「師匠、師淑、新年おめでとうございます!」
「ははっ、夜も更けたというのに元気だな。お前の弟子はまだまだやる気に満ちているぞ、阿絮」
「お前は少し飲みすぎだ老温」
「めでたい日に固いことを言うな」
「まったく…酔っぱらいは少し黙ってろ。成嶺」
「はい!」
「今年も鍛錬に励むんだぞ」
「わっ…紅包を頂けるんですかっ?」
「あたりまえだ。新年なんだからな」
「師匠…ありがとうございます!」
「老温」
「うん?どうした、阿絮」
「お前にもあるぞ」
「え…わたしにも…?」
「今年は特別だ。ほら、受け取れ」
「………紅包」
「どうした?変な顔をして」
「いや…懐かしいと思ってな…」
「…老温」
「ふふっ…私の師兄はやさしいな」
「師淑だってやさしいです!」
「ん…どうした、急に」
「私たちに不幸が訪れないようにと赤い下着を用意してくれたじゃないですか。私はちゃんと身に着けましたよ、師淑」
「成嶺…あれは老温の悪ふざけだ」
「何故です?赤い下着は邪気を払うのですよね?」
「確かにそうだが…あの刺繍だぞ」
「刺繍…あぁ、金糸で縫われた兎のことですか?干支を縫ってくれるなんて師淑は本当に器用ですよね」
「…あれを見て何とも思わなかったのか」
「かわいいと思いましたが…師匠?」
「…………」
「師匠はもしかして身に着けていないのですか?」
「……成嶺」
「はい」
「そろそろお前は寝る時間だ」
「え…でも……」
「朝はいつも通りの時間に起床だ。特別に鍛錬は免除するが寝坊したら…」
「分かりました寝ますっ。おやすみなさい、おふたりとも…!」
「……騒がしい奴だな」
「その割には顔が笑っているぞ?」
「お前だって似たようなものだ」
「なぁ、阿絮」
「ん?」
「私が渡した下着をお前はどうした」
「こんなもの着れるかと突き返したな」
「私は受け取らなかったぞ…もしや捨てたか?」
「お前は俺がそんな薄情だと?」
「それなら箪笥の中か」
「さぁな」
「阿絮」
「なんだ」
「まさか…」
「まさか?」
「あんなことを言ったくせに身に着けているんじゃ…」
「どうだろうな」
「あーしゅー」
「そんなに気になるか」
「気になるに決まってる」
「…………」
「阿絮?」
「なぁ、老温」
「…ん?」
「ならば…確かめてみるか」
くすりと綺麗に笑った阿絮へ老温は引き寄せられるように距離を縮めて…から始まる二人の新年とか。赤い下着の風習を知ったら妄想しちゃいますよね…互いにちゃんと老温手製の刺繍が施された下着を履いてて、脱がせあってる時にそこでちょっと笑いあう二人がいれば可愛いと思う…妄想失礼しました。