Cupcake「……え?」
もと魔王軍幹部とは思えない、わたあめみたいな返事に、少年は何度目かのため息をつく。
「だから。卵をかき混ぜる時には、こっちの道具を使うんだって。それは、スープを掬うためのもの」
「ああ」
ヒュンケルは慌てて、目の前のボウルに注意を戻す。しかし、粉と卵の塊を呆然と突っつきながら、視線はすぐに窓の外へと飛んでいく。
「もう。教えてくれって言うから準備したのにさ」
「……ああ、すまない。どこまで教わっただろうか」
「もういいよ、今日はやめとこ。またちゃんと教えてあげるからさ」
「悪かった。なぜだろう、朝からどうも頭がはっきりしなくて……いや、もう一度お願いしたい。バターを溶かして、それから」
「うん、多分ヒュンケル様はお料理に向いていないよ」
5904