みどりの日「へぇ、今日は別の地方やと【みどりの日】っちゅーらしいわ。」
吟味を重ねて選んだふかふかのソファの上。アオイを膝に横向きに乗せ、頭を撫でながらチリは突然呟いた。眼前のスマホロトムには、【みどりの日特集】という記事と共に、オススメの緑色に関する観光スポットが掲載されている。
「みどりの日ですか?」
「せやねん。でな閃いたんやけど、今日の予定は緑豊かな草原でピクニックデートでも…」
どうか?と聞こうとした瞬間、アオイはチリの首に腕を回して抱きついた。突然の行動に驚きつつもチリは嬉しそうに抱き止める。
「どないしたん急に?」
「私の緑はチリさんだから、今日は私にとってチリさんの日だなぁ…って思いまして。」
アオイはチリの耳の後ろに顔を埋めて、ちゅっと唇を付けた。恋人の可愛い行動にチリの胸はきゅんと疼く。同時に今すぐこの可愛い娘をとろとろに甘やかしたくなった。アオイの腕を優しくほどくと、その体をソファに押し倒す。
「ほな、チリちゃんをたぁっぷり堪能させたるわ。」
「えっ?」
「ゆっくりピクニックデートでも、と思うたけど止めや。今から2人でじっくり…」
寝巻きの裾から手を忍び込ませながら、その柔らかい唇を奪おうと顔を近付けようとした。だが、アオイはぽかんとした顔をしてチリを見上げた。
「え?行かないん、ですか…?ピクニック…。楽しそうだと思ったのに…。」
「うぐっ!せ、せやったら、行くか…。」
チリはピタリと動きを止めると残念そうに身を引く。その姿を見て、ふっと息を吐くとアオイはくしゃりと顔を歪ませた。
「ふふっ、あはは!チリさん、可愛い!」
「っ!さ、さては、からかったな~!この小悪魔ちゃんめ~!」
「あはは!チリさんペパー先輩みたいになってますよ!」
「チリちゃんとおるときに他の男の名前を出すな~!」
「ふふっ、ごめんなさい!」
「ゆ~る~さ~ん。」
ぷりぷりと頬を膨らませ拗ねてしまったチリ。その膨らんだ頬にアオイは優しく唇を付けた。
「ふふっ、ごめんなさい。機嫌直してください。ピクニック行きましょ?」
そのまま耳に唇を動かしてチリにだけ聞こえるような小さな声で囁く。
「帰ったらじっくり2人で、ね?」
「っ~~!いつの間にそんな悪い子になったんや!?」
「こんな私は嫌いですか?」
「んなわけあるかい!大好きや!ほな行こか、ピクニック!」
張り切って準備をする為に立ち上がったチリ。それにつられる様に、ふわりと深い新緑の髪が靡いた。
(私はどんな緑よりも、この緑が一番好き。)