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    名無し

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    名無し

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    付き合ってないチリ主♀
    +若干のクリスマス
    主人公アオイ固定

    クリスマス当日の、夕方に差し掛かる時間帯。いつもより華やかに装飾されたテーブルシティを、私はあてもなくぶらついていた。
    今夜私の部屋で友達と軽いクリスマスパーティーをする予定だった。本当なら今頃買い出しに戻った私は、ペパー先輩と合流して特製サンドイッチを作っている、筈なのに。

    『ごめんアオイ!突然おじ様が遊びにくることになって、ご挨拶しないといけなくなったの…!』
    『…ごめん。バカオヤジが…こっち来ることになって、行けんくなった…。滅しろマジで…。』
    『わりぃ!マフティフが熱出しちまったみたいでよ、そっち行けなくなっちまった!』
    『『『本当にごめん!』』』

    突然相次ぐキャンセルの連絡。仕方がない事情とはいえ寂しさが募る。好きにして良いと言われた買い出しの品と、これからの予定をどう潰そうか考えていた。
    お母さんは地元に帰っているから家には誰もいない。他の知人は当たり前のように予定が入っている。もういっそポケモン達と夜のピクニックにでも出掛けようかな、とも思った。今日は雲1つない晴天だったから、きっと夜空は綺麗だ。高い山頂で食べるご飯はさぞ美味しいだろう。
    想像するとそれはそれで楽しくなりそうで、早速行動に移すことにした。大飯ぐらいの子が何匹かいるから、足りなくならないように材料を買い足しておきたい。何を買おうか考えながら、近場のお店に向かい足を進めようとした。
    その時、肩をポンポンと叩かれる。慌てて振り返ると、頭1つ高い位置にある口元が緩やかに弧を描いた。

    「やっぱりアオイちゃんや。まいど~、久しぶりやね。」

    この独特な喋り方をする人を私は一人しか知らない。最後に会ったのはチャンピオンテストの時だったから数ヶ月ぶりだ。
    視線を上げると、爽やかな笑顔で手を振ってくれるチリさんの姿があった。

    「お久しぶりです。今日はどうしてここに?」
    「これから残業やから皆の夜食買いに来たんよ。社会人はほんっと辛いわ~…。」

    チリさんはオーバーに肩を下げて落胆した様子を見せた。半分冗談で半分本気だろうその言葉に、大人の大変さが見えた気がした。

    「お仕事お疲れさまです。」
    「おおきに。で、自分は何でこんな時間にここにおるん?」
    「私は、友達との予定が無くなっちゃって。時間が余ったから、ポケモン達と一緒に…。」

    手に持っていた買い出しの袋を胸元に持っていき、夜のピクニックに行く旨を伝えようとした。でも、口を開く前にふとある事を思い付いた。これを有効活用できるかもしれない、自分なりの名案を。

    「あの、良かったらその夜食、私が作っても良いですか?」
    「えっ、どないしたん急に。」
    「使う予定だった材料が沢山余ってるんです。サンドイッチになるので味は問題ないと思いますし、どうでしょう?」

    ずいっと突きだすと、チリさんは指を顎に添えて考え込んだ。よく考えたら知人というだけで、そこまで親しくない間柄なのに、手作りの物を渡すのは迷惑だったのだろうか。

    「あ、あの、いらないなら全然…!」
    「ほんならお言葉に甘えさせてもらうわ。夜食作ってもろうてもえぇ?」
    「は、はい!じゃあこれから部屋で作って、リーグまでお持ちしますね!」

    そう言って駆け出そうとしたが、手首を掴まれ静止させられる。

    「ちょい待ち。自分にそんな手間かけさせられんよ。アカデミーのエントランスで時間潰しとくから、終わったら呼んでくれへん?」
    「…アカデミーは冬期休校中なので、エントランスのエアコンが止まってるんですよ。寮以外の部屋も施錠されてますし。」
    「ほんまか!?どないしよ…。」

    困ったと頭をかくチリさん。だから届けに行くと伝えるものの、それはさせられないと引かない。それくらいなら取りに行くと言ってくれるけど、仕事でお忙しいのにそんな真似はさせられない。こんなことで時間を消費するのは勿体ないので、チリさんにある提案をしてみた。

    「もし良ければ、私の部屋で待たれますか?」



    自分の部屋に他人を入れるのは久々だ。今日はパーティーをする予定だったから、念入りに掃除をしてるので大丈夫だろう。チリさんを中に通すと、彼女は辺りをキョロキョロと見回していた。
    本当に掃除してて良かった。

    「ど、どうぞ。奥の椅子にでもかけててください。今お茶を…。」
    「あーお構い無く。…ふーん、中々綺麗にしとるやん。」
    「ありがとうございます。じゃあ、ちょっとだけ待っててくださいね。」

    私はキッチンに向かうと材料を取り出す。
    カエデさんからお勧めされた、パン屋のフランスパン。買う時丁度焼き立てだったからか、とても良い香りが辺りに広がった。
    これで作るサンドイッチは2種類。
    やきベーコン、レタス、トマトスライスのBLTサンドと、
    バナナ、リンゴ、パイン、キウイのフルーツサンドだ。
    調味料もバッチリ!と言いたいところだけど、季節からかホイップクリームだけは売り切れてた。
    なので今からホイップクリームを作る作業に入る。といってもハンドミキサーで混ぜるだけなんだけど。
    氷水の入ったボウルを用意し、その上にホイップと砂糖が入ったボウルを乗せてハンドミキサーのスイッチを入れる。機械の大きな音が鳴り、勢いよくホイップがかき混ぜられていった。

    「自分、ホイップクリームに拘りでもあるん?」
    「いえいえ。市販の物が売り切れちゃってただけで。今日はクリスマスじゃないですか?たぶんケーキに使う人が多かったんだと思います。」
    「あぁ、今日はクリスマスやったか。どうりでテーブルシティに装飾があるわけやな。」

    軽く談笑しながら手を進めると、あっという間にクリーム状になっていく。やはり機械は早くて楽だ。スイッチを止めてハンドミキサーを上に持ち上げると、ツン、と角が立った。完成で良いだろう。
    クリームを指ですくって味見をする。ちょっと甘さが足りない気がするけど、食べるのは私だけじゃないからこれくらいで良いかな。フルーツも乗せるし良い塩梅になるだろう。

    「なぁ、チリちゃんにも味見させてぇな。」
    「良いですよ。じゃあ…。」

    引き出しからスプーンを取り出そうとした時、椅子に座っていた筈のチリさんが真横に立っていた。そして、私の手を…さっき私が味見に使った指を手に取り、なんとそこを咥えたのだ。手に残ったクリームごと私の指がチリさんの口に入り、綺麗に舐め取られる。

    「甘過ぎのうてえぇなこれ。店のもんよりこっちのが好きやわ。」
    「チリ、さん…い、今のは…?」

    突然の事で固まる私を見て、チリさんはクスリと笑った。

    「なんや、こんくらいで恥ずかしがるんか。かわいーな自分。」
    「へ?は?え?あの、だって、指に、さっき私が口にした所を…。」
    「女同士やから問題あらへんやろ?嫌やったか?」
    「え、っと…別に、嫌じゃなかったんです…けど。」

    嫌でも、良いでも、混乱して何とも言えない。視線と一緒に下がろうとする私の顎にチリさんの人差し指が添えられ、強引に顔を上げさせられる。

    「それとも足りんかったか?指だけやのうて、口にも欲しかった、とか?」
    「く、くちぃ!?」

    チリさんはそのまま親指で私の唇を弄り始めた。まさか、口にってそう言う事…。

    「それならそうとはよぉ言いや。サンドイッチのお礼に、チリちゃんサービスしたるよ。クリームよりも、あまぁい大人のキス教えたる。」
    「お、大人のキ、キキキキ、キス!?チリさん駄目です!私達そんな関係じゃ…!」

    後ろに逃げようとしたけどいつの間にか腰を抱き抱えられ動けない。両手で押し返そうとしても力で全く叶わなかった。近付く綺麗な顔を凝視できず、目をぎゅっと閉じた。
    私はファーストキスをここで捧げるのだろうか。でも、チリさんは女性だしファーストキスに入るのだろうか。ごちゃごちゃする脳内。だけど、いつまで待っても何も起こらない。恐る恐る目を開けると、顔を小刻みに震わせているチリさんがいた。

    「…っ、ふふっ!あはは!」
    「へ?」
    「なはは!かんにんやで!自分がおもろくてついからかってしもうた!ふふっ、かわいー…!」
    「ひ、酷いです!チリさんの馬鹿!」
    「あはは!お詫びに準備手伝ったるわ。これはどれに挟むやつや?くくっ…!」

    チリさんはお腹を押さえながら台所に向かう。してやられたようで何か悔しかったけど、チリさんは楽しそうだから、まぁいいか。私もチリさんの横に立ち、パンに出来立てのホイップクリームを塗った。



    パンに挟むだけだったので、あっという間にサンドイッチは完成した。それを1つずつラップに包み、バスケットに纏めて入れてチリさんに渡す。

    「いい気分転換になったわ。サンドイッチおおきにな。今度必ずお礼するさかい、連絡先教えてぇな。」
    「お礼なんて良いですよ。材料消費できてこっちも助かりましたし。」
    「チリちゃんの気が済まん。ほれ、スマホロトム出しや。」

    チリさんは強引にスマホロトムを取り出すと、赤外線でぱぱっと交換した。画面にチリさんの連絡先があるのが何とも不思議な感じだ。

    「ほなまた連絡するわ。アオイちゃん、メリークリスマス。」
    「はい。メリークリスマスです。」

    後ろ手にてを降りチリさんは部屋から去っていった。とたんにしん、と静まる部屋。さっきまでチリさんがいたとはとても思えない、いつもの自分の部屋。机に向かうと、かぎ慣れない臭いを感じ取った。これはきっと、チリさんの香水の臭い。
    すると脳裏に、チリさんの赤い舌がクリームごと指を舐めとった瞬間が浮かんだ。触れられた箇所が火を灯したように熱くなる。

    「私どうしちゃったんだろ。胸もどきどきするし。」

    次第に顔も熱くなってくる感じがする。もしかしたら熱を出してしまったのかもしれない。

    「今日はもう寝よう。」

    お風呂は起きてから入ることにした。寝巻きに着替えて布団に転がる。目を閉じると、まだ微かに残る香水の香りをより感じる。寝て治さないといけないのに暫く寝れそうもなかった。
    そして、これがただの風邪じゃないと知るのはもう少し先の話。










    「掴みは上々、連絡先もゲットした。働き詰めのチリちゃんに、サンタさんがクリスマスプレゼントくれたんやろな。」

    チリはスマホロトムに刻まれたアオイの連絡先を閉じ、意気揚々と職場に戻る。そこには同僚のアオキとハッサクが、自分の席で積み重なった書類を1枚1枚片付けていた。夜食を買いに行ったにしては明らかに遅く戻ったにも関わらず、2人はチリに何も言わない。これから続く仕事を思えばこそ、休息として許してくれたのだろう。
    チリはサンドイッチを二人の席に置き、アオイが自分達の為に作ってくれた。と一言添えると自分の席についた。泣きながら食べるハッサクと、もくもくと食べるアオキを横目にパソコンのスリープモードを解除する。直ぐにメール画面を開くと、案の定席を外してから増えた未読の数にこっそりため息をついた。憂鬱な仕事が再開されるが、先程の事を思い出しただけで心が軽くなる。
    四天王としてチャレンジャーの彼女と対峙した時は胸が震えた。幼い少女が大人に勝る気迫で指示を出す姿に、チリは落ちた。勝負に負けた後もその姿を見てたくて、柄にもなく最後まで見学をしていた。
    だが、終わってしまえばあっという間。連絡先を聞くタイミングもなく、接点を無くした彼女とは自然と会うこともなくなった。先生として会えるハッサクが羨ましく、彼に用事と称してアカデミーに足を運んだりもしたが、広く生徒も多いあの場所では姿を見付けることすら出来なかった。
    だから街中で偶然見かけた時は歓喜した。思わず声をかけたくらいだ。何とか大人としての体面を持ちつつ、次に繋げようと必死だった。
    予想外にも部屋に入れてもらった。一生懸命サンドイッチを作る姿が可愛く、二人だけの空間に高揚してついやり過ぎた。キスを止められたのは幸運だった。下手を打てば本当に【大人のキス】をしてしまう所だった。
    次に会う約束は簡単に取り付けられるだろう。問題はその後だ。この関係を絶対途切らせてはいけない。何度も自分という存在を意識させて、必ずものにすると誓う。

    「…絶対、逃がさんへんよ。」

    包んで貰ったフルーツサンドを取り出し、大きな口でかぶり付いた。
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