先に照れた方が負け。というルールの元、彼らは突然ゲームを始めた。ここでまず前提として、二人は付き合っていない。
「悟天、愛してる」
「あはっ。ボクも愛してるよ〜」
「……やるな。結構渾身の愛の告白だったんだけど」
「トランクスくんこそ」
暇を持て余したハーフサイヤ人は、いわゆる『愛してるゲーム』というやつをやろうという流れになったのだ。男二人で? あり得ないだろう。そんな至極真っ当な意見を言う者は、残念ながらここにはいない。何故なら、悟天もトランクスも様子がおかしい側の人間だからだ。
目と目を見つめ合い、先ずは互いにジャブを決め込む。当然、同性の親友に言われた所で微塵も動揺しない。これは面白い良い暇潰しだと思い、彼らは次の一手を繰り出した。先攻はトランクス。悟天の頬に右手を滑らせ、左手で彼の頭を撫でながらゆっくり呟いた。
「愛してる」
悟天は嬉しそうににっこりと笑う。そして、両腕を首の後ろに回し、顔をギリギリまで近づけて言った。彼のターンである。
「すーき」
おお、可愛いこと出来んじゃねえか。と、トランクスは思ったが、まだまだ全然だ。照れさせたいならこれくらいやれ、そんな気持ちを込めて、今度は耳元に唇を寄せる。ほぼ吐息を吹き掛けるトーンで口を開いた。
「愛してるよ、オレの悟天」
ぶるっ、悟天の肩が震えた。
「お? 照れたか?」
「……ざんねーん。耳がこしょばゆいだけでしたー」
「ちぇ、なんだよ」
勝ったと思いきやぬか喜び。確かに悟天の白い頬は、色味を全く変えていなかった。早く照れろよと心の中で舌打ちをしていると、悟天が早くも次を仕掛ける。
「大好きだよ」
ちゅっ。
悟天は、トランクスの唇に軽く、口付けた。
「ッッッ!?!?!?」
触れた瞬間、トランクスは大きく後退りをする。壁に頭を打ち付けたことで、そういやここは自室だったことを思い出した。
「お、おま、おまおま、今ッ」
「……ボク今、何した?」
「は? ……はああああ!?」
トランクスは混乱で、目の前がぐるぐるすした。自分の顔が熱いのが良くわかる。あ、負けたんだなと言うことだけはなんとなく察せた。
しかし、対抗していた悟天の頬も、りんごと同じくらい赤くなっていた。
「……引き分け、引き分けだ!」
「へ?」
「今日はもうお前、帰れ! で、頭冷やそうぜ、お互い」
「と、とら」
「で! ちゃんと冷静になったら、言いたいことある。今度はゲームとか無しでさ」
「……そう、そうだね。うん。ボクも、あの……伝えたい事、あるし」
何だか妙な空気感になってしまったが、今日のところはひとまず解散だ。くだらないゲームがきっかけだったが、彼らは気付いてしまったのだ、自分の気持ちに。
ああ、でも、次からどんな顔して会えばいいだろう。照れずに顔を見られるだろうか。二人は、高鳴る鼓動をどうにも抑えられそうになかった。