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    sigu_mhyk

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    1日1ネファネチャレンジ 66
    魔法舎 ネロファウ
    ※直接描写はありませんが性行為についての記述があります

    ##1日1ネファネチャレンジ

    成否はご想像にお任せします「……ファウスト、いっこ聞いてもいい?」
    「なに」
    「その、もしかして……どっちも初めて?」
    「それが何か?」

    なんということでしょう。
    お付き合いを始めてそれなりの月日を共に過ごし、手を繋ぎ、キスもして、我慢できなくなったネロが「抱きたい」とファウストにおねだりをした。一瞬ぽかんと表情を落としたファウストはややあって、耳まで赤く染めながらこくりと頷いた。いいよ、と、確かに言葉に乗せて。
    数百年を生きる魔法使いであれど、肉体は成人男性のそれと変わらない。ネロはファウストの過去を詳しくは知らないが、三大欲求はどの国、どの時代、どの魔法使いでも等しく満たしてくるものだと思っていた。下品な言い方をしてしまえば、四百年もののぴかぴかな初物なんて、かつて狙ったどんなお宝よりも貴重だろう。
    してこなかったの、と驚きを隠した声で問いかけたネロに対し、ファウストは「する必要が無かった」と淡々と返した。

    「どうせ所帯を持つことも無いのだし」
    「持ちたいと思ったことはなかったの」

    ファウストは濃紺の寝間着を脱がされながら、皮肉気な笑みを浮かべた。部屋に漂う、質量の増した灰色の空気はこれから愛し合いますという二人に似つかわしくない。覆いかぶさるネロ越しに映る天井の向こうに、ファウストは過去を見つめている。

    「……革命軍にいた時は、この革命が終わったら所帯を持つのもいいかもしれないと思ったこともある」

    人と魔法使いとが手を取り合う、理想の国。争いの無い、弱きを助ける平和な国。そんな国でなら、産まれた子供達は健やかに、子守唄を聞いて、誰からも祝福されて生きることができるだろう。
    しかし、美しく、何より望まれた理想は、裏切りによって跡形も無く塵芥と化した。

    「もし、僕が万が一血迷って。子供ができたとしても、産まれた子供は不幸になる。人間であればお前の親は魔法使いだと罵られ、いずれ親を、魔法使いを嫌うだろう。魔法使いであれば迫害され、いずれ人間達を呪う。どちらにしたって地獄だ」

    産まれた子供に罪は無くとも、『魔法使い』に社会は赦しを与えない。その鉄槌を正面から下されたファウストの言葉は悲壮とも、諦めともとれる感情の権化だった。

    「僕はきっと、産声を上げたと同時にその子の命を奪うよ」

    ――そう言って、あんたはどうせ助けるんだよな。

    「……ファウスト」
    「なに」
    「あんた、馬鹿だな」
    「馬鹿でいいよ」
    「うん。ほんとにさ、馬鹿みてえに真面目だよ」

    ネロにとっては、セックスなんて自分がきもちよくなる手段でしかない。
    ファウストの中での性行為は、まだ見ぬ未来へ命を繋ぎ、物語の続きの担い手を生み出す行為。ネロからすれば薄ら寒いほどの神聖さを帯びた行為だった。

    「俺、やっぱりあんたが時々北の魔法使い達より怖いよ」
    「……どういう意味だ」
    「お綺麗すぎる、ってこと」

    今からこの神聖なひとを汚すのだ。
    それはネロに興奮と、背徳感と、罪悪感を抱かせるに十分だった。黒塗りした紙を真白に戻すことができないように、一度汚してしまえばもう元通りの純潔潔白な姿に戻すことはできない。後戻りのできない絶壁から、ネロはファウストを抱えて飛び降りようとしている。
    はらりとファウストの胸元を寛げる。肋骨の薄く浮き出た身体は柔らかさの欠片も感じられないけれど、好いた相手の身体というだけで身体は正直に熱を帯びる。

    「……いいの、ほんとに」
    「くどい」
    「だってさぁ…………」
    「抱きたいってねだってきたのはネロのくせに。いくじなし」
    「あんまり綺麗なものを前にしたら、誰だってびびるだろ」
    「もたもたしてると僕がきみを抱くけど」
    「それはまた今度」
    「じゃあ、早く」

    ぐ、とネロのシャツを握る手が微かに震えている。怖いのか、ならやはりやめた方がいいだろうかと揺らぐネロの顔を、ファウストは真っすぐに見つめた。睨むようなその瞳の奥で、身を焼き焦がすほどの欲を燃やしている。

    「……決心が鈍らないうちに、早く」

    めちゃくちゃにしてよ。
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    sigu_mhyk

    DONE1日1ネファネチャレンジ 85
    魔法舎 ネロ+ファウスト(まだ付き合ってない)
    発火装置晩酌の場所が中庭からネロの部屋に。
    テーブルに向き合って座ることから、ベッドに並んで座るように。
    回数を重ねるごとに距離は近付き、互いの体温も匂いもじわりと肌に届く距離を許してもなお、隣に座る友人の男は決心がつかないらしくなかなか手を出してこない。
    手を僅かに浮かせてこちらに伸ばすかと思えば、ぱたりと諦めたように再びシーツの海に戻る。じりじりと近付きながら、数センチ進んだところでぎゅうとシーツを握り締め、まるでそこにしがみつくように留まる。
    ベッドについた二人の手の間、中途半端に開いた拳ひとつ分の距離。ネロの気後れが滲むこの空間をチラリと視線だけで伺って、密かに息をついた。
    よく分からないが魚らしき生き物も、毒々しい色をした野菜らしき植物にも。鋭く研がれた刃物にも、熱く煮えた鍋にも、炎をあげるフライパンにすら恐れることなく涼しい顔で手を伸ばすネロは、そのくせファウストの手を同じように掴むことができないでいる。刃物よりずっとやわらかく、コンロに灯るとろ火よりも冷たいファウストの手は、ネロの手の感触を知らないで今日まできた。
    2216

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