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    kurono_666_aka

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    kurono_666_aka

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    冬ぬくし 冬は寒いものだと思っていた。

     キンと冷えた空気が肌を刺す。それを肺に入れないよう細く息を吸いながら、魏無羨は足早に歩いていた。今夜は月が明るい。雪に覆われた景色は、冴え冴えとした光に照らされてまるで銀色に輝いているようだ。
     亥の刻はとうに過ぎ、雲深不知処内はひっそりと静まり返っている。静けさと冷たい空気が相まって耳の奥がつきんと痛む。
     そんな静寂に包まれた銀世界に暖かい明かりがひとつ。静室だ。自分のために灯されたそれに向かって魏無羨は弾むような足取りで駆け出していた。



    「ただいま、藍湛!」
     勢いよく扉を開けると、暖かい空気とそれよりももっと暖かい腕に包まれる。
    「おかえり、魏嬰」
     魏無羨は躊躇なくその腕に飛び込み檀香の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。それだけで、抑えようのない感情が湧き上がって口角が緩む。
     全身に冷気を纏わせたまま、にこにこと上機嫌な魏無羨に、藍忘機はそっと顔を寄せた。魏無羨の赤くなってしまった鼻に藍忘機の形の良いそれが触れる。
    「……! 魏嬰、早く沐浴を」
     氷のように冷え切った肌に藍忘機が慌てて湯の用意をしに行こうとするのをしがみついて止めた。
     大丈夫とかぶりを振って魏無羨はちゅっと触れるだけの口づけをする。

     灯された明かり。抱きしめてくれる腕。愛しいぬくもり。

     冬は寒いものだと思っていた。
     だけど、今は。

    「藍湛! 俺、今すごくあったかいんだ!」




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    sgm

    DONE江澄誕としてTwitterに上げていた江澄誕生日おめでとう話
    江澄誕 2021 藍曦臣が蓮花塢の岬に降り立つと蓮花塢周辺は祭りかのように賑わっていた。
     常日頃から活気に溢れ賑やかな場所ではあるのだが、至るところに店が出され山査子飴に飴細工。湯気を出す饅頭に甘豆羹。藍曦臣が食べたことのない物を売っている店もある。一体何の祝い事なのだろうか。今日訪ねると連絡を入れた時、江澄からは特に何も言われていない。忙しくないと良いのだけれどと思いながら周囲の景色を楽しみつつゆっくりと蓮花塢へと歩みを進めた。
     商人の一団が江氏への売り込みのためにか荷台に荷を積んだ馬車を曳いて大門を通っていくのが目に見えた。商人以外にも住民たちだろうか。何やら荷物を手に抱えて大門を通っていく。さらに藍曦臣の横を両手に花や果物を抱えた子どもたちと野菜が入った籠を口に銜えた犬が通りすぎて、やはり大門へと吸い込まれていった。きゃっきゃと随分楽しげな様子だ。駆けていく子どもたちの背を見送りながら彼らに続いてゆっくりと藍曦臣も大門を通った。大門の先、修練場には長蛇の列が出来ていた。先ほどの子どもたちもその列の最後尾に並んでいる。皆が皆、手に何かを抱えていた。列の先には江澄の姿が見える。江澄に手にしていたものを渡し一言二言会話をしてその場を立ち去るようだった。江澄は受け取った物を後ろに控えた門弟に渡し、門弟の隣に立っている主管は何やら帳簿を付けていた。
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