ここに、タイムパトローラートランクス青年と、同じくしてタイムパトローラーの悟天青年がいる。何処かの平和な時空の公園で、二人仲良くベンチに腰掛けているわけなのだが、そこにはどうもぎこちない空気が流れていた。だが、それもそのはず。彼らは先日、恋人として健全なお付き合いを始めたばかりなのだ。そして現在進行形で、初めてのデートをしている最中だった。
トランクスは、生まれてこの方恋人という物を作ったことがない。そもそも恋をしている時間なんて、荒廃した彼の世界であるはずもなく、ぶっちゃけ初恋だ。デートで何をすればいいのかなんて分からないし、悟天と何を話せば良いのかも分からない。何もかもが分からない。詰まるところ、とても緊張していた。
悟天は、悟空の次男で、悟飯の弟で、平和な世界で生まれた自分の親友。性格はかなりチャラチャラしていて、女の子と遊び歩く事も少なくないと聞いている。デートなど慣れっこだろう。一向に何もせず固まっている自分に愛想を尽かしているのではなかろうか。もしそうだったら、不甲斐なくて大変申し訳ないと思うと同時に、うっかり次の覚醒が出来てしまいそうな程度には非常に傷付く。今彼はどんな顔をしているのか、確認するのが怖い。怖いが、このままでは何も進展しないのは明白。分かってはいるのだが……。
いや多分これ確定で怒ってるか、つまらないって失望されてるんだよなあ。だって、普段おしゃべりな彼が、さっきから一言も言葉を発しないのだから。
今すぐここから逃げ出したいという気持ちを抑え、とにかく悟天の機嫌を取るべくトランクスは意を決して、顔を上げて隣を見た。
「あ、あの! 悟天さ……ん?」
「ひょえ!? な、なに!?」
しかしどうだろう。悟天は、トランクスの想像とは全く違った表情だったのだ。ひっくり返った声を出してこっちを向いた彼の白い頬は薄く桃色に。困ったような苦笑いで、焦ったようにしている。漆黒の瞳はよくよく見ると、ほんの少しだけ潤んでいた。
……え? もしかして、緊張してる? あの悟天さんが?
トランクスの心臓はドキドキと跳ねる。彼の頬も、悟天と同じだけ熱くなった。試しに悟天の手の甲に、指を伸ばす。五指でちょんと触れると、彼は分かりやすくビクッと反応した。
「な、何なのさ」
「えっと……手、繋いでも?」
「そん、なの、デートしてるんだし……い、一々聞かないで好きにすればいいのに」
「わ、分かりました。では」
そっと、悟天の手の上に自分のそれを重ねる。大きさも太さも殆ど変わらないが、体温だけが、少しだけ違う気がした。
「意外です。悟天さんも緊張するんですね」
「だ、だって。そりゃ今までだって、好きな女の子は何人もいたけど……こんなに誰かを好きになったのは、初めて、だし」
「何ですか、それ。嬉しい。嬉しすぎます。貴方はオレを骨抜きにするのがお上手だ」
「もう! 心臓持たないって!」
あきた