。どうやら僕はもうお邪魔みたいだから、そろそろお暇することにしよう。

    「じゃあ帰るね。明日の昼に迎えに来るから。それまで二人共ごゆっくり〜。」
    「はい。先生、ありがとうございました!」
    「しゃけ!」

    扉を閉めると扉越しに楽しそうな笑い声が聞こえた。先程憂太が来た道を通り寮の外に向かう。

    「憂太といえば、数日前突然電話が来た時には驚いたな。」

    『お願いします!任務は絶対期間内に遂行します!だから、この日だけは日本に帰らせてください!』

    我儘も文句も何一つ言わない憂太が、あんなに必死にお願いしてきたのは初めてだった。そんな姿を見たら叶えてやるのが大人の仕事だろう。
    おかげで二人の喜ぶ姿が見れた。予定を押してでも憂太を連れて帰ってきて良かったと思った。大切な人が産まれた一年に一度の大切な日。少しの時間くらい一緒にいさせてもバチは当たらないよね。
    さて、二人が喜んでくれたのは良かったとして、問題は明日棘が素直に憂太を返してくれるかどうかだ。まぁ二人の時間を楽しめば、案外さらっと戻ってくるかもしれない。飛行機の時間もある事だしね。
    と、そんな軽い希望は通じることはなく。



    「ねぇー棘ーそろそろ出ないと飛行機に間に合わないよー。憂太返してー?」
    「おかか。」
    「い、狗巻君…僕行かないと…。」
    「おかか。」
    「駄目だってもぉ…ふふっ。」
    「憂太〜?」
    「す、すみません、先生。」

    ある程度予想してたけど、棘は憂太を離そうとしなかった。迎えに来た僕と憂太の間に入り、背中越しに憂太を庇って動こうとしない。頼みの綱の憂太も軽く咎めているが、引き止められたのが嬉しい。と顔に出ている。

    「おーかーか。」
    「棘、本当に遅れるから。我儘言わないで。」
    「…狗巻君、流石にちょっと時間が…ね。」

    憂太の困った声に棘は少し考えこむ。漸く出れるかなと思った時、何かを閃いた棘は憂太に向き直るとその唇に触れた。

    「すじこ、明太子。」

    今ここでキスをしたら行かせてやる。か。

    「えっと、ここで?」
    「しゃけ。」
    「先生いるんだよ?」
    「しゃけ。…こんぶー?」

    見たくないなら何処か行っても良いよー?ね。
    何となく魂胆が見えてきた。

    「えー後輩達の甘酸っぱいちゅーを見てもいいのー?」
    「せ、先生!」
    「なーんて。どうせ僕が席外したら、その隙に憂太連れて逃げる気でしょ?」
    「…ちっ。」
    「まぁ、逃げても逃さないんだけど。あー僕の事は気にしないで、どうぞぶちゅっ!と。」
    「うっ…す、すみません先生。じゃあ狗巻君、目を閉じてくれる?」
    「しゃけ。」

    動かなくなった棘の顔に憂太の顔が近づいていく。立っている場所からキスシーンは見えなかったけど、ちゅっという音はしっかり聞こえた。二人が恋人なのは知ってたけど、キスしてる所にいると改めてそれを実感させられる。
    なんだろう、不思議と嫌じゃない。感覚的に、可愛い小動物がじゃれ合ってるのを見ているみたいだった。

    「狗巻君、僕必ず帰ってくるから。約束。」
    「…ツナ。」
    「いってきます。」

    憂太が寂しそうに眉をひそめて、こちらに向かうおうと動いた。



    「おかか。」
    「え?」



    憂太がピタリと止まる。視線を下ろすと、その腕を棘の手が掴んでいた。と思ったら、その手を引き憂太のバランスを崩すと、あっという間に担ぎ上げその場を駆け出した。

    「めん、たい、こー!」
    「えぇぇぇぇえ!?狗巻君、何処に行くのぉぉぉお…!」

    わー窓から逃げちゃった。憂太も強引に抜けれる筈なのに、あえてせずにされるがままにしてるな。
    僕は軽く屈伸すると、ぐっと背を反らして、足首を軽く回す。首を二、三鳴らすとその場を蹴り、飛び出した二人の後を追った。

    「棘ー憂太ー待ってよー。」
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