プライド様は防衛戦前にティアラがセドリックに放ったナイフをこっそり一本隠していた。
無意識に、もしもティアラの誕生祭までにゲームの自分に戻ってしまいそうであれば、ナイフで死んでしまおうと。結局はそんなことにはならなかったし、冷静になって考えたら他殺を疑わせるのは良くないわね!?となってやめた。
結果ナイフ処理するべく白羽の矢がヴァルに立つ。
ステイルがヴァルを連れてくる。アーサーもいてそのまま次のシーンに繋ぐのもあり。
3日目終わりだからやっと時間が作れた的な?自分から仕事詰め込んだのではある。
ステイル「喋るな。物音も立てるな」「……いいか。今から姉君の棺の場所へ連れて行く」
プライド様の部屋へ
「最後に会った日は何か普段と違うことはあったか?」
「何もねぇな」
そう答えるヴァルは棺から目を逸らさない。話してはならない。気取られてはならない。──それがプライドの最後の命令なのだから。
『お願い……いえ、これは命令です。これを』
ステイル「お前達はどうする。配達業は姉君専属だからな。……好きに、選べばいい」「気づいているだろうが隷属の契約は姉君の死後も有効だ。配達目的以外では国外に出ることはできなくなる」
ヴァル「元から主の誘いに応じただけだ。主がいなけりゃあやる意味も理由もねぇ」
ステイル「……そうか」「ならばそのつもりで母上達には話をつけておく。姉君の言った一週間を過ぎたら城に来い」「もしアネモネへ行く気になったら俺かティアラに言え。レオン王子宛の手紙くらいは用意しよう」
※ステイルがカードを見せるか考えとく。プライドと契約を交わした者同士、見せるべきかどうか。見せるなら、
「命令ですらねぇのかよ」
チッと舌打ちをしてカードを突き返される。あっさりと手元に戻ってきたそれを、ステイルは瞬間移動で自室に戻した。ヴァルには呪いにならなかったのだなと頭の冷静な部分が分析する。
ティアラ達のように、ではない。かつてのステイルのように。
見せないのなら、
けれど、ヴァルにはカードの言葉は呪いにならない。そんな気がした。
とかにする。
【ヴァル視点】
下級層のおく、人のいない場所。気配も探りながら向かう。
特に地盤の固いところ。
『これを誰にも見つからない場所に隠して。地中に埋めるだとか、方法は任せます。隠すところはセフェクやケメトにも、誰にも見られてはなりません。隠したこと自体、誰かに話すのも気取らせるようなことをするのも禁じます。中身の詮索についても同様です』
やけに注文が多いと思えばこれだ。
自分の主が十六になった次の夜を思い出す。連れ出してやろうかという誘いに、応じる言葉すらくれなかった。命令しろとまで言ってやったのにと舌打ちが増える。
「頑張るの果てがこれだ?ふざけんな」
この国でやりたいことを好き勝手にやって、周りに笑顔が増えれば満足して笑う。そうやってこの先を生きるための「頑張る」じゃなかったというのか。
カードの願いを思い出せば、はらわたが焼き切れるほどに苛立ちが募った。胸が焼けて、喉が焼けて、頭にまで熱が上った時。
ぼた、と乾いた地面に水滴が落ちた。
もう、千年待っても億年待ってもプライドには逢えないのだと。
詮索する気がなくてもわかる。布でぐるぐる巻きにして形状を隠そうとしても、一度手に取るだけで充分だった。細長い形、片手で持てる長さ。そして、馴染みのあるその重さ。
「……命令すりゃあ、どこへでも連れ出してやったのに」
なぜ最後に命令するのがそれなんだ。
足元、地中深く。そこにはナイフが一本沈められている。