夢が叶う、その前夜 引き戸を引く音に気付いたテマリが玄関に向かえば、ちょうど靴を脱いでいるところだったシカマルが振り返って「ただいま」と笑った。その顔は茹蛸のように赤いが、テマリにとっては予想通りなので驚くこともない。
「おかえり」
「悪い。遅くなっちまった」
「ナルトを家まで送ってやったんだろう? さっきヒナタからお礼の電話があったよ」
立ち上がったシカマルの上着を脱がせながら、テマリは言葉を続ける。
「着替えはもう準備してあるから、このまま風呂に入っちゃいな。明日はお前にとっても重要な日なんだ。しゃきっと朝を迎えられるようにしておけ」
「そうだな。あ、風呂の前に――」
「水だろ」
テマリはシカマルの言葉を遮り、その背中を強めに押した。
753