星が落ち岩は眠る元岩神は、流星に恋をした。
自ら手に入れたすべてのものを燃やしながら
より高みへ、磨きをかけかがやくもの。
最も死に近い戦場で煌々とするも
「死んだら終わりだ。」と
生きることに真っ直ぐな魂。
稀有な運命線を描き狂気にも似た流星は
神の心を掴み損ねはしたが
その後も神の座を降りた岩の前に現れ
気ままに食を共にするようになった。
そしていつの間にか岩の懐に入ると
ふと流れることを休むことがあった。
その時の流星は、本当の意味で人であった。
瞬きの間にそれは"かみのこころ"にも降り、
岩が神として傍観してただけの
人が抱く寂しさを 儚さを
それを凌駕する愛を教えてくれた。
そして岩は恋と共に人となることができた。
星も流れることは止めないが、
岩を愛することを選んだ。
そんな流星が、ある日突然落ちたのだ。
目の前で崩れ落ちた星を抱き
岩は 「嗚呼、」と声を漏らす。
なんて、呆気ない。
なんて、星に相応しくないのだろうか。
瞬間、失ったはずの神の力が迸り
人の皮からばらばらと鱗が浮きいでて
遠ざけたはずの摩耗が押し寄せてくる。
けれど岩は抗わなかった。
これから自分の"人生"を生きていけばいいと
笑っていた流星の深海の瞳は
もう世界を映さない。
その事実に岩ははじめて歩みを止めた。
自分らしく生きてもいいと言うのなら
流星と共に眠ることを選んだのだ。
「俺も…もう疲れた。」
この言葉に流星は怒るだろうか?
「死ぬことを選択するなんて、
馬鹿なことはするもんじゃない。」
そういうのだろうと岩は微笑んだ。
人としてこのまま眠りについてしまいたい。
そう思ってしまう程に
こんなにも愛させたのだから
どうか、赦して受け入れて欲しい。
岩もまた星のように光を纏い
そっと琥珀の瞳を閉じる。
傍にいた鼓動の輝きを思い出しながら
揺蕩うように、流星と共に消えていった。
ころり、と
一欠片の空色の水晶だけが落ちて残った。