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    アメチャヌ

    ガムリチャか捏造家族かガムリチャ前提の何か。
    たまに外伝じじちち(バ祖父×若父上)

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    アメチャヌ

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    3巻後辺りのショタバとリチャ。
    診断メお題『喋らないでね』
    (2022.1.2)

    #ガムリチャ
    gamelicha

     突然壁に押し付けられ、バッキンガムは息を呑んだ。
     柱の影に隠れるように成長途中のふたつの身体が重なる。石壁の向こうから聞こえてくる声は王を侮蔑するものだった。二人か、三人か……恐らく元は赤薔薇派の貴族だろう。王宮内であるにも関わらず、憚る様子はない。
     仲良く手を取り合いましょう、なんて茶番だ。それみたことか。
     あまりの馬鹿馬鹿しさにふうっと鼻で息を吐くと、バッキンガムを捕らえている身体がぐっと体重をかけてきた。
    「喋るな」
     吐息が耳に吹きこまれ、きつく眉を寄せる。
     冷たい手に口が塞がれているのだ、喋りたくとも喋れるわけが無い。不満を込めて目の前の相手を睨むが、存外に強い力でバッキンガムを拘束するリチャードは声の主を探るように横向いていて視線はかち合わなかった。
     バッキンガムの目に映るのは、高い襟から覗く雪のように白く細い首と、気品を備えた横顔だけだ。
     可憐とは言い表せないが、武勇に優れた人だとも思えない。
     幾つか年上の同性であるはずなのに、初めて見つけたときから何故か別の性を感じずにはいられなかった。しかし、バッキンガムの口を覆う手のひらは硬い。剣を握り慣れた者の手だ。男の手だ。周りに促されて触れた幼い妻のものは、柔らかく滑らかで、闘いなど知らぬ女のそれだった。
     リチャードとはまるで違う。
     リチャードは女ではない。
     限界まで寄せられた身体にも、柔らかさは微塵も感じない。
     だというのに、自由をゆるされているバッキンガムの鼻孔は、彼が鍛錬で流した汗のにおいと共に、無垢な少女を思わせる甘やかな果実に似た芳香をとらえていた。
     庭園では無数の植物が花開くが、風に運ばれても窓のないこの場にまで届くとは考えられない。
     これはリチャードが放つ匂いだ。
     意識した途端、胸の奥が焼けたように熱くなった。
     不意に生まれた熱は喉元を這い上がり、頬に火をつけ、脳を揺らして目眩を起こす。
     倒れぬよう瞼を閉じて堪えるがまったくの逆効果で、香気はより一層、鮮明に襲いかかってきた。
     どうにも落ち着かない。はらわたが撫でられているような、気味の悪い感覚がする。不快ではないが、どうしようもなくもどかしい。
     纒わり付く奇妙な『何か』を振り払い、依然として口を覆うリチャードの手を掴む。驚いた表情の彼は、前髪の隙間から色の薄い瞳を覗かせ、バッキンガムを見た。
     耳障りな笑い声と足音が遠ざかるのを確認してから小声で漏らす。
    「こんな風にされなくても無闇に喋ったりしない。王宮での振る舞い方くらい心得ている」
    「それは殊勝なことだ」
     用心深く探っていたリチャードは、声の主らが完全に去ったことを認めるとバッキンガムから身を離した。
     ひとつに重なっていたものがふたつに別れ、微かな空虚感に襲われる。
     蠱惑的な芳香が薄れ、自身を保てたことに安堵する。
     いまだ感じる頬の熱も直ぐに引くだろう。バッキンガムはリチャードの手を離すと、指の背で無意味におとがいを擦った。
    「おい、どうした。顔が赤いぞ? まさか息を止めていたんじゃないだろうな。喋るなとは言ったが、そこまでしろとは言っていないぞ」
    「バカにするな。心得ていると言ったはずだ」
    「ではなんだ? 熱でも出たか?」
    「違う、これは……」
     異変に気がついたリチャードが、怪訝そうな顔でバッキンガムを眺める。
     面倒だという態度を隠そうともしないリチャードに「あんたのせいだと」と続けようとして、その理由を言葉に出来ないことに、開きかけた口を閉じた。伝えれば必ず追及されるだろう。自分でも理由がはっきりとしない事柄を説明する術はない。
     返答に困ったバッキンガムは、眉をひそめて己を見下ろすリチャードから視線をそらし、消え入りそうな声でもう一度「違う……」とだけ呟いた。
     
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    アメチャヌ

    DONE*最終巻特典の詳細が出る前に書いたものです、ご承知おきください。

    69話の扉絵がバッキンガムが65話で言ってた「美しい場所」だったらいいな〜、地獄へ落ちたバッキンガムがリチャードのお腹にいた(かもしれない)子とリチャードを待ってたらいいなぁ〜……という妄想。
    最終話までのアレコレ含みます。
    逍遥地獄でそぞろ待ち、 この場所に辿り着いてから、ずっと夢を見ているような心地だった。
     
     薄暗い地の底に落ちたはずが、空は明るく、草木は青々と生い茂り、湖は清く澄んでいる。遠くの木陰では鹿のつがいが草を食み、丸々と太った猪が鼻で地面を探っていた。数羽の鳥が天高く舞い、水面を泳ぐ白鳥はくちばしで己の羽根を繕う。

     いつか、あの人に見せたいと思っていた景色があった。

     まだ乗馬の練習をしていた頃。勝手に走り出した馬が森を駆け、さまよった末に見つけたその場所は、生まれた時から常に血と陰鬱な争いが傍にあったバッキンガムに、初めて安らぎというものを教えた。
     静謐な空気に包まれたそこには、あからさまな媚びも、浮かれた顔に隠れた謀略も打算もない。煩わしさからはかけ離れた、ほかの誰も知らない、誰もこない、自分だけの特別な場所だった。
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