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    karen_nyamnyam

    @karen_nyamnyam

    囚墓メインで活動してます( ˇωˇ )

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    karen_nyamnyam

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    鬼囚の花嫁になる人間墓な囚墓のお話。
    めちゃくちゃ短いです。

    鬼の花嫁 村で一番美しい女性を鬼の花嫁にする。
     そんな仕来りを守り、村で最も美しい女性を鬼の花嫁として徹底的に花嫁修業をさせ、夜の営みも難なく行えるようにと、教育してきた。
     けれど、ある日……その鬼の花嫁となる女性が村長の娘となった途端に、村長は血相を変えて替え玉を探したのだ。
     父親として娘を溺愛しているが、他人の娘は容赦なく取り上げて花嫁修業をさせ、鬼へと送っていたというのに。
     村に所属しているものの、村人達に毛嫌いされていて村の端の小さな家に暮らしていたアンドルーは、小さくため息をつく。
     過去に村長に愛する娘を奪われた村人達は当然怒り狂い、今にも村長を殺すのでは無いのかと思うほど怒鳴り合っていた。

    「あなたは過去に俺達の娘を無理矢理連れ去って、鬼にやった! その結果、あの子は鬼に喰われちまった!」
    「そうよ……! 自分の娘がそうなる番になったら替え玉を差し出すなんて、勝手だわ!」
    「うるさい! さっさと代わりの娘を出せ!」

     ああ、なんて醜い争いだろう。
     そんなことを思いながら山菜採りに行こうと籠を抱えると、村長がふとアンドルーに目を付けて背後から冷たく声を掛ける。

    「おい、アンドルー」
    「っひ……ぁ……な、ん……ですか……」
    「こっちに来い」

     アンドルーは足が凍り付いたように動かなくなり、立ち尽くしていると村長は舌打ちをしては自らアンドルーに歩み寄る。
     乱暴に顎を掴み、アンドルーはまた白い髪と赤い瞳を理由にして殴られるだろうかと、その目に不安と恐怖を宿した。

    「……もうお前でいい」
    「……え」
    「お前を鬼の花嫁として、鬼の元へと送る」

     この村長が何を言っているのか、アンドルーは理解が追いつかなかった。
     アンドルーは男だ、それなのに花嫁とはどういうことだろうか。

    「あ、の……僕は……お、男……です……」
    「いいから来いッ!」
    「っい、た……! や、やめ……!」

     村長に無理矢理腕を引っ張られ、持っている籠を落としてアンドルーは他の村人達を見ると、彼らは揃いも揃って安心したような顔をしていたのだ。
     彼らは、アンドルーがどうなろうとどうでもよかったのだから。
     鬼に食い殺されようが、鬼に花嫁をやるという村の仕来りを守れればそれでよかったのだから。

    (……ああ……そう、か……誰も……僕が死のうが……どうでも、いいんだ……)

     誰一人として村長を止めようともせず、アンドルーはそのまま村長の家へと連れ去られ、『花嫁修業』をさせられるのだった。


    ◇ ・ ◆ ・ ◇


     半年後。
     思い出すだけでも嫌気がさすあの花嫁修業生活はとうとう終わりを迎え、アンドルーは白無垢を身に纏い、鬼との婚礼の儀が上げられる社へと向かっていた。
     化粧を施し、白無垢を身に纏うアンドルーは誰が見ても村で一番美しい女性に見え、あれだけ毛嫌いしてきた村人達も息を呑んだ。
     アンドルーを乗せた駕籠が森の奥の社へと運ばれ、アンドルーは憂鬱な気持ちで目を伏せた。

    (……鬼、なんて言うんだから……きっと、凶暴で怖い奴だろうな……鬼の住処に着いたら……食べられるのかな……)

     トサ、と駕籠が降ろされ、戸が開けられては短く「着いたぞ」と声を掛けられ、アンドルーはゆっくりと駕籠から降りる。

    「もう鬼様は社にいらっしゃる。失礼のないようにだけ気を付けろ」
    「……はい」

     慣れない真っ白で高さのある草履で社へ向かい、そうして見えたのは焦げ茶の髪を結んだ男性だった。

    (あれが……鬼……? ただの人にしか見えない……)

     アンドルーの気配に気付いたのか、鬼は振り向いてアンドルーを見つめる。
     灰緑色の目を細め、口角を上げて微笑む唇には尖った白い歯が見え、その頭には黒い角が生えていた。
     想像していた鬼とは全く違い、アンドルーがやや困惑していると、鬼は歩み寄って伸びた爪先でアンドルーの頬から顎にかけて軽く撫でる。

    「っ……」
    「ああ、そんなに怯えなくていい。今この場で取って食いやしないさ」

     鬼はアンドルーの細い指を手に取り、婚礼の儀が本格的に始まってアンドルーはチラリと鬼に目をやった。
     整った顔立ちは人間そのものだが、頭の角と伸びた爪は鬼らしさを感じさせ、こんなにも近くに鬼が居ることに恐怖を感じていたのだ。
     ある程度婚礼の儀が進めば、社の奥へは花婿である鬼と花嫁であるアンドルーのみが進んで二人きりで婚礼の儀を行い、終わらせる必要がある。
     静かな社の奥へと進んでいると、ふと鬼がアンドルーに声を掛けた。

    「そういえば、まだ名乗っていなかったな。私はルカというんだ」
    「……!」

     まさかこのタイミングで話しかけられるとは思わず、アンドルーが困惑しているとルカと名乗る鬼はクスッと小さく笑う。

    「そんなに緊張しなくていいよ、アンドルー」
    「え……な、んで……」
    「おや、知らないかい? 鬼は目を見るだけで相手の感情を悟り、見つめ続ければ記憶を見ることも出来る。君と対面した時に、君の名を知ったんだ。あまりにも君が綺麗で、女と思っていたが、男だったんだな」

     こんなにも早く性別を見抜かれてしまい、アンドルーは青ざめた様子で立ち止まる。

    「ぁ、の……ぼ……僕は……男、だけど……で、でも、精一杯、鬼様……だ、旦那様に……お仕え、します……」
    「おや、健気だな。君が男だからといって、どうこうしようだなんて思っていないし、男を差し出したあの村長に対して怒ってもいないさ。私は身の回りの世話をしてくれる花嫁が居ればそれでいい」

     アンドルーは恐怖心のあまりルカの顔を見れずにいて震えていると、ルカが「ほら、もうすぐで社の最深部だ」と言い、手を引く。
     そのまま歩き続ければ御神酒が祀られている境内へと着き、ルカは慣れた手つきで真っ白な猪口に酒を注ぎ、鋭い爪先で自身の指を軽く切り、血を一滴垂らす。
     透明な酒に紅い雫が薄らと広がり、ルカは自身の血を混ぜた酒が入った猪口をアンドルーに差し出した。
     これが婚礼の儀の最後を飾る行為なのだ。
     鬼の血を飲むことで花嫁となる人間は年老いることがなくなり、鬼と共に人生を歩めるようになるらしい。
     アンドルーは意を決してその酒を一口口にしては、酒特有の喉を焼くような味にほんのりと鉄の味が混ざっていて、顔を顰めてしまう。

    「ははっ、酒が元々得意じゃないと飲むのも一苦労だなぁ」

     ルカは笑いながら自分の分の酒を飲み干し、アンドルーの赤い瞳を覗き込む。

    「これからよろしくな、アンドルー」
    「……はい、旦那様」

     鬼の花嫁となった者は、皆鬼に喰われた。
     きっといつか、自分もそうなるのだろう。
     アンドルーはそんな思いを抱きながらも、差し出されたルカの手を取り、婚礼の儀を終わらせたのだった。
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