突然壁に押し付けられ、バッキンガムは息を呑んだ。
柱の影に隠れるように成長途中のふたつの身体が重なる。石壁の向こうから聞こえてくる声は王を侮蔑するものだった。二人か、三人か……恐らく元は赤薔薇派の貴族だろう。王宮内であるにも関わらず、憚る様子はない。
仲良く手を取り合いましょう、なんて茶番だ。それみたことか。
あまりの馬鹿馬鹿しさにふうっと鼻で息を吐くと、バッキンガムを捕らえている身体がぐっと体重をかけてきた。
「喋るな」
吐息が耳に吹きこまれ、きつく眉を寄せる。
冷たい手に口が塞がれているのだ、喋りたくとも喋れるわけが無い。不満を込めて目の前の相手を睨むが、存外に強い力でバッキンガムを拘束するリチャードは声の主を探るように横向いていて視線はかち合わなかった。
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