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    sigu_mhyk

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    1日1ネファネチャレンジ 41
    現パロ ネロファウ♀

    ##1日1ネファネチャレンジ

    『この動画は削除されました』『──ここでフライパンにトマト缶を汁ごと入れる。缶は手軽でいいけど、たまには自分で作るのも美味いよ。そのうちやろうかね』

    「うわぁ!ごめんなさい!」
    昼休み。昼食を外で済ませる人も多く、フロアには数人しか残っていない。ファウストも持参した弁当を自席で広げていたところ、隣席の後輩が開いた動画の音声がそこそこの音量で流れてしまったらしい。慌てて消音モードにスイッチを切り替えているが、焦った彼女の声の方が大きかった気がする。
    「別に構わないけど」
    「すみません~電車ではイヤホンしてたの忘れてて」
    「何かを見ながら食事をするのは行儀が悪いよ」
    「す、すみません……」
    もう食べ終わったので!と空っぽになった弁当箱をわざわざ見せつけてくる後輩を適当にいなし、ファウストはふと先ほど流れた音声に関心を向ける。
    「何見てたの、さっき」
    「料理動画ですよ!最近流行ってる人で……見ます?」
    椅子ごとファウストの横に移動してきた彼女は、慣れた手つきでスマートフォンを操作すると先程の動画を画面に開いた。ファウストは一度箸を置き、差し出された小さな画面に顔を寄せる。
    「料理人Nさん!顔出しは一切しない手元だけの動画なんですけど」
    するするとスクロールされていく公開リストから、そこそこの数の動画をあげていたらしい。横にある数字は閲覧回数だろうか。万単位じゃないの、とファウストは内心驚いた。
    どうやらSNSで拡散されたことがきっかけらしく、彼女もそれを見て動画を閲覧し始めたらしい。所謂「バズった」ということなのだろう。この動画のどこが皆に響いたの、とのファウストの問いに、後輩は身近さかなぁ、と答える。
    「ほら、こういう料理紹介って『お洒落すぎて材料が揃わない』パターンが結構あるじゃないですか」
    「ハーブとか、スパイスとかね」
    「そうそう!でもNさんのはスーパーで普通に手に入る材料で作れるし、何よりめちゃくちゃ美味しいんです!家庭料理が多いのに、え、これってこんなに美味しく作れるもんなの!?ってびっくりしちゃう」
    世の中にお洒落で煌びやかなものは溢れているけれど、それを毎日手元に置くことは難しい。結局のところ付き合いが長くなるのは普通のものであって、その「普通」を上手く使えるのが彼なのだろう。他人より優れたものを取り合う、他人より目立つためにより過激になる過剰な情報社会で疲弊した人たち。そんな人たちの心を、普通でいいんだよ普通で、と寄り添うような彼の料理が少なからず穏やかにしているのだろう。
    「あと声がいい……ちょっと気怠げな声って色気ありません?」
    「ふーん」
    「あっ!どうでもいいって顔してます!」
    男性アイドルにでも向けるかのような話題になったところで、ファウストの関心はさっぱりと失せた。途中で止まっていた食事を再開すべく再び箸を取ったファウストの手元を、後輩がじっと覗き込む。
    「……なに」
    「それにしても、ファウストさんのお弁当、いっつもすっごく美味しそうですよね……」
    ご自分で作られているんですか?凄いな~と感心している後輩はまた自席に戻り、今度はしっかりイヤホンまで着けて熱心に例の動画を見つめている。彼女の目が届かないところで、ファウストはうっそりとほほ笑んだ。
    「(──だって、その料理人が作ってくれてるんだもの)」
    画面の中の男の薬指で光る指輪と同じものが、ファウストの左薬指で光っている。






    「……っていうことが今日あったの」
    「ふーん」
    「最近流行りの料理人Nさん?」
    「いや、それ恥ずかしいからやめてよ……」
    「自分で動画あげてるくせに」
    「あれは元々店の企画で始めたものだって」
    「……」
    「拗ねてる?」
    「妬いてる。みんなネロのこと好きになっちゃう。独り占めできなくなるのはやだ」
    「もー……。可愛いこと言うよほんと」
    「心が狭いって、呆れる?」
    「まさか。仰せのままに、お姫様」

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    sigu_mhyk

    DONE1日1ネファネチャレンジ 85
    魔法舎 ネロ+ファウスト(まだ付き合ってない)
    発火装置晩酌の場所が中庭からネロの部屋に。
    テーブルに向き合って座ることから、ベッドに並んで座るように。
    回数を重ねるごとに距離は近付き、互いの体温も匂いもじわりと肌に届く距離を許してもなお、隣に座る友人の男は決心がつかないらしくなかなか手を出してこない。
    手を僅かに浮かせてこちらに伸ばすかと思えば、ぱたりと諦めたように再びシーツの海に戻る。じりじりと近付きながら、数センチ進んだところでぎゅうとシーツを握り締め、まるでそこにしがみつくように留まる。
    ベッドについた二人の手の間、中途半端に開いた拳ひとつ分の距離。ネロの気後れが滲むこの空間をチラリと視線だけで伺って、密かに息をついた。
    よく分からないが魚らしき生き物も、毒々しい色をした野菜らしき植物にも。鋭く研がれた刃物にも、熱く煮えた鍋にも、炎をあげるフライパンにすら恐れることなく涼しい顔で手を伸ばすネロは、そのくせファウストの手を同じように掴むことができないでいる。刃物よりずっとやわらかく、コンロに灯るとろ火よりも冷たいファウストの手は、ネロの手の感触を知らないで今日まできた。
    2216

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