🔮🐑が逃避行で朝日見て温泉に入る話♨+α次の日の夜明け前、Fulgerは1人ベットから起き出して周辺を探索していた。
浮奇が起きた時に気づくよう、デスクに備え付けられていたメモに「少し歩いてくる」と書き置いてベッドのヘッドボードに貼り付ける。
昨夜降りた無人駅の前を通ると、赤茶色の毛並みの猫が伸びをしているのが見えた。
ふといつも馬鹿なことを言い合って笑っている学友のAlbarnが脳裏によぎった。
彼は明日学校に登校して、浮奇と俺がいないことをどう受け止めるのだろうか。
きっと楽しそうな事をやっているなと笑い飛ばすのだろう。
何事も、どこか人よりやりすぎてしまう俺をなんだかんだ気遣ってくれる彼には感謝しかない。
自分でもダメ人間なんだろうな、という自覚はあった。周りが恵まれているだけで自分自身にはなんの特性も価値もないのだとずっと思っていた。そんな俺にも普通の距離感で接してくれるalbanの存在は俺にとっては大きかった。
もう彼と話せなくなるはちょっと惜しいな、まだ漫画の新刊貸してないのにな、とどこか他人事のように思う。
昨日の放課後から降り続いていた雨が上がっていた。
草いきれと水が張られた水田の土と水の混ざった香り。
遠くで鳴いている虫の声がしんと張りつめた早朝の空気にとけこんだ。
海沿いだからか、頬を撫でる風が冷たい。
ウィンドブレーカーのチャックと自分の足が触れ合って微かな引っ掻き音を出す。
映画のように完成された夜明け前の田舎風景に、自分が立てる不自然な機械音だけが溶け込めずにいた。
のどかな心象風景画に使われた不自然な黒絵の具のようにどう頑張っても馴染めない。
周りをある程度見回ってみたが海岸への行き方はわからなかった。こんなにも色濃く潮の空気を漂わせているのに海を見つけられないなんてな、と訳もなくおかしくなる。
なんだか気分が高揚していて、自分でも驚くくらいに機嫌がよかった。
海を見ることを諦めて来た道を引き返す。高い建物が少ないため泊まっているホテルのある方向へ歩けばよかったのでFulgerは行きとは違う道を歩いてみようと思った。
国道の道路の下に公園のような空き地の様な空間が続いているのを見て、こちらに進もうと決める。
コンクリートの灰色とフェンスの薄緑、夜明け前の複雑な藍空の色がやけに綺麗に調和していた。
特に昨日までの雨を象徴する様な錫色(すずいろ)の雲と、澄んだ空気のような浅縹色(あさはなだいろ)の混ざり合い方は満を持して発表された印象派の作品のように美しかった。
しばらく歩いていると道が途中で終わっているのが数メートル先に見えた。
田舎によくある工事が途中で放り出されたパターンなのだろう。右に曲がる他の選択肢がなく、冗談みたいに道が途切れていてその先には崖が広がっていた。
陥没した地面のような様相だった。おそらくここ数年の大雨で陥没したまま放置されているのだろう。
だがそこはその立地ゆえか都会の建物に邪魔されることなく、街全体を見渡せるようになっていた。
太陽がゆっくりと顔をのぞかせる時間帯になっていた。
その途切れ地点に近づいていくと人影が見えた。
色見本の紫のページのような複雑な紫のグラデーションの髪を持ち、細い肩幅に自分と色違いのウィンドブレーカー。
「浮奇」
後ろから声をかける。
人影はゆっくりこちらに頭を回した。体はまだ前を向いている。
彼が着ている灰色のウィンドブレーカーと紫の髪が朝日に優しく照らされて、俺を見つけて綻んだ表情に完璧なバランスで影をつける。
その光景の色遣いはさっきまでの景色と大差なかったのに
さっきまで見ていた高架下の景色よりも格段に魅力的に俺の目に写った。
「ふーふーちゃん、おはよう」
何よりも嬉しそうに俺の名前を呼ぶ。
「ねえ、こっち来て一緒に見ようよ。」
まだ日の出の時間帯なのでいくら梅雨時でもまだ肌寒い。
隣に腰を下ろした浮奇に寒くないかと聞かれるまでその事実に気がつかなかったことに少し驚いた。
手足についていた痛覚デバイスは意外と大事だったのかもしれないな、と逡巡したがすぐに目の前の焼けていく空に目を向ける。
雲が段々と晴れていき、遮るものがない陽光が目にとびこんできた。
しばらく2人とも言葉を発さずに隣で真っ赤に染まっていく天を眺める。
眼下に広がる田んぼの景色と遠くに見える海、その水平線から登る朝日の全てが雨上がりの磨きあげられた空気の中、絵画のように美しくそこにあった。
「今日は海水浴日和だね。一緒に水着を買ってさ、一緒に海行こうよ。俺泳ぎたいな。」
浮奇が口を開いた。
「いい案だが、そもそも海開きがされていないだろ」
「そうかな、ちょっと俺調べるよ」
「頼んだよ」
コツコツ、と浮奇のネイルが液晶画面をタップする音が聞こえる。
覗き込んで画面を見ると昨日撮った俺らの写真がキーボードに設定されているのが見えた。
「浮奇、キーボードにその写真は」
「可愛いでしょ、ふーふーちゃんもお揃いにする?」
「いや、俺は電源切ってるし、てかなんでお前普通に携帯使ってるんだ」
「なんで?...あ。あーあ。まだ海開いてないみたい」
お手本のように気落ちした様子の浮奇を見て
彼の気を紛らわせるために
「浮奇、ご飯買いに行かないか。昨日からまともに食べて無いだろ」
「確かに。でもこの時間はどこも開いてないよ。近くにコンビニも見なかったし」
高速道路が近くにあるから、あるけばサービスエリアがあるんじゃないかと提案して道路沿いにSAを探す。
雨粒が残る畑を見ながら浮奇とひたすらに歩く。
意外にも早く見つけることができたSAで自販機のサンドウィッチとスープを食べる。
俺が照り焼きチキンで浮奇はハム卵。
ポトフは野菜がべちゃべちゃでサンドウィッチは肉が極薄だったが浮奇と互いの味を交換して食べる朝ごはんは美味しかった。
お腹も膨れたことだしホテルに戻ろうかと言う時に道路側ではなく下道から行くことにした。
なるべく多くの新しい経験がしたかった。
ホテルへと向かう道すがら、偶然海岸への看板を見つけた。
しばらく歩くと遠くにテトラポットが見えてきて、どちらからかともかく走り出した。
浮奇は俺より足が早いはずだったのにこの時は俺の方が早く海岸に着いた。
いつもは力をかける場所を慎重に定めないと足が痛むのだが今日は痛みを伝える部位が無かったからか
初めての海にはしゃいでいたのか。
とにかく俺は少し早めに海岸を見下ろして人生初めての景色に感動していた。
誰もない砂浜に朝日が柔らかく注いで、波が緩やかに動く。
遅れて浮奇が到着し2人で靴とウィンドブレーカーを脱いで海に入る。
どこか不安そうな顔をする浮奇に、四肢は完全防水だから大丈夫だとつげると心底嬉しそうに破顔した。
海開き前の海はだいぶ冷たかったし朝日がまだ登りきっていないので陽も少ない。
でもはしゃぎながら水を掛け合ったり、動きにくい水の中で鬼ごっこをしたりするのは楽しかった。
登りかけの朝日が飛ばされた水滴に反射してキラキラと輝く。
見渡す限りの水辺線と朝日だけが視界いっぱいに広がる。
キラキラと輝く泡の宝石に包まれて笑う浮奇はどこか儚くて消えてしまいそうだった。
浮奇が人を殺したのでは無くて、世界が浮奇を殺そうとしいているように俺は感じた。
2人で始めた逃亡の旅が
急に泡沫に飲まれて消える脆いものに思えて思わず浮奇の手をつかんでしまった。
人殺しの浮奇とどこか壊れているだめ人間な俺。
荷物なんてまともに持たずに2人だけで身軽に旅をしている今が、これまでのどの瞬間よりも生きているような気がしていた。
少しだけ、嘘をついて置いてきてしまった兄や学友を想う。
それでも「彼ら」という現実に俺をつなぎとめるものを失って息がしやすくなっているこの事実だった。
水遊びに疲れて途中からは2人で歌を歌いながら海岸線を裸足で歩いて貝殻を探した。
綺麗な桜貝を2つ見つけた俺は記念に取っておこうと思ってポケットにしまった。
その時、急に浮奇が手をすべこりませてきてポケットから貝を1つつまみ出した。
非難するように目をやるとふふっと笑って代わりの貝を入れてきた。よく見ると白い綺麗な形をした巻貝だ。少しかけていたがそのかけ具合もなんだか愛嬌を与えるような可愛らしい貝だった。
彼いわく俺が好きな羊の角に似ていると思ったそうだ。
こういう気障な言葉が似合うのがちょっと悔しくて大袈裟に礼を述べてみる。
何が琴線にかかったのか、浮奇は聞いたことがないほどの声量で笑い始めた。
その軽やかに弾む笑い声につられて俺も笑った。
2人して腹筋が引き攣るまで笑いながら自販機で空と同じ色のアイスを食べる。
すっかり日は昇っていて、梅雨明けを思わせる蒼穹の空が頭上に広がっていた。
まるで世界に2人だけのようだった。
物語の様な時間を過ごした俺たちはやっぱり現実感のないままホテルに戻って朝ごはんをルームサービスで食べた。俺は初めてのルームサービスで、いつもより声が強ばったが浮奇は自然に注文していたのでどこか癪に触ったが食後のヨーグルトを分けてくれたので許すことにした。
そのあとは大してない荷物をまとめてホテルをチェックアウトし、浮奇の提案で今度は山に向かうことにした。
途中トイレ休憩のために降りた駅で大きなパフェを食べる浮奇を見ながら紅茶を飲み、自分も屋台で買ってきたたこ焼きを食べる。
ここずっと浮奇と全ての食べ物を共有している気がするが、この互いだけという距離感に俺は慣れ始めていた。
乗り換えのためによった駅のゲーセンで対戦ゲームと音ゲー
を楽しみ、無料で入れる足湯を体験する。
最終的にハイキングで有名な山がある駅で下車した。
最後の電車は終点まで乗ったのでかなりの時間乗っている事になり、海で遊び疲れた俺たちは途中から2人とも寝てしまった。
目を覚ました時には電車はトンネルに入っていて
誰も座ってない反対側の座席の窓に映る自分たちが見えた。
互いに頭を預けあって寝ているためなんとも寝にくそうな格好だが自分以外の体温が隣にあることがとても心地よかった。
降りた駅の商店街をあるくとたくさんの店子さんが名産だという果物や和菓子を食べさせてくれた。
ひとつひとつに感動する俺を浮奇と売り子さんが微笑ましく見守っていた。
浮奇は表情変化が乏しいが
俺が抹茶だと思って口に入れたアイスがわさび味だとわかった時はその綺麗な顔をくしゃくしゃにしながら過呼吸になるまで笑っていた。
自分が山に登るのは初めてだとつげると、不意をつかれたような顔をしながらもじゃあコース変更しようねと楽しそうに地図を眺めていた。
そういった彼の生き生きとした姿を見るのは3年間でほとんどはじめてで
途中から彼の驚く顔が見たくて普段やらない事に色々挑戦した。
どこを見ても自分が生まれ育った街には無いものが溢れていて、自分がいかに井戸の中の蛙だったかを実感する。
夏だから日が長く、あっという間に夕方と言われる時間になった。
朝の海から始まりハイキングと散歩を存分に楽しんだ俺たちは太陽の日を長い時間浴びすぎたのもあって
夜ご飯と今夜の宿を探す前に公園の木陰のベンチで休んでいた。
自分の世界から遠い、誰も自分たちを知らない場所にいる事がなんだか逆に自分という新しい存在を強く俺に実感させているようだった。
目の前を下校途中らしい小学生がかけていき、遅れて親御さんのたしなめる声が届いた。
こういった"人同士の距離が近い街"に生まれて、山などのゆたかな自然に近く生きる彼らはどうやって育つのだろう。
万が一にも手足が機械でできていて一族から腫れ物扱いされたり、兄弟がなんでもできるが故にいなくてもいい存在だと扱われることはないのだろう。
ぐるぐると思考を続けているとこめかみが痛くなってきた。
浮奇が咎める様に無言で俺の手をとって行為をやめさせ
そのまま手を繋ぐ。
痛みを減らそうと無意識に手を当ててぐりぐりと押し付けてしまっていたようだ。
しばらくは風が頭上の木々を揺らす音だけがそこにあった。
「沢山歩いたね」
浮奇がその滑らかな飴細工のような声で沈黙を破る。
「そうだな、万歩計を持っていたらこれまでの記録を破っていたかもしれないな」
「あ。俺携帯のアプリのヤツONにしてる〜確認しよっと」
「そういえば浮奇、お前の携帯はつけっぱなしにしても大丈夫なのか?...その、居場所がバレたり」
「携帯を探知されるとして、一体誰が俺の場所を知ろうとするの?」
「は?」
「いや、ふーふーちゃんとかならお兄さんが心配してみるかもしれないけど俺は両親ともいないし、お世話になっている所の人は俺が携帯を持っていることすら知らないかも」
たいしたことでもないように隣の男が告げる。
「いや、でも、周りだって気にするかもしれないだろ、友達とか」
「俺、友達いないけど」
「おい、Albarn達に失礼じゃないか?」
「彼らは友達というより...なんて言うかわかんないけど、とにかく友達とは言わない気がする」
真意を測りかねて無言を貫いたが浮奇はその後の言葉を紡ぐことなく話を移した。
「今日どこに泊まろうか」
「こういう観光地ならいくらでも民泊があるだろ」
「俺温泉入りたいな。露天の」
「俺の体じゃ大衆浴場はいけないぞ。」
「部屋についてるとこいこーよ。」
どうせ最後なんだし、というニュアンスを感じ取って手頃な値段の場所を探してみることに同意する。
結論から言うと手頃な値段の宿なんてなかった。
その上俺たちは身分証も持たずに出てきたからなかなか泊めてくれる場所が見つからず、結局4万円のデポジットを払う事で妥協してもらい1泊1人2万円の宿に泊まることになった。
痛い出費だったが白蓮の香りがする広々とした露天の風呂場や広い座敷、豪華なご飯に目を輝かせる浮奇を見ていたら悪い気もしなくて途中からは俺の方がはしゃいでいた。
2人で風呂に入り夜空を眺める。
あいにく新月だったので月は空にいなかったがその代わり普段より主張を強めた星達が黒い画面を綺麗に飾っていた。
真っ黒とも言えない絶妙な紫と蒼の中間のキャンバスに、針で穴を開けたような小さな光が満開になっていて俺たちはしばらく言葉を忘れてそらを見上げていた。
浮奇が空から星が降ってくる御伽噺をしてくれたので
予定よりも風呂に浸かっている時間が増えてしまい、俺はのぼせてしまった。
脱衣所で一旦横にならせてもらい、どくどくと早くなった血の流れを感じながら体の熱をさげる。
とんでもなく顔を輝かせた浮奇が仰向けにされた俺を覗き込みながらニコニコと風を送ってくれている。
彼はさっきまで水を持ってきてくれたりうちわで仰いでくれたりと意外にも甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。
こういう世話をしたがる面も今回初めて知った所だ。
頭が上手く働かなくて今1番気になっている事が意思に関係なく口からこぼれ落ちた。
「俺の腕と足外して接合面を拭いてくれないか」
「いいの」
宝箱を前にした幼子の様な声音で浮奇が問い返す。
他にもっと言うことがあったのだろうがその3文字を選んだ浮奇に少しほっとする。
外し方を口頭で伝えてとりあえず腕を外してもらう。
そのまま布団にはこんでもらって足も外してもらった。
一気に自分だけでは何も出来ない状態になって行き場のない恐怖感が俺を支配する。
この姿は兄以外に見せたことがない。
考えてみればこんな四肢がない姿、気持ち悪いと思わない方がおかしいのだ。
茹だっていた体が冷めてきたからか、急に冷水を浴びせされたように怖くなってくる。
恐る恐る浮奇の方を見遣ると何やらタオルを電子レンジで温めていた。背中をこちらに向けているので表情は分からない。
ゆっくりと俺の隣に膝をつき、何も言わずに俺の生身と機械の中間部を蒸しタオルで拭く。
何も言わなかったが、浮奇は鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気だった。
繊細な手付きで施術でもするかのように俺の肌に触れるものだからさっきまでの不安が俺の思考を支配する。
もしかして気遣わないといけない対象として見られているのか?
「浮奇、」
「なんでふーふーちゃんはそんなに綺麗なの?こんな美しいもの俺見たことないよ」
どこか焦点の合わない目でうっとりと浮奇が俺の言葉を遮る。
俺はひとまずマイナスな感情を持たれてないことに安堵して装着方法を先に説明しておく。
向けられた熱っぽい視線は見なかったことにした。
「今日はずっと脚を酷使してしまったからな、メンテ道具も持ってないから気がかりだったんだ。変なことさせてごめんな」
「何言ってるの。これからも俺がこの仕事やるからね、他のやつにやらせないで」
膨れた表情で浮奇が面白くなさそうにいう。
「わかったよ、」俺は苦笑しながら言った。
これからなんてあと少しもないのになと考えながら手を装着してもらう。
手さえ元に戻れば後は自分でできると言って脚をつけようとしたが、浮奇が自分でやりたいと駄々をこねるので足も任せた。
その後すっかり湯冷めした俺たちはもう一度風呂に入り直して背中を洗いっこした。
浮奇の体にはあちこちにほくろがあって、星みたいだなと呑気に思っていたのに自分が洗われる時になってこの星を体に纏う男の大して知りたくなかった面を知る羽目になった。
俺の脊髄は機械でできているので丁寧に洗うことは悪いことでは無いのだがそれでもやはり20分以上飽きもせずに背中をこすられているとくすぐったくなってくる。
しかも途中から湯船に浸かるように言われて体がひえないように考慮されいるのでいたせりつくせりだった。
風呂を終えたあとは四苦八苦しながら浴衣を纏って備え付けの和菓子を食べる。
アロエを使った涼し気なゼリーとどら焼きはこれまで食べたどんな和菓子よりも美味しく感じた。
俺の提案で2人で寝る前に全力で枕を投げあって
ある程度までいった所でどちらからともなく天井を見上げて大の字でゴロンと転がった。
隣の浮奇も俺も息が上がっていて顔は真っ赤だったが顔を見せて笑うと不思議と体は疲れていなくて、もう一度体を起こして今度はひとつの枕を引っ張っりあった。
もみくちゃになって、けらけらとわらって、浮奇の肌に映える浴衣の渋緑と枕の白が交互に視界を覆って、結局また布団の上に2人で転がる。
本来離されてひかれていた布団をくっつけて大きな布団にしていたのでスペースは沢山あった。
2人してくだらないことに声を上げて笑いながら手を頭の上でひとつにして横にゴロゴロと転がる。比較的大きい俺の体に潰された浮奇がぐえっっと聞いたことない声をあげた。その声にまた2人で笑う。
子供のように気持ちの向かうままはしゃいで疲れた浮奇と俺は最終的に布団に転がってぼーっと天井を見つめていた。
障子の下半分がガラス製だったので寝っ転がって下から見上げると夜空が綺麗に見えた。
浮奇を誘ってポジションを変えて2人で空を見れるようにして星座を探す。
メジャーな星を見つけ終わった頃には
自然と言葉はすくなっていた
最終的に隣で寝息を立てる
浮奇を見て布団をかけてやる。
自分も寝ようと思って同じ布団に潜りこんでいつものように左腕を下にして眠りについた。