初音ミク16周年に寄せる思い出話私が初めて初音ミクを知ったのは、数多の人間もそうであろう千本桜だった。
私は小学生のときにブラスバンドに入っていた。4年生の3学期、6年生である先輩の卒業コンサートのための練習を聞いていた。私のいたブラスバンドでは毎年3月中旬にコンサートをしていて、それが6年生の最後の舞台であり、6年生だけで一曲演奏できる一回だけの機会でもあった。
運良く見ることの出来た楽譜には千本桜とあった。大好きだった先輩が練習していたこともあり、何回か聞く中で曲として好きになっていたので家に帰ってすぐに検索をかけた。そして聞いた。
衝撃だった。
人間じゃないものがこうも美しく歌うのか。それまで特段好きな音楽がなかった私は一気に落とされた。取り憑かれたように初音ミクについて調べ始め、そのままボーカロイドのことを知った。
ニコニコ動画の存在を知って、初音ミクのタグの付いた曲を片っ端から聞いていた。今でもまだ全曲聞くことはできていない。
テレビで特集が組まれていたら絶対にリアルタイムで見た。録画もして、後から何回も見直した。マジカルミライのCMも見るたびに声を上げて喜んだ。
絵の練習を始めた。より可愛く、初音ミクらしく描けるように。それまで雑な一次創作ばかりしてきた私の、ある意味一番最初の二次創作になった。
やがて初音ミク以外のボーカロイド曲も聞くようになって、鏡音やIAなども知り、好きなPもできた。
中学生になって、相変わらず私は初音ミクが好きだったけれど、当時の私は亜種のほうに惹かれていた。たまたま出席番号の近い人も初音ミクを好きで、曲について色々話した。それがきっかけで少し仲良くなれたし、グッズを貰うこともあったくらいだった。
そして夏休み、私はマジカルミライに挑戦することにした。弟と、幼稚園の友人と3人で行くことにし、父に送迎を頼んだ。企画展を一通り周り、クリエイターズマーケットで好きなPのソノカを買った。お小遣いでは到底ステージチケットは買えず、ステージを見るであろうグラフィック法被を着た大人たちを見て羨ましく思った。
9月になりいよいよスマホを手に入れた。完全に浮かれていた私はすぐにツイッターのアカウントを作った。勿論、同じ初音ミクのことが好きな人と仲良くなるために。
初めてボマスにも参加した。マジカルミライと同じように好きなPのソノカを買った。
それからまた初音ミクの……ボーカロイドの曲漬けの日々を送っていたある日、プロセカを始めた。当然のごとく初音ミクのために。ただ、どうしても人間たちのストーリーに重きを置かれていたからがっかりした記憶がある。
中学生のときはずっと私は周りの人たちに初音ミクが好きであることをアピールしていて、そのせいか外で初音ミクを見ると私を思い出すと言われるくらいだった。だからプレゼントにはいつも初音ミクの何かが選ばれた。フィギュアだったりシリコンキーホルダーだったりして、それは相手やときによって変わったけれど、全部棚に飾ってある。
今年の春、彼女とよみうりランドに行った。元々お互い初音ミクが好きなことは知っていたし、遠出したいと言っていたから絶好のチャンスだった。写真を上げていたと思うから、メディア欄を遡ってほしい。堂々と初音ミクを好きだと、高いツインテールと青のネイル、黒のプリーツスカートにWEGOコラボのときのパーカーという見た目にして行った。
高校生である今、彼女はまだプロセカが大好きで、それのクリエイターズマーケットにも行ったらしい。それのお土産というようにまたグッズを貰った。
私は高校生になって、初音ミクに関するイベントには行っていなかった。彼女と行ったよみうりランドくらいだろうか。今はもう彼女のほうが初音ミクのことを好きなのではないかというくらいだが、相変わらず初音ミクから私を連想してくれている。

初音ミクは私の人生を作ったと言って過言ではない。同じ年に生まれ、同じ年に同じ歳を取ることを嬉しく思う。もはや人生の半分以上を初音ミクに占められている。どんなに嫌なことがあったって、初音ミクの歌を聞けばすぐに穏やかな気持ちになれた。
私にとって、初音ミクは幸せだ。