最愛のあなたへしんしんと降り積もる雪の日。子供たちが雪遊びではしゃぐ日が当たり前になった平和な世界。
降り続ける雪を遮る傘の中で寄り添う影が2つ、ドライゼは楽しそうに語りかけていた。
「あの時は…」
「あの場所では…」
と2人で紡いできた思い出を1つ1つ振り返りながら、時折微笑みかけ懐かしさにその表情を緩める。
紡ぐ物語が「今」へと近づいてきた頃。ドライゼは懐から1輪の薔薇を出し隣の影へと手向けると、静かに涙を流した。
「最愛のあなたへ…」
とドライゼは墓石に刻まれたその名前にそっと指を沿わし空を仰いだ。