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    mayura_BL

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    mayura_BL

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    海常の日常。
    痛いのが嫌いな笠松先輩と愉快な森山と冷静な小堀先輩と目覚めちゃった黄瀬くん。
    痛いのが嫌いな笠松先輩いいな!と思って。
    試合始まると全然気にしないんだけど(ファウルとか、接触とか)それ以外で痛い思いをすると、一気に幼くなる笠松先輩が見たい。
    海常いいわあ…という話です。

    #黒子のバスケ
    kurokosBasketball
    #海常
    seaOften

    Pain「げ」

    うわ、入った、と笠松は柄にもないそれに、げ、と短く言った。
    ちなみに入ったのは、シュートなんかじゃない。

    Pain

    「入った」
    「何が?」

     いち早く反応したのは、たまたま横でシュート練習をしていた森山だった。ちなみに入ったのはシュートではないので、「何が」と聞いておいた。外したじゃん、と暗に言ったも同じだったから、笠松にぎろりと睨まれたのは言うまでもない。

    「何が入ったんだ?」

     ドリブルの練習をしていたらしい小堀が、ゴール下まで来ていて、聞こえていたらしく訊ねたら、笠松は、無言で右手を高く上げた。

    「あ、うん、分かった、分かった」
    「痛い」
    「うん」

     小堀が「分かった」と言ったら、笠松は眉を下げて、手を上げたまま、痛い、痛いと三回か四回言った。だいぶ痛いらしい。眉を下げてしまうと、元々の幼い顔が引き立ってしまって、海常の主将らしい力強さはなくなった。

    「え、マジ。笑っていい?」
    「笑うな馬鹿。痛い」
    「うっは、馬鹿じゃん!」

     森山が馬鹿みたいに笑いだして、レギュラーのいるコートが騒々しくなった。幸いなことに、監督は職員会議でまだ来ていない。

    「ちょ、うける」
    「何がっスか?」
    「あ、黄瀬、ちょうど良かった。なんか冷やすもん持ってきてくれ」
    「え…つーか笠松センパイ何してんスか。なんか馬鹿っぽい」

     臆面もなく言ったが、片手を高く上げた状態である。森山を蹴りつけるのでいっぱいいっぱいらしい。

    「痛い」
    「うん、分かったから。笠松はそのままベンチ行っていいから。森山はもう笑わなくていから。黄瀬は早く冷やすもん持ってこい」

     小堀が「痛い」と「馬鹿」を繰り返して、森山に危害を加える笠松をなだめるように止めた。危害を加えられても森山は笑い続けている。

    「ちょ、おバカさんじゃん、マジ馬鹿」

     森山が言ったそれに、もう一発蹴りを入れようとしたが、小堀に止められてしまう。

    「え…結局なんなんスか?」

     ぽつねんと黄瀬が聞いたら、小堀は「いいから冷やすもん、あとテーピング」と言った。気が付いたら要求が一個増えている。早川と中村は多分気が付いていない。もう半面でディフェンス練習だった。

    「馬鹿、とんま、アホ、間抜け、早くしろ、おせーんだよ、痛い!」

     右手を高く上げた笠松が、今度は黄瀬を詰る。

    「え…え…な…なに、なんかよく分かんないけど、すごく嬉しいっス…!」
    「笠松は八つ当たりしない!黄瀬は目覚めない!」

     小堀の声がコートに響いた。森山はまだ笑い転げていて、黄瀬は頬を染めながら、「笠松センパイに蔑まれた」とか言っている。
    蔑まれた…?なんで黄瀬がそんな言葉を知っているんだ、どうでもいいけど、こいつら本当に面倒、と小堀は思った。本当にひどい。笠松だってそうだ。自分に止められて、満足に森山を攻撃できなくなったから、今度は舌鋒である。さっきから黄瀬と森山に浴びせる罵詈雑言がひどくなってきた。

    「笠松、そういう言葉遣いはやめなさい」
    「うるせえ、痛い」

     発言の最後に、「痛い」と付け足すのが段々デフォルトになってきた。そういえば、笠松は痛いのが嫌いだったな、と思ったら、森山がさらに笑った。

    「マジ馬鹿。痛いの嫌いなくせに!痛いの大っっっ嫌いなくせに!」
    「え、痛いんスか?」

     それでやっと、黄瀬が現実世界に戻ってきた。

    「そうだよ、笠松は今痛みと闘っているんだ。俺たちに出来ることは生温かい視線で笠松を見て、笑ってやることだけだ」
    「違うから。冷やすもんとテーピングあれば笠松救えるから」
    「馬鹿、変態、誑し、痛い」
    「誑しはほめ言葉!」
    「森山イタイ」
    「……それは傷付く」

     語尾はきっちり「いたい」だったが、内容と生温かい視線を逆に向けられて、森山の笑いがついに収まった。

    「はい、黄瀬くん、氷いっぱい持ってきて。あとテーピング」

     森山がてきぱきと言ったら、黄瀬が二つ返事で部室の方に走っていった。

    「痛かったな」
    「都合のいい時だけいい顔する男は嫌いだ。痛い」
    「笠松それすげえ正論だな。好みのタイプか?」
    「自分がそうありたいだけだ。痛い」
    「男前すぎて視界がかすむ」

     森山は派手な演技をして笠松に抱きついた。

    「やめろ。うぜえ。痛い」

     よしよしと森山が笠松の頭を撫でてやったので、大丈夫かな、と思った小堀が羽交い絞めにしていたのをちょっと緩めたら―――

    「いってーよ、馬鹿松!」
    「うぜえんだよ馬鹿山!痛い」

     森山がうずくまる。森山の鳩尾に、笠松の脚が綺麗に入った。「あれは入ったな」と小堀が小さく呟いたら、黄瀬が走り寄ってきた。何も、レギュラーをパシリに使わなくてもよかったかな、と小堀は少しだけ思った。

    「指っスか?」
    「そうだ。痛い」

     シャリッと小さく氷がぶつかる音がして、笠松は氷に指を突っ込んだ。

    「笠松、痛いのは分かったから、もういいから」
    「痛い」
    「うん」
    「突き指的な?」

     黄瀬が聞いたら、笠松は眉を吊り上げた。眉を吊り上げたが、笠松の顔は、いつもの三割増しは幼かった。

    「的なじゃない、突き指だ。痛い」
    「そー。そんで、笠松は痛いの大っ嫌いなの」

     痛いの痛いの飛んでけー、とぐりぐり笠松の頭を撫でながら森山が言ったから、笠松はもう一発蹴りをお見舞いしてやろうとしたが、氷がこぼれそうだったのか、不満そうな顔をしただけで、動かなかった。

    「え、いいの?」

     森山が拍子抜けしたように言ったら、笠松は呟くように言った。

    「冷たい。痛い」
    「ははーん、痛いんだぁ」
    「うわ、ばか、やめろ、痛い!」
    「やめなさい!」
    「うは、冷てー!」

     森山が急に氷の中に手を突っ込んで、突き指したらしい指を掠めたので、大惨事である。

    「えーセンパイたち楽しそうっス!ずるいっス!」
    「来い、黄瀬!敵は氷の中だ!」
    「やめろ、ばかども、やめろ!痛い!」
    「本気でやめろ、お前ら!あ…」

     ばしゃんと派手な音がして、氷がコートにまき散らされた。

    「お ま え らー!」

     冷やして二十分は安静、圧迫、なんて上手くはいかない。

     痛い。
     でも。
     どうしてか。
     楽しい。

     そんな日常―――
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    「あ、うん、分かった、分かった」
    「痛い」
    「うん」

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