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    ru_za18

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    江ダリで出してた、雨さん弟の家族パロ「この先見据えて」の続きちょこっと(途中まで)

    松井が中心に出てます。
    途中、松井×女主人公っぽい表現があります

    あなたも私も「それで、朝から走ってたってことかな」
    「……うん」
     目の前で“呆れた”とでも言いたげな顔をしているのは、近所に住む同級生の松井。今朝、弟の五月雨こと雨から少しずつでも離れなければと思い至った経緯と、雨に問われたことに直ぐ様解答してしまったこと。その辺りを話しただけで、松井の表情はこれだ。
    「そんな顔しなくても良くない?」
    「したくもなるよ。浅はかだと思う」
    「え?どの辺が?」
     思わず聞き返した私の言葉に、松井は長い長い溜め息を吐く。ちらりとこちらを見たと思えば、未だに変わらない表情に少し身構える。
    「……まず、お互いにコンプレックスを抱えてるのに
    、片方から離れるだなんて無理だろう?」
    「コンプレックス?」
    「あなたはブラコン、五月雨はシスコンじゃないか」
     松井の答えに、ただ瞬きを繰り返す。自分自身がブラコンな気はしていた――いや、少なからず自覚はあった。けれど、雨がシスコンとはこれいかに。
    「雨がシスコンな訳無いよ。私に付き合ってくれてるだけで」
     雨は優しい子だ。だから、私が向ける“弟が可愛い”という気持ちに返してくれているだけで、雨自身はそうではない。そう思っているけれど、松井は“呆れた”から“有り得ない”といった表情に変化した。
    「は?本気で言ってる?」
    「本気も何も、事実でしょ」
    「馬鹿らしか……」
     ついには頭を抱えだした松井。何故かはわからないけれど、背負う空気が重い気がする。
    「松井、大丈夫?」
    「むしろ、あなたが大丈夫なのか心配になるよ」
    「どの辺が?」
    「その辺が」
     こちらを見る瞳は、じとりとしていて居心地が悪い。何故なのか、ぐるぐると思考を巡らせても辿り着くことは出来ずに浮かぶのは疑問符ばかり。迷宮入りだ。そんな私の考えを感じ取ったのか、松井が仕方ないと言わんばかりに口を開く。
    「……僕が何回か、あなたの家にお邪魔したことがあったと思うのだけれど」
    「あったね!お見舞いだったり、テスト勉強だったり」
     学校を休んだ時やテスト間際の勉強の為に、松井が家に来たことがあった。今では私の家に来るよりも、私が松井の家に行くことの方が多くなったけれど。
    「どうしていつも僕が早くあなたの家を出るか、考えたことはある?」
     そう聞かれて、はたと気付く。確かに松井は家に来たことはあったが、いつも帰るのは早かった。そして、帰っていくのを見送るでもなく、雨から毎度聞いていたのだ。『松井さんなら先程帰りましたよ』と。
     いつしか、松井とテスト勉強をするだとか、そういった時は『僕の家でしないか?』と言われることが増えた。特に疑問もなく、可と答えていたが――。
    「……考えたこと、無かった。いつも『もう帰っちゃったんだ』くらいにしか……」
    「だろうね。そうだと思った」
     もう十年程になる付き合いだからか、松井は私という存在をよくわかってくれているらしかった。ようやく変わった表情は、先程のような負を纏ったようなものでは無くて、何処か優しさを孕んだもの。
    「仕方がないね。少しは知ると良いよ」
    「え?どういうこと?」
    「コンプレックスを抱えてるのが、あなただけじゃないってこと」
    「……どうするの?」
    「五月雨には悪いけれど、久々にあなたの家にお邪魔しようと思う」
     『現状を知らなさすぎだよ』と言いながら、自席に戻っていく松井の背中を見送る。
     ――知らなさすぎって言ったって……。
     松井から見れば、私は周りが見えていないのかもしれない。けれど今、少しでも離れておかないと、結局寂しい思いをするのは私なのだ。私も雨もまだ考えはつかないけれど、いずれ誰かとお付き合いして結婚するだろう。それに雨のあのイケメンぶりでは、きっと私より雨の方がお付き合いや結婚も早いと思うから――。
    「自分が傷付きたくないだけなんだよ」
     鳴り響いたチャイムが重なり、私の言葉は掻き消えた。保身に走った言葉は誰に聞かれるでもなかったけれど、『いっそのことバレてしまえば良いのに』と思うほどには、この自己中心的な気持ちを捨ててしまいたかった。
     朝に弟離れを思い至ってからというもの、雨が可愛くて仕方ない気持ちと将来を思う気持ちの狭間を、ゆらゆらと行き来しては最終的に落ち込んでいる。悪循環だ。
     ――どうしようもないことは、わかっているはずなのにな。
     考えても出ない答えを止めるということは出来ずに、思考は気付けば先の話に戻って来る。いつの間にか教室へ入ってきていたらしい先生の声をぼんやりと聞きながら、どうしたものかとまた気持ちを辿る道を歩き出した。


    「ほら、早く開けて」
    「わかってる」
     放課後になり、少しそわそわとしながら立つ家のドアの前。後ろから覗き込みながら言うのは、ここまで一緒に来た松井だ。時間的に、雨はもう帰ってきているだろう。カチャリと鍵の回り、玄関の扉を開ければ、雨がリビングから顔を出した。
    「おかえりなさい、姉さん……と、松井さんですか」
    「ただいま、雨」
    「久しぶりだね、五月雨」
     満面の笑みで出迎えてくれた雨が、後ろの松井を見つけて彼へも声をかける。表情も変わらなければ、声色も私にかけるものと変化はない。
     ――特におかしなことはないけど……。
     これから起こるものなのかわからず、考えながら靴を脱ごうとすれば、スッと横から差し出された手は松井のもの。
    「危ないからね。掴まって」
    「あ……ありがとう」
     松井はにこりと笑って自分を支えにしろと言う。学校での様子を思えば、言われることがないはずの言葉に驚きを隠せない。差し出された手にそっと重ね、靴を脱いでいく。驚きからだろうか。少し、胸が高鳴っている気がする。
     靴を脱ぎ終えて廊下へと歩を進めれば、松井も『お邪魔します』と声をかけて靴を脱ぎ揃えた。その間、重なった手は放されることなくそのままだ。
    「松井、手は……」
    「部屋まですぐだろう?」
    「そう、だけど……」
    「それまで、このまま」
     ぎゅっと握られた手に、私は内心パニックを起こしている。こんなことをする間柄でもなければ、何がここまでさせるのかもわからない。漂う甘さも、私達の間では無かったことなのだ。戸惑いだってある。
    「……それじゃ、部屋に行こう」
     今、ここでは手を放されないこともわかった。早く行こうと手を引けば、ずっとこちらを見ていた雨がこちらへとやってくる。
    「姉さんと松井さんは、お付き合いをされているんですか?」
    「え⁉違うよ!松井は今日、遊びに来ただけだし……」
    「そうそう、今日は遊びに来たんだ。まだ付き合ってないよ」
     無表情になっている雨とにこやかに返す松井の対比に、何も出来ない私。雨も松井も何を言っているのかと頭を抱えるしかない。雨も些か機嫌が悪い気がする。雨に声をかけようとしたけれど、ぐいと引っ張られたのは繋がった手だった。
    「松井」
    「ほら、僕たちは部屋へ行こう」
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