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    名無し

    pixivからこちらに移動しました
    メイン呪術、最近pkmn、他作品の小説をあげます
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    POIPOI 58

    名無し

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    チリ主(♀)※恋人ではありません、主人公アオイ固定
    思い付きと勢いで書いた
    後悔はしてない

    ~チリside~
    「カイリュー!何やってんだよ!また、はかいこうせんしろよ!」
    「…ナマズン、その場でふぶき。」

    大雪がはかいこうせんで疲れているカイリューに直撃する。大きな悲鳴を上げて、巨体がその場に倒れこんだ。

    「嘘だろ…カイリューが…!」
    「6匹、戦闘不能ですね。二次試験は不合格です。…またの挑戦をお待ちしております。」
    「くそぉ…。」

    悔しそうに踵を返し挑戦者は帰っていった。
    面接の時からでっかい態度で気に入らんかったから、ざまぁみろと内心悪態をついた。大切なポケモンにきずぐすりを塗り、ボールに戻して小さな溜め息を吐く。

    「…おもんな。」
    「チリちゃんおつかれさまでしたー。」

    待機していたポピーが、お人形さんみたいにとてとてとこちらに向かって歩いてくる。その姿が可愛くて、荒んだ心が癒されていった。

    「おおきに。」
    「あらぁ、なんだがおげんきがありませんね?いいこいいこしましょうね!いいこいいこ!」

    ポピーに撫でられると、不思議と落ち着いてくるから不思議や。お礼に額へキスをしてやると、もじもじしながらぷにぷにほっぺを赤くする。
    照れとんやろな、かわいー。

    「お疲れ様でしたチリ。またもや君一人で終わってしまいましたね。」
    「ハッサクさんもおおきに。ま、凄腕美人トレーナーチリちゃんやから…あれ?アオキさんは?」
    「チャンプルタウンへ帰らせました。今日はもうチャレンジャーはいないでしょうからね。」
    「…さよか。」

    もうあんなバトルをしなくて良いと分かるとホッとした。そんな姿を見せたせいか、ハッサクさんは心配そうに眉を潜め、声をかけてきた。

    「今から貴女は、テーブルシティにでも行って気を晴らしてきなさい。」
    「え?何でや?まだ事務処理が…。」
    「数時間くらいは小生が対応します。貴女は働きすぎです。」
    「そうです!ポピーもおてつだいしますです!」

    働きすぎやなんて、ハッサクさんは教師も兼任しとるし忙しさなんて桁違いの筈。ポピーはまだ小さいから手伝いなんて難しいのに。事務処理くらいは…。
    そう、いつもなら言えた筈なのに、今日はその言葉に甘えたくなった。平気や思っとったのに、まいっとるんやろうな。

    「…おおきに。じゃあ、一服してくるわ。」



    仕事着から動きやすいラフな格好に着替える。長い髪は帽子に纏めて突っ込み、常備してある真っ黒なサングラスをかけた。別に変装紛いの事をする必要はあらへんけど、今日は騒がれずに一人でおりたかった。
    そらとぶタクシーで、テーブルシティの馴染みの店の近くに送ってもらう。辛めのソースが美味しいホットドックと、辛口のジンジャエールを出す店。会計を手早く済ませ、屋外の空いてる席を探した。運良く手近に一人用の席があったから、急いで陣取ると、どかっと座り一段落した。
    目の前のうまそうな臭いに食欲を刺激され、早速ホットドッグにかぶりつく。ジューシーなソーセージにソースが合ってとてもうまい。二口、三口と舌鼓をうちながら、考えるのは今日の事。
    ここ最近どうもバトルに身が入らん。
    というのも、挑んでくる挑戦者の質が落ちてきたからや。
    理由はチャンピオンクラスの人間が子供である事。しかもそのうちの一人はパルデアに来たばかりで、そもそもトレーナー経験が浅かった。それがたちまち広まるや否や、自分でもチャンピオンクラスになれる。と躍起になるトレーナーが倍増したのだ。
    意欲的になる事は確かに良い。だけど、本当にチャンピオンになりたい者と、知名度欲しさにチャンピオンになりたい奴とでは全然違う。
    現に先ほどもあれや。見た限りポケモンはしっかり育っとるのに、トレーナーの指示が雑すぎる。バッジ8個はおそらく、レベルの高いポケモンでゴリ押したのだろう。
    けど、あれだけ強いポケモンをどうやって手に入れたんか。育てたにしてはポケモンを理解してなさ過ぎたし、わざわざ好んで捕まえに行くような奴にも見えんかった。となると人から貰った可能性が高いが、まぁそれ自体は悪い事ではない。
    でもあの戦い方は、そう、強い技を打てば良いだけとしか考えてなさそうやった。
    自分のポケモンの筈なのに、心を寄せている描写が一つも無かった。

    「なんか、虚しいな…。」

    やめや、やめ!折角二人がくれた時間が勿体ない!
    残ったホットドッグとジンジャエールを掻き込み、勢いよく席を立った。
    気晴らしに買い物して、ハッサクさんとポピーに手土産でも、と思って店に入ろうとした。その時一瞬、本当に一瞬だけ視界に入った。
    後ろ姿だけでも分かる、見覚えのありすぎる女の子。
    だけど、どうも様子がおかしい。彼女の前には明らかに知り合いでもなさそうな男が二人立っていた。そのうちの一人は覚えがある。
    気がつくと、足がそちらに向かって歩を進めていた。





    ~アオイside~
    最初はファンだと声をかけられた。適当に答えてると腕を捕まれた。
    それがネモさんから聞いていた、強いトレーナーばかりに声をかける怪しい人、だと気付いた時には遅かった。
    掴まれた手は振り払えなかったから、ポケモンの入ったボールに手が届かない。助けを呼ぼうにも、スマホロトムを起動させようにも、声が全く出ない。周りは誰も気付かない、気付いても私が抵抗してないからか見て見ぬふり。
    握られる腕が痛い。向けられる笑顔が気持ち悪い。途中から何を言ってるのか全く耳に入らなくなってきた。
    私が何もしない事に気付いたのか、目の前の人達は私を引っ張るように歩き出す。抵抗しようにも足に力が入らない。靴底がずるずると音をたてて暗い路地に向かっていく。
    どうしよう、どうすれば良いの。せめて、ポケモン達は助けないといけないのに、私に何が出来るの。
    怖い、怖いよ…誰か、助けて。

    「アオイさん、お待たせしました。」
    「えっ?」

    その人は私を掴んでいる手を捻り上げると、勢いよく振り払った。解放された私に寄り添い、流れるように腰に手を添えられる。顔はサングラスで見えないけど、この人達と違ってとても安心する。

    「遅れて申し訳ございません。少々準備に時間がかかりまして。」
    「あ、あの…。」

    その人はサングラスを少しずらして顔を見せると、私にしか聞こえない声で話しかけてきた。

    「大丈夫。怖かったら、ぎゅっとしてもかまへんよ。」

    この独特な喋り方を私は知っている。落ち着いて見たその顔にも覚えがある。知り合いと分かると強ばってた体から力が抜けた。そんな私を軽々と支えて、その人は冷たい声で言い放った。

    「で、君達は彼女に何か?」

    ひっ、と息を飲む声と同時に、パタパタした足音が遠ざかっていく。
    どうやらさっきの人達はいなくなったようだ。

    「怖かったな。こない震えて、可哀想に。」
    「あ、ありがと…ございました…。あの…。」
    「ん?」

    助けてくれた人は、ゆっくりと頭を撫でてくれた。温かい、この手を私は知っている。

    「チリ、さん…ですよね…?」
    「なはは、バレてもうた。まいどお馴染み、チリちゃんやで。隠すつもりは無かったんやけど、さっきまでリーグにおったから、ついつい仕事モードで話してしもたわ。」

    悪戯っぽく笑う笑顔に、塞き止めていた感情が溢れてくる。目の前が歪んで、私は泣いていることに気付いた。

    「…ふぇ…チリさぁん…ぐすっ…怖、かった…うっ…。」
    「よしよし。チリちゃんの胸でたんとお泣き。…と言いたいとこやけど、ここは目立つさかい、あっちのベンチ行こか?歩ける?」
    「は、はぃ…えっ、あ、あれ…?」

    足を動かそうとしたけど、まだ力が入らない。目が回った後のように、体がふらふらする。

    「まぁ、しゃーないな。ほな、出血大サービスや!それっ!」
    「きゃっ!」

    体が浮いたかと思ったら、チリさんの顔が近くに寄っていた。これは、絵本のお姫様が王子様に抱っこされてるのと同じ格好。さっきまで涙が止まらなかったのに、今度は恥ずかしさで汗が止まらなくなってきた。

    「うわっ、自分軽っ!もっと食べなあかんよ!」
    「そ、そんな事…!それより、チリさん!降ろしてください!いろんな人が見てます!」
    「はいはい、大人しく捕まっててな?恥ずかしがっとる方が余計目立つで?」

    ふわりと微笑む顔が本物の王子様みたいで、どくんと胸が高鳴った。
    チリさんは女の人なのに王子様なんて、かっこいいって思ってたら怒られるかな。

    「ん?どないしたん、じっと見つめて。チリちゃんが美人さんやから見惚れてもうた?」
    「ふぇ!?あ、あの!私…!」
    「なはは!冗談や冗談!ほんま。バトルの時はあんなにギラついとんのに、別人みたいや。かーわい。」

    ちゅっ、とおでこに柔らかいものが当てられた。それがチリさんの唇だと理解するのに少し時間がかかった。
    もしかして、これは、噂の、キ、ス…?キスを、された?…チリさんが、わた、しに、キスをした?女の人の、チリさんが、キ、キスを!?キス…キスをされ、され…チリさん…に!

    「きゅぅ~…。」
    「へ?ちょっ、アオイちゃん!?」

    容量オーバーになった私は、チリさんの腕の中で意識を飛ばしてしまった。





    ~チリside~
    「嘘やろ…気ぃ失っとる。」

    ポピーにやるノリで軽くしただけやのに。めっちゃ純粋なんやろうな。
    …あかん、悪いことした気分になってきた。
    突き刺さる視線を軽くかわして、何事もないようにアオイちゃんをベンチに座らす。その隣に腰かけ、ずり落ちないよう自分にもたれかからすと、起こさないようにスマホロトムを起動した。

    『…チリですか?何かありましたか?』
    「ハッサクさんすまんな。ちぃと頼まれて欲しい事があるんやけど。」
    『頼みとは、何でしょう?』

    アオイちゃんに絡んでいた男の一人は、最後にリーグに来た挑戦者やった。あいつが彼女に対して向けた言葉は、いちポケモントレーナーとして許せるもんや無かった。

    「せや。今日の最後の挑戦者、身元洗っといて欲しい。使っとったポケモンが、人から奪い取ったもんの可能性がある。今そいつがアオイちゃんに絡んで、ポケモンくれって詰め寄とったから。」
    『な、何ですって!?本当ですか!?』
    「証拠も押さえとる。動画を今そっちに転送し…『我が校の大切な生徒になんて事を!絶対許してはおけません!ポピー!至急委員長に連絡を!アオキにも連絡を取ってください!』
    「あ、あの、ハッサクさ…『な、何ですかこれは!チャンピオンクラスだったら育成なんて簡単だ?一匹くらいいなくても問題ないだろ?ですって!?ふ、ふざけているのですかこの若者は!』

    あーあ、ハッサクさん暴走しとるな。気持ちはめっちゃ分かる。こっちとら怒り抑えんのに必死やったからな。アオイちゃんがおらへんかったら、何しとったか分からん。

    『ハッサクおじちゃん!れんらくかんりょうしました!アオキおじちゃんのところに、ハイダイおじちゃんとカエデおねーちゃんがきてたみたいで、いっしょにきます!とのことです!』
    『それは心強い!…チリ!』
    「は、はい!」
    『…よし。今貴女のスマホロトムにLPを送りました。それでアオイさんと美味しいものでも食べて、少しでも気分を落ち着かせてあげてください!それでは!』
    『チリちゃん、おねーちゃんをよろしくです!』
    「…はーい…。」

    返事が届いたか届かなかったかくらいで、一方的に通話は切断されてしもうた。
    ハイダイさんに、カエデさん、か。怒らせたら怖いとこ来たな。二人共この子を目に入れても問題ないくらい可愛がっとったし、それに加えてリーグ関係者が加わるんやったら…あいつら終わるかもな。
    スマホロトムをしまうと、肩にもたれてるアオイちゃんを見る。こんな小さな子供に大の男が二人がかりでなんて、酷い話や。もしも、あの時あの場所にいなかったら。そう考えると背筋が凍る。ほんま、良かった。
    顔にかかっている髪を耳にかけてやると、小さな体がもぞもぞと動いた。

    「…んっ…。」
    「お、目ぇ覚めたか?」
    「…チリ、…さ、ん…ふ、ふひゃぁああ!」

    寝ぼけ眼でぽやっ、としとったのに、突然慌てふためき始めた。昔、ウパーが沼地の沼にはまって、めっちゃ慌てた時を思い出したわ。

    「さ、さっき、わ、わわ、私に、キ、キスを…!」

    必死に額を押さえて真っ赤になっとる。ほんまに初なんやな。かわいー。

    「かんにんな。ポピーにたまにやるから、ついつい自分にもやってもうた。」
    「え、…そ、そうですか。いえ、大丈夫です…。」

    なんや、急に落ち込んでしもうたな。あかん事言ったやろか。

    「そうや!さっきちょっとしたお小遣いもろてん!一緒にアイスでも食べに行かへん?」
    「えっ、そんな事…アイスなら私がお金を出します!」
    「何言うとんねん!子供が大人に金出すなんて言わんでえぇねん!」
    「で、でも、チリさんに助けてもらって、アイスまで食べさせてもらうなんて。」

    さっき助けた事まだ気にしとったんかいな。律儀すぎるやろ。
    しゅん、俯いてしもうた頭をよしよしと撫でる。

    「…言い方が悪かった。これはな、辛い思いをした自分に、ハッサクさんが使え言うてくれたんや。」
    「ハッサク先生が…。」
    「自分の日頃の行いがえぇから、皆気にしてくれとんやで。素直にもろうとき?」

    な?と促すと、眉を下げながらも嬉しそうに微笑んだ。

    「…はい。今度ハッサク先生に、お礼を伝えます。」
    「うんうん。喜ぶできっと。」
    「それと、改めてお礼を言わせてください。」

    アオイちゃんはその場で綺麗に頭を下げた。

    「チリさん。助けてくれて、本当にありがとうございました。」
    「かまへんよ。自分も自分のポケモンも無事で良かったわ。ほら、顔上げ?チリちゃんにべっぴんさんの顔、見せて?」
    「はい!」

    勢いよく頭を上げて、ふにゃりと溶けるような笑顔を見せてくれた。やっぱこの子は笑っとる顔が一番似合うわ。

    「あ、でも。お礼はさせて欲しいんです。私に何が出来るか分からないけど。」
    「そんなもん気にせんで…。」

    えぇよ。という前に、ある事が頭を過る。
    自分にも、この子にもいい気晴らしになるかもしれん。

    「…いや、もしお礼をって考えてくれとんなら、ポケモンバトルしてもらえんか?」
    「バトルですか?」

    アオイちゃんはこてんと首を傾げる。

    「せや。今めっちゃ本気のバトルがしたいねん。頼まれてくれへん?」
    「わ、私で良ければ!実はチリさんに見て欲しい子がいて!」
    「へぇ、どのポケモンや。」

    嬉しそうにバッグから一つのモンスターボールを取り出した。アオイちゃんはそれを優しく宙に投げる。

    「出てきて、ドオー。」

    ボールから見知ったポケモンが出てきた。うちのドオーより一回り小さいが、しっかりと育てられているのが見て分かる。
    でも、アオイちゃんの手持ちにドオーはいなかった筈やけど。

    「どないしたん、このドオー?」
    「実は二次試験の時、チリさんと戦ってるのを見て、私も育ててみたくなったんです!良ければ、この子と是非戦ってください!」

    なにそれめっちゃ嬉しい事言ってくれるわ。なら、こっちも期待に応えなあかんな。

    「そっか。でも、負けへんで。バトルコートへ行こか?」
    「はい!」



    テーブルシティのバトルコート。
    突然のポケモンバトル。更にチャンピオンの一人がいるとの事で人が集まり始めた。

    「使用ポケモンはお互いドオーのみでえぇか?」
    「大丈夫です!よろしくお願いします!」

    帽子とサングラスを取り顔を晒すと、辺りがどよめき出す。チャンピオンと対峙しているのが四天王のチリちゃんだとは思わへんかったやろな。
    手持ちからボールを取ると、勝とうな。と気持ちを込めて前に放った。

    「ドオー!先輩として、みっちり指導したれ!」

    くり出されたドオーは、目の前の同種に気を良くしたらしい。嬉しそうに吠えると、気合いを込めて地面を揺らした。
    分かるで、うちもめっちゃ楽しみや!

    「ドオーをテラスタルでじめんタイプへ!」
    「ならこっちも、じめんタイプへテラスタルや!」

    目映い光が二匹のドオーを照らし出す。結晶に身を纏い勝負の場が整った。
    これやこれ!ビリビリする緊張感!ポケモンと一緒に全力を出そうとする姿勢!最高や!やっぱりポケモンバトルはこうでないとな!

    「いきます!」
    「全力で来ぃや!」
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