機械仕掛けの人間「せんせー。ごめん、また直して」
てへぺろ、というらしい表情はちっとも可愛らしくない。
全力で頬を平手打ちしてやりたいが、その場合はファウストの手の骨が砕ける。気まずそうに視線を逸らすなめらかな肌の下を通うものは柔らかな肉ではないのだから。
代わりに渾身の怒りを込めて睨みつけてやると、じぃ、とファウストを見つめた数秒のち、ネロは眉をへにょりと下げて困り顔をした。
「……何度も何度も……きみというやつは……」
「そんなに怒るなって」
「無理な要求だな」
アシストロイドは人間の感情を数値化して容易く読み取ることができる。案の定、測定可能域を大幅に超える怒りの数値を観測したらしいネロは目に見えて狼狽えていた。
こうしてふつふつと噴火するような激情を抑圧する苦しみが人間だけのものではなくなる日は、果たして訪れるのだろうか。
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