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    ohmita

    おひさまぱっぱか快晴レース↓

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    ohmita

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    10億おつかれさまラジ 人妻喫煙ベランダの二人 いいふうふの日なのに…

    10億貢献度御褒美(ラジ) 半年付き合った彼女と別れた。
    「ごめんね。私、「貴方のことは私が支えてあげなきゃ」って思い込んで、本当の貴方じゃなくて想像してた貴方が好きだった。」
     目の前の俺はどう見えたの?想像と違ってたところはどこ?――――なんて聞くほど彼女を引き留めたい気持ちが無いのにその時気付いて、「そう、分かった、ごめんね」と短く言って別れた。
     告白は向こうからで、悪からず思っていたから付き合い始めたのだけれど、そんな態度が良く無かったのだろうか。彼女が支えたいと思っていたのなら、ささやかな気遣いにも「君がいてくれて良かった」と感謝しなければいけなかったんだろうか。心底惚れてはいなくとも、半年間、特別親しくしていた人と別れるのは、自分の落ち度は何かどうしたら良かったのか,あれこれ考えてしまう。
     風呂でも入って気分を変えようと、床に積まれた洗濯物の中からタオルを引っ張り出したら、どこからか煙草が転がって落ちた。何週間か前に彼女が忘れていった煙草だ。「どうせ一本しか無いから今度行った時吸うよ」と言われてからそのままにしていた。『今度』は無かったし、今まで忘れていたから捨てもしなかった。
     「床は物置じゃ無いよ」と苦笑いした顔が蘇る。雑なのが嫌だったんだろうか。でも俺だって、君の煙草が家の中だとやけに籠るのも、寝起きの不機嫌が結構長引くのも付き合うまで知らなかった。
     結局お互い相手のどこが好きだったんだろう。
     一本しか無い煙草を忘れ物だと突き返すのも嫌味っぽい。捨てようとして拾った瞬間、不意に「吸ってみようか」と思いついた。ただ捨てるよりも目の前で燃やしてしまうのが一番綺麗さっぱり忘れられると思った。
     非喫煙者のランスロットの家にライターはない。換気扇を回してコンロに火をつける。煙草の先を炙っても炙っても火がつかなくて首を捻りながらスマホで調べたら、咥えて吸い込みながらでは無いと火はつかないらしい。へえと感心しながら、前髪が焦げないように顔を傾けつつ吸った。不味い煙は肺に浅く入って思わず咽せる。『煙草 咽せない吸い方』続けて検索する。煙を口に溜めるといいらしい。
     恐る恐る吸って口に煙を留めたら、彼女が帰ったあともしばらく染み付く残り香みたいな不味さが広がった。
     ごほ、と吐き出した。これは換気扇じゃきっと逃しきれない。部屋を突っ切りベランダへ向かった。掃き出し窓を開けてサンダルを突っかける。
     手に持っているのとは違う、煙草の臭いがした。
    「……あ、」
     ベランダの手摺に手をかけたところで別の煙草の出所に気が付き、ランスロットは焦って頭を下げた。右隣の家の奥さんが、手摺へ凭れて物憂げに喫煙していた。ランスロットと目が合うと柔らかく笑う。夕日はもう沈みかけていて、最後の陽は隣人の輪郭に触れて弾け砂金粒のように瞬いた。
    「こんにちは。」
    「こ、ん……にちは、」
    「煙草、吸うの?」
    「いえっ、あの……これは、偶々、」
    「偶々?」
     妙な言い訳にもふんわりと笑って、それ以上は尋ねてこなかった。
     ランスロットが越してきた時の挨拶に対応してくれたのは旦那の方で、四十程に見えたが精悍な美丈夫だった。それ以降ゴミ捨てやらで時々顔を合わせるのは今傍らに居る方で、旦那の方は挨拶以来さっぱり見かけなかった。
     居辛かったけれど今引っ込んだら露骨に避けたようだ。ランスロットは煙草を吸わず咥えたまま、隣人の様子を窺う。指に挟まれた煙草は、まだ充分な長さがあった。
     外で見かけた時と印象が違った。ウェーブした栗色のロングヘアは素っ気無い黒ゴムで無造作に束ねられて、纏まり損ねた毛は所々から垂れている。恐らく部屋着であろうダークグレーのパーカーはジップが半端な位置までしか上がっておらず、曝け出された鎖骨の陰影が、肌の白さを艶めかしく強調していた。目が合うとおっとりとお辞儀するあの嫋やかさが、今は夕空に棚引く紫煙に気怠かった。
    「……煙草、吸われるんですね。」
     すれ違った時に煙草の香のしなかったのを思い出して問えば、「ん……『偶々』」と真似をして忍び笑いが返ってくる。
    「結婚した時に止めたんだ。だから……今日は本当に、『偶々』。今日見たこと、旦那には内緒にしてくれるか?」
    「それは……勿論、ですけど、匂いで分かりませんか?」
    「大丈夫。今日は帰ってこないらしいから。」
     弧を描いた唇で煙草を咥えた後、煙を吐くのと同時に少し空を仰いだ。
    「――――最近、急な泊りとか、三日くらいの出張とか、増えたんだ。」
    「へぇ……お忙しいんですね。」
     ランスロットの素直な返事に、遠くを見つめたまま唇だけが微笑み、「だから俺も、居ない間は好きなようにする」と独り言のように呟く。
    「……そっちは?どうして『偶々』?」
    「ええと――その、彼女の、忘れ物で。」
    「ああ。匂いが恋しくて、吸ってみた?」
    「いえその――別れたんです。」
     隣人は物憂げな目を覚ましたかのように見開いた。「それは」形のいい眉を顰め、何と言えば良いのか困った様子だ。ランスロットは努めて明るく話す。
    「半年付き合ってたんですけど、『好きなのは想像上の俺で本当の俺じゃなかった』って言われて。どういう俺が好きだったのかは分からなくて……いや、聞かなかったんです。そこまでして彼女と付き合ってたいかって考えた時、そうでもないなって気付いちゃって。それで別れて――さっき、彼女の忘れてった煙草見つけて、捨てるよりも燃やして無くした方がさっぱりするかなー、なんて。女々しいですかね?」
     おどけて聞いてみたら、向こうは少し考えた後、首を静かに横に振った。
    「大好きではなかったけれど嫌いではなかった人と別れるのは、気持ちがはっきりしていない分、悲しめないし割り切れないし宙ぶらりんで行き場がない。落ちるか上るか出来るまで、やれることは全部やったら良いと思う。」
     ね、と緩やかに同意を求めて小さく首を傾けた。煙草の先の灰が分厚くなって、パーカーのポケットから蓋つきの小さなアルミ缶を出すとその中へ落とした。「どうぞ」と差し出されるまで、ランスロットは隣人の手元に見惚れていた。
     小型の灰皿を有難く借りて灰を落とす。その後吸わずに居るのも妙だから咥えて一呼吸してみたが、口に溜める筈が喉が上擦り肺に落ち咳き込んだ。
    「煙草、全然吸わないのか?」
    「けほっ、はい……何年か前に、その時もなんかむしゃくしゃして友達の一本吸ったっきりで……。」
    「一本吸ってクセにならなかったか、健康的で良いな。でも彼女は喫煙者だったんだ?」
    「そうですね、ヘビースモーカーってほどではなかったですけど……。」
     ランスロットは指に挟んだ煙草へ視線を落とす。
    「外で吸ってた時は、苦い匂いも彼女っぽいなと思って好きだったんです。でも家で吸われると重たくて不味くて……」
    「――――部屋と外じゃ、空気が違うからな。」
     そうなんでしょうね、と呟いて返す。家の中の違和感はきっと彼女も同じだったんだろう。残り半分を切った煙草の向こうにそんなことを考えていると、「こっちの匂いはどう?」と不意に聞かれた。
    「え?えー……と、あんまり……?」
    「嫌な臭いじゃない?」
     そう言って意味ありげに笑うとひと息吸い込んで、ふう、と煙をランスロットの方へ吹いた。「わ!」ランスロットは短い悲鳴を上げ、それが不幸にも煙を吸い込んでしまうことになってそのままむせる。煙はじっとりと重たくて苦い。
    「……何するんですか、もう!」
    「ふふ、ごめんごめん。で、どう?」
     彼女の煙草より苦い――――でも、不味くなかった。
    「……嫌な匂いでは、ないですけど……。」
     微笑みは、まるでランスロットがそう答えると分かっていたかのようだった。
     隣人は煙草を灰皿に押し付けると蓋を締め、再びポケットへ手を入れると煙草のパッケージを取り出した。
    「預かってくれるか?」
     灰皿と煙草を、ランスロットへ差し出す。
    「家に隠すつもりだったが、君が持っていてくれたら旦那には絶対見つからない。」
    「え……いい、ですけど、いつお返ししたら……?」
    「吸える時にはまたベランダに出るから、その時に。」
     ――つまり、持っていればまた会える。
     『不倫』とか『浮気』の単語が後から浮かんだが、ただの喫煙所友達だとランスロットは心の内で大きく首を横に振った。彼女と別れてひと恋しくなっているからそんな『勘違い』をするんだ……
     ……多分。
     掌の上の二つをそっと受け取ると隣人は「ありがとう」と囁くように言った。
    「気に入ったなら吸ってもいいから――――それじゃ、また。」
     次がいつかは言わないまま、隣人は身を翻した。窓を開けて閉める音が響く。日はすっかり沈み、ポケットへ入れっぱなしだった煙草のパッケージは手の中でほんのりと温かい。
     ランスロットも部屋へ戻り、煙草をシンクで消して生ゴミ入れへ捨てた。
     『今度』があるかはやっぱり分からないけれど、この煙草と灰皿はすぐ出せるようにしておこうと思った――風呂の前に少しだけ、掃除をしようか。
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    ohmita

    PROGRESSひゃくこいに出す予定の尾鯉 大体3パートになる予定で最初の1パートできたので進捗さらし✋全部書き終えたらチョイチョイ手直しするからとれたての味が読めるのは今だけ!オトク!
    ㍾最終話後おがた生存ifあとまあ細かいところはワイがこれまで書いたとこ読んでもろて
    ひゃくこい用(書きかけ) 勇作の声がしたような気がして振り返る。
     声といえど正確な響きはとうに忘れた。朧げに残っている呼び方や言い方の癖から勇作のように聞こえただけだ。
     あの日はっきりと顔を見たことは覚えているのに、あれ以来鮮明に思い出せない。眼差しや唇の動きの断片がぼんやりと結ばれ、かろうじて勇作の形を作る。
     もう十年も経たぬうちに擦り切れて消えるのだろう。それでも共に過ごした年月の倍以上かかるのだから、思い出はまるで呪いだ。

     幻聴は兆しだったのか、その日の夕から頭痛がし始め、半刻経たぬ間に右目の内から抉るような酷い痛みに変わった。直に治るだろうと高を括っていたのが仇になり、どうにもならなくなってから飲んだ鎮痛剤は効き目が遅い。動くにも動けないが横になって眠れるものでもない。ただ布団の端を握り締めて耐え、時折薄目を開けては今日は来るなと部屋の空白を睨んだ。だが、願えば願うほど、天は嘲笑って嫌がらせをする。
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    recommended works

    ohmita

    PROGRESSまだ書き終わってネ~~~けど丁度いいとこまで書けたので尾鯉の日だから出します。
    谷崎潤一郎『人魚の嘆き』パロのなんちゃって中華風尾鯉。尾形が貴公子でおとのちんが人魚です。鶴見中尉とヴァシリちゃんもちょこっと出てくる。全部かけたらピクシブにあげます。
    人魚の嘆き「一つ箱が多いようだが。」
    紳士の穏やかな問いに、金の玉座へ身を凭せかけた若者は物憂げに答えました。
    「一つ増えても二つ増えても、あって困るものではないでしょう。どうぞ持って行ってください。――――まったく、恐ろしい程に上手くいった。」
    若者はいくらか酔った様子でありましたが、両の目だけはまるで獣のように爛々として紳士を見据えておりました。ところが紳士は、若者の眼差しを受けて畏れるどころか、子でもあやすように微笑みます。
    「私はきっかけを与えただけに過ぎないよ。君が思っている以上に、君の御父上は恨まれていたし弟君よりも君こそが当主に相応しいと思う者が多かった。それだけのことだ。」
    白々しい言葉を嘲り若者は唇を歪めて笑いました。若者の父は、そのまた父から受け継いだ武功を更に重ね、時の皇帝の覚えもめでたく、最早他人は羨むのを諦めるほどの巨万の富を拵えました。また若者の弟は父に倣い武を磨き学にも秀で、正妻の息子として大変立派な人でありました。
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    はも@🐈‍⬛🎏原稿

    SPUR ME恋音展示が間に合わない文量になったので、現在できてるところまで公開します!本当にすみません!完成したら完全版をpixivに投稿しますので、よろしくお願いします。
    函館に引っ越してきた鯉登くん(16)が冬季鬱っぽくなったのを、ここぞとばかりに手を差し出して手に入れようとする尾形百之助(21)の話です。
    極夜にて「尾形はあたたかくて、すきだ」
     そう言って尾形の膝の上に形の良い丸い頭を置いて少年が呟く。少年の声は声変わりが済んでもまだ少しばかり声が高く、甘い。
     尾形、おがた。何度も甘い声で名前を呼ばれ、尾形はくつくつと肩を揺らして笑う。
    「なぁ、もうここで暮らせよ」
     艶のある黒紫の髪を撫で、少年の耳を指で柔く揉む。たったそれだけなのに、少年の耳が赤く染まる。黒い瞳がゆっくりとこちらを向く。気が強い性格で、誰にも弱ったところを見せようとしなかった子どもが、今は縋るような目で尾形をじっと見つめている。
     この少年には自分しかいない。言葉で言われなくとも、少年の視線、表情、態度で解る。それが尾形にとって他の何にも変えられない幸福――黒くどろどろした幸せが自身を染めていく感覚にうっすらと微笑んだ。
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