世界の傷と再生とードイツ戦場前線にて
アウトレイジャー討伐が終わり静かな時が流れる
ドライゼは構えていた銃を降ろし、ふぅと息をついた
辺りを見渡し状況を確認する
(目立った兵の負傷なし…)
ドイツの兵達は揃って無事なようだ。
貴銃士達やマスターの姿も確認し全員の安否を確認すると再びふぅと息をつく
「む…」
ドライゼは自分の手が震えていることに気付いた。
すでに戦闘は終わっている為武者震いではないはずだがいくら止めようとしても逆に震えが増す一方だった。
(人を殺めてしまうことが…俺にとってまだ枷となっているのか…)
「ドライゼ?何か気になることありました?」
マスターがひょいっとドライゼの顔を覗き込む
「ああ…いや。何でもない。マスター怪我は無いか?」
「ええ。私は大丈夫!ドライゼは怪我していない?」
ふわっと笑うマスターの優しい表情にドライゼも先程までの緊迫したものではなく優しい表情になっていく
他愛の無い、ほんの安否の確認でさえもマスターと話すこの時間がドライゼは気に入っていた
先程まで震えていた手もマスターと話したことにより安心したのかいつの間にか落ち着いていた
安心感と何とも表現しにくい暖かい感情にドライゼはここ最近マスターとうっかり触れてしまっても前のような嫌悪感を感じることが減っていることを思い出す。
(今なら人肌も…)
マスターの手を握ろうとした瞬間
ふと足元に芽吹く命に目が行った
こんな戦場の荒れた土地に青い芽が顔を出していたのだ
ドライゼは荒れた大地が再生へと進む姿を見て「ああ…」と呟く
そうか…
マスター…俺にとって貴方は…
傷ついた世界に差し込む一筋の光。
この芽吹く命を生み出す光…
マスターの手を握る
今まで感じていた人肌の嫌悪感はいつの間にか感じなくなっていた。
いつかこの荒れた大地が緑で生い茂ることを
その景色を二人で見に行けることを願いながら
手の甲の薔薇に口づけを落とした