「誕生日おめでとう。今年もこうしてあんたが生まれた日を祝える幸運に感謝を」
ベッドの中で部屋の明かりが消えるのをうとうととしながら待っていると、ふいに枕に添えた右手を取られ、口付けが落とされた。
眠りに落ちかけていた意識を浮上させたリチャードは、横たわったまま、隣に座るバッキンガムを見上げた。視線が絡むと半身は黙って二度目の口付けを落とす。愛を受けた手はそのまま枕元へ返されたが、熱を持った筋張った手指は離れずにいる。
リチャードは肘をついて上体を起こすと半身の枕側にあるナイトテーブルの時計に目を向けた。二つの針はどちらも真上を差している。眺めているわずかなあいだに、長針がひとつ傾いた。
日付が変わり誕生日を迎えたのだと理解して、浮かせた身体をシーツの上へと戻しながらくすりと小さく笑った。
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