例えば、ヴァルを裁く時。
頭に叩き込んだ法律という基準に従って、プライドは正しい罰をヴァルに提示した。
本来、刑罰を一つに絞るのはプライドの裁量だ。けれど法律上はどちらを選んでも釣り合いが取れるのならそうしたかった。
正義が乗る受け皿に、自分との公平と小さな願いも忍ばせたのは、誰も知らない。
例えば、ジルベールに裁きを委ねられた時。
正式に裁判にかけることはせず、誰にも打ち明けない覚悟はあるかとジルベールに問うた。
永い生を宰相の座に縛りつけることも誓わせて、それでもジルベールならばとプライドは信じられたから。信頼を乗せた天秤はそこでぴたりと釣り合った。
その直前、受け皿を揺らしたのは、天秤にかけることをしなかったジルベールへの懺悔だった。
手に持つ天秤が正しいのか、正しかったとて果たして善き未来へ繋がるのか。確証がない時もあるけれど、今はまだこの均衡を信じて今日もプライドは正義を秤にかける。
天秤が狂う、その時まで。