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    eikokurobin

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    レニ/右爆/轟爆
    眠れぬ夜の小さな図書館

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    轟爆/弓バス/歳の差

    #轟爆
    bombardment

    レンタル彼氏 それはしとしとと雨が降る日、昇降口で空を見上げて傘を忘れた自分の間抜けさに舌打ちをしている俺の前に天使が舞い降りた。天使の名前は勝己、勝己との出会いは色々な意味で鮮烈だった。何しろ初めて交わした会話は、

    『轟先輩、俺のレンタル彼氏になってくれねェ?』

    ここからから全ては始まったのだから。

    レンタル彼氏って何だと聞くと“お金を払って彼氏を買うことデース“って悪戯っ子の顔をして微笑み、小首を傾げて“轟先輩はおいくらですか?“と続ける。ああこの子はふざけているんだな、同じ学校の制服に一年生であることを示す名札の色、ここは上級生として悪ふざけを注意すべきだ。そう思ったが、その飛び切り綺麗な顔をした子ともう少し話をしてみたいという欲の方が上回りついつい話に乗ってしまう。

    『俺はそのレンタル彼氏ってのが何をするのかよく解らねえ、だからお前が教えてくれ』

    『マジで?スゲェ嬉しい、轟先輩硬派だから絶対無理だと思ったのに』

    そう言ってスルリと腕を絡ませてくる華奢な少年の名前は爆豪勝己、それは学校の掲示板でいつもみる名前。俺がニ年生の成績トップなら、爆豪勝己は一年生の成績トップ、一学期と二学期と仲良く名前を並べていた相手だったというわけだ。

    +++

    『成績優秀な生徒がこんなことしていいのか?』

    『こんなことって、放課後にクレープ食べること?それとも先輩はこれからイケナイこと企んでるの?』

    『そのイケナイこととやらが何だかは検討つかねえんだが』

    これは嘘だ、唐変木と揶揄される俺だって勝己が何を売ろうとしているかぐらいは解る。だって勝己はあまりにも美人なのだ、ピンクがかった真っ白の肌、淡い金髪、スラリと伸びた手足、全ての要素が勝己の美しさを全肯定する。こんな綺麗な子がどうしてお金を払ってまで彼氏を欲しがるのだろう、勝己なら男だって女だってよりどりみどりだろうにと言うと、

    『だって俺の狙いは一択、轟先輩だから』

    そう言われて安心する自分がいる、そうか、勝己は誰にでもこういうアプローチをするんじゃなくて、俺だからしたのかと。って、それじゃまるで俺が高嶺の花みてぇじゃねえか。

    『轟先輩は学校一の高嶺の花デショ?まさか自覚ねーの?』

    ねぇけど、でもラブレターの類は確かに沢山貰っているからあるいはそういう風に見られているのかもしれない。そういう勝己だってラブレターとか沢山貰ってるだろうと訊くと、俺は男にしかモテねェんだよなァって不思議そうな顔をする。確かに男の俺から見ても魅力的な子だと思うけれど、つうかあまりに可愛いから今まで気が付かなかったけれど、俺は男で勝己も男って、それってつまりは同性愛ってやつなのか。

    『勝己は同性愛者なのか?』

    『ンーン、どうだろうなァ、俺人を好きになったの初めてだからさ』

    天然なのかそれともあざといのか、勝己の言うことはひとつひとつが可愛くて、たちまち俺の心を掴んでいく。それこそクレープひとつを食べ終わる頃には俺はすっかり勝己に惚れ込み、レンタル彼氏はやめて俺と普通に付き合ってくれと交際を申し込んだ。てっきり上手くいくと思ったのに、

    『それはダメ。レンタル彼氏じゃなきゃこの関係は成立しねェから』

    そう言いながら一瞬悲しげな顔を見せた勝己は、次の瞬間にはもう悪戯っぽい顔。頬をピンク色に染めながら俺の口の端についたクリームを猫のように舐めてくれるから俺はたまらず勝己の唇を奪い、甘い甘い唇を味わいながらどうにかしてこの猫を手に入れたいと思い始めていた。

    +++

    “焦凍先輩、一緒に昼飯食おうぜ。弁当作ってきたから今日はパンは買わないように!“

    何で俺がパンばっかり食っていることを知っているのか、待ち合わせた体育館の側のベンチに向かうと先に来ていた勝己が誰かに絡まれている。その相手はバスケ部、確か勝己はバスケ部所属だから部活の先輩ということになるのだろう。その先輩の手が勝己を体育館の壁に追い込む、あれは壁ドンとかいうやつ、ってことはー

    『お前何してる、勝己は嫌がってるだろ!』

    アンタには関係ないという同学年の生徒に、勝己は俺の恋人だから関係あるというと残念そうな顔をして引き下がっていく。大丈夫か勝己と抱き寄せると、

    『ヨユー、俺こう見えても結構強いから、でも助けてくれてサンキュ!焦凍先輩、王子様みたいにかっこよかった、まあ、いつも王子様なんだけどさ。そんな王子様のお口に合うかどうかは解らねェけど、どうぞ』

    差し出された弁当の包みを開けると色とりどりのおかずとおにぎり。スゲェなこれ全部勝己が作ったのかと訊くと勿論だとドヤ顔してみせ、それから手作り弁当くらいでコロリといっちゃダメだ、下心満載なんだからって真剣な顔して忠告してくれるけれど、そんな忠告なんてまるで無駄、だって俺はすっかり勝己に夢中なのだから。そう、俺だけじゃねえ、さっきのバスケ部員だってきっと勝己に魅せられたひとりだし、俺が知らないだけできっと勝己に心を寄せる輩は沢山いる。勝己だって男にモテることは否定しなかった、

    (女にモテるのも心配だけど男はダメだろ、だっていざという時男が相手じゃ勝己は身を守れない)

    やっぱり俺のモノにしたい。勝己は俺の恋人だと宣言して悪い虫を排除したい。勝己にそう話すと、

    『別にそれでもいいわ、俺と焦凍先輩の関係はレンタルのままってことなら』

    食べたら眠くなってきた、と俺の膝の上に頭を落とした勝己の顔色がいつもに増して蒼白に見えるのは太陽の光のせいだろうか、それとも、

    『勝己、何処か具合でも悪いのか?』

    +++

    『なあ、爆豪どうしたんだ?救急車で運ばれた時轟は側にいたんだろ?』

    放課後同じクラスのバスケ部員に聞かれたけれど、俺だって解らない。俺の膝の上でどんどん血の気を無くしてった勝己の脈が止まっていることに気がついてからは半分パニックになりながら救急車を呼び、授業で習った人工呼吸を思い出して勝己の口に息を吹き込み柔らかい胸板を五回抑えて刺激して、そうしているうちにサイレンが近づき俺の勝己を連れ去っていった。

    『俺だって知りてえよ、お前バスケ部なら何か知ってるんじゃねえか?』

    『ああ、心臓が悪いらしい、たまに苦しそうに胸を抑えて薬を飲むのを見たことある』

    そんなこと俺は聞いていない、勝己のやつそんな大切なことを話してくれなかったのか。胸の中でぐるぐると回る感情をどうにか制しながらスマホを握りしめる。目が覚めたら連絡をくれとメールしておいたものの、果たして返事をくれるだろうか。不安な夜を過ごし、翌朝帰ってきたメールには、

    “レンタル終了、轟先輩ありがとうございました“という一文と、レンタル代を支払いたいから口座番号を教えてほしいという事務的なメールがもう一通。レンタル彼氏ってのマジだったのか、いやこのレンタル代めちゃくちゃ高額だろう、こんなお金を勝己からもらうわけにいかねぇし、そもそも一円だって欲しくねぇ。

    “終了ってなんだよ、勝手に終わらせるんじゃねえ“

    怒りに任せてメールを返し、すぐに後悔して会いてえとメールする。レンタルなんて嫌だ、お前の正式な彼氏になりたい、お前なしじゃもう生きていけねぇと。すると“ごめんなさい“、謝るなら顔を見て謝れと送ると“セントラル病院、895号室“、ああ、繋がった!電車とバスを乗り継ぎ病院の窓口で面会を申し込むと、轟焦凍さんならご家族から許可が出ていますと言われてホッとする。勝己は俺のことを家族に話してくれているんだ、そう思うと勇気が湧いてきて、勢いで病室のドアを開けると、そこには勝己にとてもよく似た女性が立っていた。

    『貴方が轟焦凍くんね、勝己がお世話になっています。さっきまで受けていた点滴の作用で眠っているけれど、もうすぐ目を覚ますはずよ』

    そういって席を外す勝己のお母さんに御礼をいい、勝己の手を握りしめて目覚めを待つ。やがて目を覚ました勝己の意識がはっきりと覚醒した頃に、どうしてレンタルに拘るのか訊いてみる。

    『お前は俺のことを好いてくれているし、俺はお前のことがすげぇ好きだ。こういうのを相思相愛って言うんだろう?』

    『レンタルにしたのは、この交際が期間限定にしたかったから。俺、長生きできねえからさ、焦凍の大切な人になったら寂しい思いをさせちゃうだろ。それに、こんなに好きになってもらえるなんて思っていなかったんだ。レンタル彼氏ってお金を払ってその時間だけ恋人のフリをしてもらうのに、焦凍は24時間俺のことを恋人扱いしてくれてさ、俺もそれが嬉しくて、焦凍のことがますます大好きになって、だから病気のことも言い出せなくて、

    ごめん、最初からちゃんと言っとくべきだった、俺は長生きできねえって』

    『馬鹿、そこは謝るところじゃねえ!俺が怒っているのは、俺の好きをみくびられたことだ!舐めるなよ、俺は好きになったら地獄だろうが天国だろうが追いかけていって連れ戻してやるから、

    聞いているか神様!勝己はあんたのモノじゃねえ、俺のモンだ!』

    ベッドに横たわる勝己の上に覆い被さり、ギュッと抱き締めて神様とやらに宣戦布告すると、俺を離さないでと勝己が胸の中で囁くからもちろんだと、俺は腕に力を込めた。

    +++

    “明日の弁当のリクエストは?“

    “蕎麦が食いてえから明日は学食デートしよう、そろそろ害虫駆除もしねえとな“

    焦凍のファンクラブが泣くぞと返ってくるが、最近は俺たちセットで推されているらしい。学園祭ではベストカップルに選ばれ、すっかり公認になれたけれどまだまだ足りないって思うのは、俺が欲張りなのか、勝己が可愛すぎるからか。最近始めた治療が奏功し、健康を取り戻しつつある勝己は憂いが晴れてますます魅力的になってきている、

    やっぱり勝己が可愛すぎるのがいけないと結論付け、明日は思い切り見せつけてやろうと心に決めた。
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