手指――バラン様と…ディーノ様を頼む…!
そう懇願した彼の手は死を前にしてなお熱く、本懐を刻みつけるがごとく力強い。手に食い込まんばかりの指を握り返すと、魂懸けた戦士の目がひたと見返してきた。
――この鎧をもらってくれないか?お前に…使ってほしいんだ。
魂を認め合った友は、そうして自分に命ともいうべき武器を託してこの世を去った。
……オレは、お前の覚悟に少しでも応えられただろうか。お前の高潔な魂に相応しくあれただろうか。
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闇の中、ヒュンケルは一人佇んでいた。あたりは漆黒が広がるばかりで、一体ここがどこかも分からない。だのに不思議と不安も警戒心も湧き起らなかった。
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