稀有なる縁に言祝ぎをもう随分と遠い記憶は、けれど、決して色褪せることはない。
◆◆
気紛れだった。
「オッコツ?ふーん、そんな分家いたんだ」
その日まで、存在すら知らなかった遠い遠い親戚。
辛うじて、親族一覧表の端っこに引っ掛かっているような末席の分家が、第一子誕生の挨拶に[[rb:五条本邸 > うち]]を訪れるという。
「珠のような男の子だそうですよ」
にこにこと目尻を下げる爺に「あっそ」と、にべもない態度であっただろう。普段の俺なら。
盆暮れ正月法事に彼岸。家の行事は、どれもこれもがめんどくさくて仕方がなかった。
近頃では、本家の嫡男として渋々参席していますというオーラを、隠しもしなくなってきていたくらいだ。それなのに。
「いつ来るんだ、その“オッコツ”とかいうの?」
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