なついちご(誕生日ss)「今日誕生日なのか?」
話の流れで緑谷が誕生日だと話すと轟は驚いた表情で緑谷を見た。
「プレゼント、とか何も用意してねぇ」
「気持ちだけで嬉しいよ!」
「けど…」
恋人である緑谷の誕生日を祝いたい轟と気持ちだけでいいと伝える緑谷。
轟がスマホの画面を付けて時刻を確認すると時刻は20時30分。
お店は閉店やおそらく菓子屋も商品はまばらだろう。
コンビニに行けばスイーツくらいは買えるがこの時間では外出届けも受理されない。
「ごめんな、俺知らなくて」
「本当にいいんだよ…轟くんといられるだけで嬉しいんだから」
緑谷が恥ずかしそうに指で頬を掻き笑いながら伝えると轟は何も言えなかった。
轟は初めての友達であり恋人の誕生日に何をすればいいのか分からなかった。誕生日を祝うという経験がないからだ。
轟は以前、クラスメイトが誕生日でケーキを貰って食べていた事やお菓子を貰っていた場面を思い出す。
しかし今は調達が難しい。
どうしたものかとスマホをいじり誕生日 プレゼントと検索すると表示されたのは……。
轟はスマホを閉じると緑谷と向き合った。
「誕生日のこと知らなくてすまねぇ」
「だからもういいって、言ってなかったし…」
「プレゼントは、俺でいいか?」
「え?」
「7月15日って夏いちごの日、らしい…この間、俺のこと見てケーキ食いてぇって言ったろ?」
轟は以前たわいない雑談をしていた時になにげに言った緑谷の言葉を思い出した。
「それは…ごめん。嫌だった?」
「嫌とかじゃねぇよ。プレゼントとか何も用意してねぇからこれぐらいしか思いつかなくて…」
轟の語尾がだんだん小さくなっていく。項垂れる轟を見て緑谷は身をかがめて轟の顔を覗き込んだ。
「…貰っていいの?」
緑谷がそう言うと、轟は顔を上げた。
「ずっと一緒にいてくれよ出久」
「嬉しい!最高だよ」
緑谷の笑顔と言葉に轟の顔が緩む。
轟は緑谷を抱き締め唇を重ねた。
Happy Birthday緑谷出久くん!