ダイコン、襲う「……何かなこれ、野菜?」
大勢で街道を帝都に向かっていた道中にて。
食事の用意をしていたクオンは、鍋の近くへととてとてと歩いてきた白い植物らしきものを見下ろしてこてんと首を傾げた。
まあるくて手足がある。
ついでに歩いている。
ヤマト特有の植物なのかと思い、クオンが食材として使えるかなあとまじまじと見ながら抱き上げてみせると、それは手らしき部位を伸ばして……クオンのやや少なめの胸をぺたぺたと触ってきた。
「ちょっ ちょっと、や、あ!?」
唐突に尻尾をきゅっと締めあげる感覚に、クオンが悲鳴をあげる。
背後にも同じものがいたことに、薬師は歯を食いしばり苦無を構えようとした。
だがしゅるしゅると器用に手というか蔓を伸ばしてくるソレが尻尾だの胸だのを締め付け、霰もない格好にしてくる。
全く力が入らなくなり、娘が悲しそうな力無い声でいやああと叫んでいると、すぐ近くで薪を取り落としたハクが立っているのを見つけた。
「な、なんじゃこりゃあああ!?」
「やっやあああっはくった、たすけってえっ」
「わ、分かった待ってろ!ぐへええっっ!!?」
「は、ハクうううう!!!あ、やあああっっ!!?」
叫んで意気込んで見せたハクが、鉄扇を振り翳した、瞬間。
男の……まあ口にし難い部分に三匹目のダイコンが突っ込んできて、あえなく男は潰れてしまった。
二人の悲鳴を聞きつけたウコンが現れた時には、どうにか自力で……というか暴走した火神で燃やしたせいでへろへろのクオンと、言葉一つこぼさずぴくぴくしているハクが地面に転がっていた。