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    名無し

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    名無し

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    棘乙

    突発ネタ纏め3ースプラッシュバトルー

    「ということで今から、一年生対二年生のスプラッシュバトルを行いまっす!」

    ある日の休日、プールサイドに集められた高専東京校一年生と二年生。各々準備されたシャツと迷彩柄のズボン(パンダは迷彩柄のスカーフ)を身に付け、配布された水鉄砲を手に取っている。
    五条の発言を皆余所に、虎杖は辺りをキョロキョロと見回している。

    「すげー…室内プール貸しきりだ!伏黒釘崎、あの滑り台行こうぜ!」
    「大人しくしろ。仕事だ、一応。」

    今にも駆け出しそうな虎杖の首根っこを掴み、やれやれと肩を竦める伏黒。

    「モデル撮影っていうから張り切って来たのに…。水浸しになるとか聞いてねぇんだけど…。」
    「まぁ、モデルっちゃモデルだろ。室内プール宣伝用の。」
    「そうじゃないんですよ真希さん!もっと可愛い服を着て、こうお洒落にポーズとったりですね!」
    「悟が取ってきた案件だからな、いつもの事だ。諦めろ。」
    「そんなぁ…真希さぁん…!」

    泣き付く釘崎の頭を撫でる真希。
    可愛い後輩をしょげさせた張本人に、一言文句を言ってやろうと動かした視線の先には、丁寧に準備体操をしている狗巻がいた。

    「しゃけ、しゃけ、こんぶっ!明太子!」
    「狗巻先輩張り切ってんなー。プール好きなのかな?」
    虎杖の質問にパンダは半目になった。
    「あー…ありゃ…。」

    <狗巻棘の妄想>
    『狗巻君、僕ばっかり狙うの止めてよぉ…!』
    『しゃけしゃけ!』
    水鉄砲の水に濡れて張り付く憂太のシャツ。そこからうっすらと浮かび上がるピンクの突起が二つ。
    『あ…透けちゃった…。』
    恥ずかしそうに胸を隠して、上目遣いでこちらを見上げる憂太。
    『もぉ、狗巻君の馬鹿…。責任取ってくれる?』
    <終了>

    「明太子ぉぉぉー!」
    「ろくなこと考えてねぇな。」

    五条以上にテンションの上がっている狗巻を、呆れたように見る面々。

    「真面目な先輩だと思ってた頃が懐かしい。」
    「真面目な奴は同級生のスカート履いたりしねぇんだよ。」
    「あれ、そういえば乙骨先輩は?」
    「すじこ?」

    そう言われてみれば、今日はいる筈の乙骨が何処にもいない。

    「あー、憂太は任務が入ったので不参加です。」
    狗巻の背景にがーんという文字が浮かんで見えるくらいショックを受けている。その場でガクリと座り込んだ狗巻の肩に腕をかける五条。
    「残念だったね棘。」
    「おががぁ!」

    狗巻は油断して無限を解いている五条の頭に噛みついた。

    「ぎゃぁあぁあああ!」



    「皆今頃プールで遊んでるのかな…?後で写真見せてもらえるかな…?きっと楽しいんだろうなー…。見たかったな…。」
    「…写真は五条さんに頼んでおきます。」

    ー終わりー





    ーリカちゃんと呪言と憂太ー

    ある日の夜。僕と狗巻君は彼の部屋でお勧めの動画を見ながら時間を過ごしていた。ベッドの上で寄り添いながら、狗巻君の温もりを感じていると、ふわりと眠気が襲ってくる。ちらりと時計を見ると、もう十時を回っていた。

    「狗巻君、もう夜も遅いし解散にしない?」

    僕がそう言うと、狗巻君はこちらをちらっと見てアイパットを机の上に置いた。この時間が終わってしまうのは寂しいけど、狗巻君は明日の朝から任務があると言ってたから我慢しないといけない。体を離して帰ろうとした瞬間、ぐいっと腕を引っ張られベッドに押し戻された。

    「い、狗巻君…?」
    「…憂太。」

    視界には天井と狗巻君の顔。熱の籠った紫色の瞳がその先を予想させた。その通りに、ごそごそと彼の手が腰を這って服の中に侵入してくる。僕は手を掴んでギロッと彼を睨んだ。

    「駄目だよ狗巻君。明日は朝から任務でしょ?早く寝ないと。」
    「おかか。」

    むすっとした顔で否定された。こうなってしまうと、テコでも動かないことは知っている。僕は考えるより先に狗巻君を押しのけ、指輪を嵌めた。

    『憂太~どうしたの~?』
    「っ!?」

    リカちゃんがのっそりと背後から現れる。狗巻君は狭い室内で素早く動き、出入り口を付近に立ち通せんぼをする。僕が本気で帰ろうとしているのは分かっているのだろうが、そこまでして帰したくないのか…。
    嬉しいような…いや、やっぱり嬉しい。でも今日は早くおいとましないと明日に響く。ただでさえ狗巻君は夜更かしするタイプなんだから。
    僕は口に呪力を込める。口元に浮かび上がるのは蛇の目、ちらりと出した舌には牙。最近練習している狗巻家の呪言の模倣。

    「…っ!」

    狗巻君は驚いただろう。でも、隙をついてリカちゃんは背後に回り羽交い締めにした。

    「こんぶ!?」
    【眠れ】

    抵抗される前に呪言を放つ。狗巻君はぐらりと頭を揺らしてうつむき、動きを止めた。

    「ふー…さぁ、帰ろうか。リカちゃん狗巻君をベッドに。」
    『はぁい。』
    「お…っかか!」

    眠ったと思ってた狗巻君は、リカちゃんの拘束から抜け出すと呪力を耳から脳に集中させた。完全な呪言対策。これではこの手は使えない。

    「解けちゃったか。まだ呪力が凝縮してないんだな…。」
    『逃げちゃ、駄目~!』
    「おかか~。」

    気が付くと狗巻君とリカちゃんの追いかけっこが始まっていた。この隙に、とドアに向かおうとした瞬間、足が縺れてその場に転んでしまった。それと同時にリカちゃんの顕現が解ける。

    「っ…もう、時間が…。」
    「すじこぉ。」
    「うぅ…。」

    呪力がほぼほぼ尽きちゃった…もう抵抗できない。狗巻君は僕の体を簡単に抱き上げると、ベッドへ戻って再度横たえた。額をくっつけてにやりと笑う。僕は悔しくてじとっ…と見上げた。

    「…明日起きれなくなっても知らないんだから。」
    「しゃけ。」

    狗巻君はうきうきで僕の服を脱がし始めた。この様子だとちょっとやそっとじゃ終わらない。明日の朝起こすの僕なのかな…。と思いながら、体をまさぐる狗巻君の手の感触に身を委ねた。そんな上の空なのに気付いたのか、狗巻君の手がピタリと止まる。

    「…こんぶ?」
    「怒ってはないよ。僕も狗巻君ともっと一緒にいたいし。」
    「…おかか?」
    「嫌でもない。」

    狗巻君は無言で眉を少し下げる。多少なりとも悪いと思ってくれているのだろうか。

    「…じゃあアラームセットして、自分で起きること。それと、遅くても十二時までには解散すること。約束してくれる?」
    「しゃけ。」
    「それならもう何も言わないよ。いちゃいちゃしよ?」

    そう言うと、ご褒美を与えられたわんちゃんの様に、目をキラキラさせて狗巻君は僕に覆い被さった。
    首筋にちゅっ、ちゅっとキスをされ、与えられる温もりに幸せを感じる。
    ちょっと我が儘な所も、彼だからこそ全部愛しい。

    ー終わりー





    ー術師対抗格付けチェック~BASIC~ー

    何処かで聞いた事があるような、無いような、いやあるだろうタイトル。年に一度術師界隈で行われるイベントで、テレビ撮影もされ一部地域で後日放映もされている。
    内容としては毎回ランダムで選ばれた術師がペアを組み、二者択一の常識問題に挑むというものだった。優勝ペアには有給が与えられ、最下位ペアにはイベント終了後任務が言い渡されるので、全員そこそこ本気で挑んでいる。
    今回選出された乙骨は、同じく選出されていた狗巻とペアを組みこの番組に挑んでいた。現在二問終わって一問外しているので、ここは何とか当てておきたい所。

    「それでは次に移ります。チェック項目は此方です。」

    司会の伊地知は、同じく司会の新田にフリップを表示させた。そこには『ハンバーグ』という文字が書かれている。

    「ハンバーグ?食べるのかな?」
    「すじこ…。」

    狗巻は食べたかった…と言い、しゅんと眉を下げた。

    「次は僕の番だからね…。あ、これ終わったらハンバーグ作ってあげる。丁度そぼろにしようとした合挽き肉残ってるし。」
    「憂太…ツナマヨ!」

    狗巻は目をきらきらさせて乙骨に抱きついた。それを受け止めて、乙骨は幸せそうに狗巻の頭を撫でる。何人かの冷たい視線が注がれるが、ものともせずに。
    伊地知はこほん、と咳払いして新田に続きを促した。

    「えー、一つは牛と豚の合挽肉で作られた普通のハンバーグっす。もう一つは牛と、豚か鹿の睾丸で作られた合挽肉の特製ハンバーグになるっす。」

    睾丸、の一言で場はざわめいた。ふざけた五条が新田に、「豚と鹿の、何?もう一回言って?」と絡んでいたが、横にいた七海に脳天へ制裁を喰らわされていた。

    「こ、睾丸って、おちんちん、だよね…?美味しいのかな…どう思う狗巻君?」

    乙骨は狗巻に話を振るが、狗巻は乙骨の胸元に体に埋めたまま微動だにしない。

    「……こ…。」
    「狗巻君?どうしたの?」

    狗巻は何かを言ったようだが、声が小さくて乙骨は聞き取れなかった。背中をぽんぽんと叩いて狗巻の様子を伺っていたが、突然がばりと顔を上げて席を立つと伊地知を指差し一言。

    「おかかこんぶ明太子!」

    突然おにぎり語で叫ぶ狗巻に、その場の全員の視線が集まる。その内容を訳す事ができる者は少ないが、関係の深い乙骨は瞬時に理解することができた。徐々に顔が赤くなっていく。

    「い、狗巻君…!こんな所でそんな事言わないで…!」
    「棘、どしたの?」
    「ご、五条先生!聞かないで下さい!」

    五条は狗巻のおにぎり語を理解できる数少ない人の一人だ。聞かせては不味い、と乙骨は止めようとしたが、当然間に合うわけもなく。

    「おかか!こんぶ!明太子!」
    「ぁぁぁ…!も、もう止めて…!」

    そんな乙骨を尻目に、五条はわざとらしく顎に指を添えて、ふむふむと相槌を繰り返す。そして、近くにいる人に分かるくらいの小声で通訳した。

    「『憂太には俺のちんこでさえ咥えさせた事無いのに、動物の金タマなんかを先に食べさせられるか!』と?」
    「しゃけ!」
    「お願いします、もう許してください…!」

    結局狗巻が駄々を捏ねまくり、このチェックだけは特例で狗巻と乙骨が入れ替わる措置がなされたという。
    このシーンは当然カットされた為、テレビ放映された際は、突然乙骨が顔を真っ赤にして半泣きになっている。という摩訶不思議な現象となったのだった。

    ー終わりー





    ーキスの日ー

    五月二十三日、昼。高専二年生は各々まったりと休憩していた。
    そんな中パンダはスマホを弄っていると、ネットワードからある言葉が目に入る。

    「今日ってキスの日らしいぞ。」
    「高菜?」
    「キ、キスの日なんてあるんだ…へぇ…。」

    乙骨は何かを思い出すように視線を下げると、人差し指を口元に持っていき唇をなぞった。

    「おうおう、憂太さんよ~。棘とのちゅっちゅはそんなに良いのか~?」
    「しゃけしゃけ~!」
    「えっ、止めてよ恥ずかしい~!その、気持ち良いけど…。」
    「マジかよ。」

    けらけら笑う狗巻君とパンダ。真顔になる真希。顔を真っ赤にして両手を振り恥ずかしいと照れる乙骨。
    こんな朗らかな日常が幸せで、いつまでも続けば良いのにと願うばかりだった。

    「でも今、憂太は海外任務でここにいないんだけどね~。」
    「「「「…。」」」」

    五条の一言で、賑やかだった場の空気が静まる。
    机を囲い、真希とパンダと狗巻は座っていた。
    その中央にはスマホが一台。
    画面には乙骨が映っている。
    そう、彼のみテレビ電話越しだった。

    「うっ…うぅ……。」
    「おががぁぁあああ!」
    「憂太泣くな!棘も落ち着け!な?お~よしよし…。」
    「狗巻君ズルい!パンダ君僕もよしよししてぇええ!」
    「悟てめぇ!漸く落ち着いたのに、余計なこと言うんじゃねぇよ!」
    「えっ、何この流れ…僕が悪いの?」



    「…皆ぁ…僕もそこに帰りたいよ…。」
    「高菜…。」
    「いぬまきくん…。」

    五条をなんとか追っ払い、落ち着きを取り戻した三人は一息ついた。狗巻はスマホを手に取り、画面前で涙ぐんでいる乙骨に声をかける。

    「すまんな…俺がキスの日なんて見付けたばっかりに。」
    「おかか、おかか。」
    「パンダのせいじゃねぇだろ。明らかに悟のせいだ。あと精神脆いこいつらも悪い。」
    「ごんぶぅ…。」
    「うぐっ…スミマセン。」
    「どうせお前らの事だから、キスくらい何回もしてんだろ?少し離れたくらいでしんみりすんな。」

    確かに真希の言う通り両の手以上のキスはしている。それでも、顔が見れて触れられないのは寂しいし恋しくなる。
    乙骨は思わずポツリと小声で漏らした。

    「…キス、…したくなっちゃったな…。」

    ガンッ!
    「高菜こんぶ明太子しゃけすじこいくらおかかぁあああ!」

    突如何かがぶつかるような音と共に、狗巻のおにぎり語が炸裂した。乙骨からのスマホの画面は天井を映している。

    「えっ、何今の?!狗巻君どうしたの!?」
    「あぁ…棘が机に頭ぶつけて床の上で転がってる。」
    「しゃけ!しゃけ!しゃけ!」
    「えぇ!?大丈夫!?」
    「…その台詞近くにいるときに聞きたかった、ってよ。可愛い!って言いながら悶えてるわ。こんだけ元気なら大丈夫だろ。」
    「あ、あはは…。ごめん二人共、変な所見せちゃって…。」
    「まぁ、今更だな。」
    「だな。」

    二人に今更と言わせるくらい、無意識に色々やってしまってるらしい。乙骨は少し反省した。
    ふと扉をノックする音が聞こえる。

    「乙骨。飯ニ行クゾ。」
    「あ、はーい。僕もう行かないと。名残惜しいけど、電話切るね。」
    「おう。」
    「またな憂太。」
    「うん!あ、最後に狗巻君スマホ持ってくれる?」
    「すじこ?」

    狗巻は起き上がり、言われた通りにスマホを持つ。画面越しの乙骨は辺りを見回して、誰も見ていないことを確認すると、カメラに向かって目を閉じ唇を近付けた。

    「だいすき。」

    聞こえるか聞こえないくらいの小さな音をたて、リップ音が鳴った。

    「ま、またね!」

    乙骨がそう言うと同時に、プツリと電話が切れた。

    「棘、憂太なんだって?」
    「っ~~~!憂太おかかぁぁあああ!」
    「棘どうし…ちょっ、お前パスポートとキャリーケース何処から出した!?待て早まるな!棘ぇえええ!」

    突如海外逃亡を図ろうとした狗巻はあっさり捕まり、その日一日機嫌が悪くなったのは言うまでもなかった。
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