Sanctum 王宮の巨大な図書館は、お気に入りの隠れ場所だった。
誰も読めなかった古代の魔導書も、真偽不明な歴史書も、ヒュンケルにとっては宝の山だ。しかも、滅多に人と会わないで済む。
修行と称して身体を苛め抜く時間が否応なく減ってしまった今、同程度の熱意を傾けて頭脳を酷使できる場所が見つかった。
これでだいぶ生活のバランスが取れるようになった、と本人は納得している。
しかし、何日も書庫に籠るヒュンケルを見かねたのか(あるいは単に目の届く範囲に引っ張り出したかったのか)、女王の指示で書斎をあてがってくれることになった。
久しく使われていなかった楽団の物置。彼専用の読書室に改造せよ、という、大掃除も兼ねた指令だ。
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