ジョハリの箱庭・Ⅵ『盲点』(2/2)
夕食を終えて、弛緩した空気が部屋には流れていた。くちくなった腹を持て余しながら、民尾はリクライニングチェアに座りぼんやりとコレクションの棚を見つめている。四八五系の丸みを帯びた赤いラインが、ディスプレイボックスに反射する光で滲んで、白く塗りつぶされていた。首を揺らすと、角度のせいで丁度光が凝集され、民尾の目を刺す。思わず床を蹴り、椅子を回転させて身体全体を逸らした。
半回転して後ろを向けば、炭治郎がベッドに腰掛けてうつらうつら船を漕いでいるのが見えた。民尾を待っているつもりなのかも知れないが、別に頼んだつもりもない。寧ろ炭治郎が寝ている間しか実質的に民尾に自由はないのだから、良い迷惑だ。穏やかな微笑みの皮を被って、民尾は立ち上がる。
12743