とある酒場、賭け事に興じる男達。
その中に混じるのは、七英雄が一人クジンシー。
全額賭けて独り勝ちというミラクルを起こし、調子に乗りに乗っていた。
「ほらほら、次は誰が勝負するんだ?」
グラスをあおりながらけしかけてくるクジンシーに、さすがにもう出せねぇよと対戦相手達は白旗を上げている。
「何だよ根性無ぇな?
もう一度全額賭けてやるぜ?
一気に取り返すチャンスだせ?」
賭け事に使ったカードを混ぜつつ煽ってくる彼に、でもなぁーと乗り気ではない男達。
クジンシーはつまんねぇと目を細めていたが、ふとある事を思いつきにやりとする。
「なんなら、俺自身を賭けてやろうか?」
その言葉に、色めき立つ男達。
自身が時折性的な目で見られている事を自覚していたクジンシーは、場を盛り上げるために軽い気持ちで己を景品にすると名乗り出た。
酒の勢い&勝ちが続きテンションが上がっている&調子乗りという三コンボによる奇跡の発想である。
「俺に勝ったら一晩好きにして良いぜ?」
下卑た目でこちらを値踏みしている彼らの前で足を組みかえ挑発的に誘い、まぁ負けないけどなと余裕を見せながら酒を飲み……
「では、俺がやろう」
背後から聞こえてきた知り合いの声に、むせるクジンシー。
「ゲホッゲホッ……
ノ、ノエル……?なんでここに……」
おそらく誰かがリークしたのだろう、眉間にシワを寄せこちらを見下ろしている。
ノエルはクジンシーの疑問には答えず、ビビって立ち上がった対戦相手達の代わりに彼に向かい合う席に座る。
バンッと机に財布を叩きつけ、ギロリとクジンシーを睨みつけ「カードを配ってくれ」と催促するノエル。
その鋭い眼差しに、これはどんな言い訳しても無駄だと察したクジンシーは開き直り、勝って金を巻き上げれば良いだけだ、負けたら怒られるだけだと対戦に挑み……
期待を裏切らず、クジンシー惨敗。
「俺の勝ちだな、行くぞ」
「ひ、ひげー」
ずりずり引きずられて酒場を後にしたのだった。
あーこれは朝まで説教コースかなとびくびくしていたら、連れていかれたのはいわゆる連れ込み宿的な場所で。
てっきり宿舎に戻ってみんなの前でお説教だと思っていたクジンシーは、「え、ノエルこんな場所知ってるんだ」と驚いて。
「……誰と来たんだろう」となんかモヤモヤして。
そんな彼の気持ちはさておき、部屋を一室借りて中に入り鍵を閉め。
クジンシーはノエルの前で正座をし、「すいまっせんでした!!」と安定の土下座。
「やめてくれ、そんな姿を見たいわけではないをんだ」とノエルに言われ顔を上げるクジンシー。
自分を見ている表情がいつもと少し違う気が……と思っていると、突然ノエルに腕を捕まれ立ち上がらされた。
え?となっていると、そのまま寝台にボスッと放り込まれる。
え?え?と困惑していると、覆い被さる様に上に乗られた。
えー!?と固まっていると、襟に手をかけられさすがに待ったをかけるクジンシー。
「何で?!」
「一晩好きにして良いのだろう?」
「いや言ったけど!!丸々お説教とかじゃないの!?」
「俺はそんな事を一言も言った覚えはない」
器用にクジンシーの服を脱がしながら、ノエルは彼の顔を真正面から見つめ言う。
「君の意図した通り、君を抱きたい」
あまりのストレートな言葉に、クジンシーは真っ赤になって絶句。
「お、俺じゃなくてもノエルなら他にいっぱい相手してくれる人いるだろ……?」
「君が良いんだ。他の者に手をかけられたくない」
「なんで……」
「……この流れで、理由を話したくない。
いずれ改めて、訳を話そう。
だから今は……何も聞かずに抱かれてくれ」
頭が回らないのは酒のせいか、とんでもない口説き文句のせいか。
クジンシーは何とか言葉を振り絞り出す。
「……せめてお風呂入りたいです……」
「わかった」
離れるノエルに安堵するクジンシーだが、次の瞬間お姫様抱っこされ再びひげーと叫ぶはめに。
「一人で!!一人で入るから!!」
「酔った君一人で入浴させるのは不安だ。俺も行く」
「大丈夫だって!!下ーろーしーてーくれー!!」
当然解放されるわけもなく、そのまま連行されていったとさ。