灯火に闇ジリッとライターの擦れる音が鳴り、薄暗い闇の中で男の顔を映し出す。煙草に火をつけると直ぐにライターの火は消えて煙草の火種だけがぼんやりとその赤を灯す。ふーっと吐き出した息に乗って紫煙があたりに漂って視界を歪ませる。
1面の大きなガラス窓の奥に広がる夜景の光に照らされて男のよく通った鼻梁がかたどられる。
私は情事を終えた後の気怠さの残る体をうつ伏せの格好で高級そうなベッドに預け、男の横顔の輪郭をなぞる様に眺める。
この男とは体だけで繋がっている。男が私に本気になる事はないと断言されているし、もし私が本気になったらこの関係は終わる。だが憎らしいほど好みの顔のこの男は初めから私の想い人だ。この男はただセックスの相手が欲しかっただけで、たまたまそこに私が居合わせただけだ。体だけの繋がりでもいい。どんなに苦しくても血反吐を吐きそうでも私はこの関係を選んだのだ。
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