回夜宝寿の甘美な夢私は薄暗い路地を歩いている。後ろからカツカツと足音が響く。私は誰かに追いかけられている。どんなにあるいてもその足音は止まない。やがて私は走り出す。カツカツといえ足音は止まらない。そしていよいよその音は私のすぐ後ろまで迫ってきていた。
もうムリだ。そう思って振り返ると…そこには…。
そこで私は目が覚めた。汗をかいて髪も身体もベタついている。しばらくは頭が覚醒せず、上手く身体を動かすこともできなかった。やがてここが自分の部屋であの薄暗い路地ではないことに気づいた。やっと夢から抜け出すことができた。その事実にほっと胸を撫で下ろす。
私は牧野花、25歳のしがないOLだ。この八百万町には就職を期に越してきた。この町に不満はない。住民は皆助け合い、人も人外も平和に暮らしている。しかし、この町に越してきて以来、私はある現象に悩んでいた。それが悪夢だ。
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