怪しい組織があったので「1号さん、アレ…」
笑顔でタケオオツクツクについて語っていた悟飯がぴたりと足を止めて、しゃがみ込んだ。
私も習う様にそうして、指の差す方を見る。
一見ただの岩肌に人がゆっくりと近づき、しゅっと音を立てて消えていく。
その光景はさながら昔所属していたレッドリボン軍のアジトのようだ。
「生体反応が消えている」
「そうですね。気が感じられない…」
「……隠れて何かをやっているということか」
私の言葉に悟飯はそうかもしれませんね、と呟いた。
2人が消えていく入口の方に回り込んで見ても、傍目にはただの岩山だ。
入口の様なものはない。
「……いくか?」
「……ちょっとまってください…」
そう言うと孫悟飯はぐっと目を閉じた。
仲間の気を探っているのか、暫くそうした後、ぱちりと目を開ける。
「…行きましょうか」
その言葉は我々の他に救援が望めないことを示していた。
わかったとだけ言って頷く。
前を行く背中を追って、森を突っ切った。
--------------
入口近くにさっと入り込みコンテナの影に身を隠す。
近くにいる兵士達の話を盗み聞くと、どうやらこの基地ではおかしな薬を作っているらしい。
その薬を投与された者はある周波数によって下される命令に逆らえなくなるらしく、
この組織はそれを世界中の人に摂取させて従わせるつもりだった。
そんな計画はなんとしてでも阻止しないといけない。
だが、今ここには悟飯と私の2人。
情報も戦力も少ない以上、迂闊に飛び込むのは得策ではないだろう。
「…我々2人でこれ以上は…」
「…そうですね…。本当はもう少し情報を得られるといいんですけど…」
けして標的から目を逸らさず背中で話す悟飯にふむ、と頷くと後ろから何者かによって肩を叩かれた。
相手は悟飯ではない。悟飯は目の前にいる。
(しまった!)
最悪の事態が脳裏を駆け巡った瞬間。
聞き慣れた声がした。
「1号。僕だよ」
「2号!?それに…ピッコロも…」
「え!!?ピッコロさん!?」
「しっ!静かにしろ。何でお前たちがここにいる」
ピッコロは悟飯を嗜め、今日は蝉を食べるんじゃなかったのか?と私に尋ねる。
2人の格好はここにいる兵士と同じだ。
また、いつぞやのように潜入をしていたのだろうか。
「あ、あぁ。フィールドワーク中にここに入っていく人間を見かけて…」
「ピッコロさん達こそ…修行してたんじゃ…」
首をすくめてこそこそと話す我々にいろいろあってな、と説明を省いて、そんなことよりと前方を顎でしゃくった。
「あまり悠長なことも言ってられんぞ。奴らの計画は知っているか?」
「あ、ああ。街中に薬を…」
「そう。その計画は今日実行されるらしい」
半分答える私に被せて2号が言い放つ。
「今日…?」
「そうだ。こんなものも手に入れた」
ざっと広げられた地図。
エントランスやロビー、電子制御室などと書きこまれたそれは、この組織の見取り図のようだ。
もうここまで、と顔を上げると目があった2号が得意げに口角を上げる。
「ここが今いる第三エントランス。僕たちはこっちの第一エントランスから、こう…」
トントンと指を当てて、経路を示した。
ここに辿り着くまでに
何部屋か回ってこの地図と計画の情報を得たと言う。
「そして、ここがメインロビー。ここにあるメインシステムから排出された薬が、
東西2本のタワータンクを通って街の給水路に一斉に放出されるらしい」
「つまり俺たちは2つのタワーを破壊しつつ、メインにある薬を回収すると言うわけだ」
2号とピッコロの説明を一通り聞くと、悟飯が地図から顔をあげた。
その顔は訝しむように顰められている。
「回収?破壊するんじゃないんですか」
「あぁ。この薬は気体なんだ。水溶性で、水に溶かして使う。気体の状態で破壊してしまうと近くにいる人間が吸引する危険性があるだろう?……それに、出来れば持ち帰ってヘド博士やブルマさんにも見せたほうがいいと思ってね」
2号の言い分に悟飯はなるほど、とまた地図に顔を落とした。
全員が地図に視線をやるのを確認して、私はそれに指を当てる。
「では、私がメインロビーに向かおう。
3人は共同で2本のタワーを破壊して外に出てくれ」
「え?1号さんが1人で?それは危険すぎますよ」
私の作戦に、いの一番に口を出したのは悟飯だった。
彼は困ったように眉を寄せている。
「何故だ。私なら万が一薬を吸っても問題ない。ここの兵は数も多く、1人1人の実力もそれなりにある。目立つタワーの破壊に人員を割くのは合理的だと思うが」
「でも、メインシステムは敵の要だし、
戦力を割くならまず間違いなくメインだと思うけど…」
話の途中で、あ!そうだ!と手を打った悟飯はとんでもないことを言い出した。
「僕がこのエントランスで敵を引きつけて戦力を削ぎますから、その間に3人で今の作戦を決行しましょう」
「だめだ。そんな作戦は認められない」
間髪入れず否定した私に悟飯はむ、とした様子で不満気に口にだす。
「敵の数が減れば作戦がしやすくなります。
間違ったこと言ってないと思いますけど」
「間違ってる間違ってないの話はしていない。危険だと言ってるんだ」
「危険で言ったら1号の作戦だって危険じゃないですか!」
悟飯が興奮した様子でぐっと拳を握った。
威圧するようなエネルギ量からも彼が冷静じゃないのがわかる。
「少しは冷静になりなさい。この作戦は君の無事が保証されない。却下だ」
「どうしてですか!?僕だって、無茶してるわけじゃないんですよ。
僕が危なくなる前に1号さんが何とかしてくれるんでしょ」
自ら揺動役を買って出ておきながら、その命は平気で他人の私に賭けるという。
そんな危うい考えに、イラっとした。
「お前の体は替えが効かないと言ってるんだ!私ならば、最悪パーツを取り替えるだけで済むんだぞ!」
私の言葉に悟飯は目を見開き、次の瞬間には憎々しげに眉を寄せ、歯を食いしばる。
「自分のこと粗末に扱いすぎだぞ!」
どの口が言うのか。
自分の命は賭けておきながら、わたしにはそれをするなという。
いつぞやの2号を思い出し、ぎり、と歯を食いしばった。
「2号みたいなこと、言わないでくれ」
どうしてそう分からず屋なんだ、と呟くと分からず屋はどっちだよ、と拗ねたような呟きが聞こえる。
さらにぎっと歯を食いしばってその胸ぐらを掴んだ。
「この前だって言うことを聞かずに飛び込んで行って大怪我をしたのは誰だ!!」
「そっちだって!僕が止めるのも聞かずに突っ走って!!僕がブルマさんのとこまで連れ帰らなかったらあのままスクラップだったぞ!!」
あの時もあの時も、と溢れ出す言い合いにピッコロがスッと間に入る。
ピッコロは呆れたように目を伏せ、私とご飯の胸を押し、引き離した。
「2人とも興奮しすぎだ。声も大きい」
「まぁ、声の方は僕が吸音バリアをしてたから多分、大丈夫だと思うけどね」
冷静さが足りないなぁと煽るように言う2号をちらっと睨みつけ、ピッコロの手を払う。
2号はやれやれと言った感じで肩をすくめてみせた。
「私は至って冷静だ」
「…僕も…冷静です」
「冷静な奴らはそんな顔で睨み合わん」
悟飯は不服そうではあるが、ピッコロの仲裁には静かに従って一歩下がる。
私の言うことは聞かないのに、ピッコロには何処までも従順だ。
そんな様子も普段であれば気にならないが今は気に入らない。
そんな私たちにはぁ、と深くため息をついたピッコロは話し出した。
「そんなに揉めるなら2人でメインシステムに行けばいい。揺動なら俺が引き受けてやる」
「「そう言うことじゃないだろう!!」」
怒りのボルテージのままぴったりと重なった悟飯と私の言葉にピッコロが面食らったように目を開く。
さらに追い討ちをかけるように悟飯と私が畳み掛けた。
「ピッコロさんが1番危険になってるじゃないですか!」
「2号の負担も大きい。メインフロアに私と悟飯の2人では多すぎる。私1人で充分だ」
「そうです。揺動は僕が出来ますから」
「くっ、お前たち一緒になるとそうやって…。わかった!わかったから詰め寄ってくるな!」
さっきまで揉めていたくせに…と汗を拭うピッコロの肩を叩いて今まで黙っていた2号が入ってくる。
「まぁ、客観的に見て全員熱くなりすぎてるね。そもそも僕は単独行動自体どうかと思うな」
「ならどうする」
「うーん、そうだな」
2号が話した作戦は私と悟飯、2号とピッコロで二手に分かれ両タワーに起爆装置を設置。
その後メインに4人で集まったら起爆装置を作動する。
爆発騒ぎでタワーに人が集まってるうちに薬を奪うと言うものだ。
「まぁ、この作戦も危険なとこもあるけど、複数人での行動なら不測の事態にも備えられるし…」
2号は、どうかな、と子供の機嫌をとるような声音で話す。
悟飯はちらっと私を見て、ふぅ、と息をついた。
「……僕はいいと思います」
「……私もだ」
「うむ。じゃあそれで行こう」
揉めるなよ、と冷や汗混じりに指摘するピッコロの言葉に、悟飯をちらりと見やる。
悟飯も同じようにこちらをみて、すいません、熱くなりました、と眉を下げた。
じゃあまた、と手を振る2号とピッコロの背中を見送り、私も謝辞を述べる。
「私も、すまなかった」
「いえ。まぁ、無茶なことはやめましょうね」
お互いに、なんて話しながら、我々も西のタワーに向かった。
--------------
「ここ、ですかね」
「あぁ。早く起爆装置を設置してメインに向かおう」
1号さんはタワーの根元にしゃがみ込みそれを設置する。
ちかちかと光る機械を見ながら、僕は言い知れない違和感を覚えていた。
「…行きましょうか」
「…ああ」
そういってメインロビーに向かっていく。
少しずつ身を隠しながら進んでいくが、違和感は大きくなるばかりだ。
「…おかしい」
「1号さんも思いますか」
「あぁ。あまりに簡単すぎる」
そう。
あれだけ懸念していた作戦なのに、なんのイレギュラーもなく進んでいる。
多少の戦力の読み違いや、不意を突かれたり、想定と違うことが起きたりなんてことがまるでない。
スムーズに進みすぎているのは、2号さんの立てた作戦のおかげか…それとも…。
大きくなる不安を飲み込んでメインロビーに入る。
さっと1号さんの広げた腕に制止され、物陰に隠れた。
懸念していたメインロビーにも対した警備の様子はない。
「1号さん…」
「あぁ。妙だな。しかし…いや。とりあえず2人を待つとしよう」
そうですね、と同意したその時、後ろから人の話す声が聞こえた。
咄嗟に顔を上げ、1号さん!と手近にあったコンテナに1号さんを押し入れ、そこに自分の身体も滑りこませた。
人が入るようには作られていない狭いその箱の中でそっと息をひそめる。
腕の下の1号さんが狭さを緩和するためか僕の背中に腕を回した。
抱きかかえ合うような体制で居ると、1号さんの中から聞こえるかすかな駆動音すら耳に止まる。
その音の向こうに聞こえる外の音に意識を集中させた。
『おい、アレを起動させろ』
『はっ!』
そんな会話の後、仰々しい音が聞こえる。
「悟飯。まずいぞ」
胸の下から聞こえた声に目を向けると、1号さんが焦ったように眉を顰めていた。
おそらく1号さんのセンサは、僕にはわからない何かが見聞きできているのだろう。
「何が、」
あったんですか、と聞くより早く、僕たちのいるコンテナが傾いた。
持ち上げられ、落ちる重力変化。
1号さんと僕は両端に気功波とレーザー銃を放って脱出して、大破したコンテナだけが地面に叩きつけられた。
「ま、まじかぁ…」
「…待ち伏せされていたようだな」
目の前には建物の天井に付く程のサイズの巨大な人型。
気は感じられないから恐らくロボットか人造人間だろう。
仕方ない、と気を開放した。
金色に染まり逆立つ髪。
ばちばちと弾ける音と巻き上げるような気が風を起こす。
2人が来る前にこれをなんとかしてしまわないと。
立ちはだかる山のような巨体に1号と2人、一斉に飛びかかった。
--------------
「いくらなんでも上手く行きすぎてる…」
「あぁ」
2号と2人で話しながら、メインロビーに向かう。
今日この施設に来てから幾つもの部屋に潜入し、情報を得てきた。
衣服を奪った隊員も拘束されてるとは言え、目は覚める頃だろう。
見取り図を奪ったり、入口で騒いでいたりしたのにも関わらず、この組織の中で騒ぎになる様子はない。
どころか、先ほどの東のタワーでは警備にすら鉢合わせず、起爆装置を設置できてしまっている。
上手くいきすぎてる、と考える方がむしろ自然だろう。
「…もうちょっとだけ調べてからメインに向かった方が良さそうだな」
「あぁ。俺もそう思っていたところだ」
に、と笑って見せれば、2号は安心したようにふっと笑った。
メインに向かうところを引き返して、東のタワーに向かうと、そこには先程までいなかった兵士が2人。
なにやら談笑をしている。
「しっかし馬鹿だよな潜入なんて」
「な。メインロビーに行けば一網打尽にされるとも知らずに…」
聞き耳を立てて飛び込んできた会話に顔を見合わせた。
「………あははー、これはまずいね」
2号は声だけで笑う。
あぁ、と肯定を返すが、頭の中はメインに向かった2人の身を案じるばかりだ。
暫くの沈黙の後、2号がポツリと呟く。
「揺動作戦、しかないだろうな…」
「…そうだな」
「あれ、否定しないんだ。なに?付き合ってくれるの?」
俺が当然だろう、と返せば、2号は優しいんだな、なんて笑った。
「1号…怒るだろうなぁ」
「ふん、一緒に怒られてやる」
諦めたように眉をさげ、ため息をつく2号の肩を叩けば、ちら、と呆れたような顔で見上げられる。
「……あなたは…」
「ん?」
「いや、なんでもない。じゃあ、行こうか」
何かを言いかけて立ち上がった2号。
それに続いて立ち上がる。
その目は真っ直ぐ敵を見据えて、右手は腰の銃へとかけられていた。
--------------
「はっ、はぁっ…」
孫悟飯の息が切れるのが聞こえる。
ぼたぼたと汗を流して、立ち止まる所に敵の拳が振り下ろされた。
咄嗟に飛び退いた先に回られ、がっとふる拳に弾き飛ばされる。
「悟飯!」
叫びながら放つレーザーは巨大な体躯に当たるも、大きなダメージにはつながっていない。
くそ、と悪態を吐きつつ、飛ばされた悟飯に駆け寄った。
「大丈夫か」
「ぃったぁ…くそぉ、硬いなぁ…」
案外けろっとした様子にほっと胸を撫で下ろすのも束の間、強烈な殺気に声を上げる。
「くるぞっ!」
ばっと弾かれるように飛び退いた後、振り返った先には粉々になったコンテナがあった。
あとコンマ数秒遅ければ粉々になっていたのは自分たちだっただろう。
苦戦を強いられて焦る中、外から爆発音が鳴り響いた。
その直後、今度は頭上からけたたましいサイレンが鳴り響く。
『東館タワー、襲撃あり!至急応援を!繰り返す!東館タワー、襲撃あり!』
東館。
2号とピッコロが向かった方だ。
2人を案じ、ばっと悟飯と目配せすると、襲撃を伝えるスピーカーからなにやら争う音と、聞き慣れた声が響いた。
『1号!悟飯!敵はこちらでなんとかする。そちらは頼んだぞ!』
『1号、ごめんね。でも大丈夫だから2人は任務を遂行して』
任せたよ、と言葉を残したのを最後にまた争うような音の中、ぶつりとスピーカーの音声が止んだ。
頭に浮かぶ最悪のシナリオを前に、沸々と怒りが湧くのがわかる。
あの2人はまた。
隣の悟飯を見やる余裕はない。
それでも、ぐわっと増したエネルギー波に、彼の気持ちも同じだろうということはわかった。
「1号」
「あぁ。やるぞ」
黒く染まった髪をなびかせて、悟飯が敵に突っ込んでいく。
巨体が悟飯の攻撃にしなり、右へ左と揺れ、遂にはがしゃんと膝をついた。
頭上で佇む悟飯に一瞥くれると、巨人はしゅっと音を立てて消える。
「一号っ!!」
悟飯の叫ぶ声が耳に届いた瞬間にはもう、私は右腹部に強い衝撃を受けて吹っ飛んだ。
瓦礫の中に沈む。
着地の時、咄嗟に庇った左腕と右腹部がばちばちと音を立てていた。
さっと飛んできた悟飯が私を抱えてメインロビーから出て、近くの部屋に隠れる。
「開けるぞ」
乱暴に腹部と左腕の表面のパーツを外して回路を眺める。
暫く眺めてからぐっとコードを何本か引き伸ばした。
無事な箇所から走る痛みに似た刺激に顔を顰めた私に構わず、断線箇所を切断して再度接合すると、反対側のコードもぐっと引いて繋ぐ。
断線が解消された瞬間、なくなっていた電気信号が送られてくるようになった。
「行けるか」
「あぁ、大丈夫だ。すまない」
応急処置だと素気なく言い放つが、かなりのダメージが軽減されている。
ゆっくりと立ち上がる間も無く、メインロビーと接する壁が衝撃と共に崩れ落ちた。
飛び退いて距離を取る。
敵を見据えながら、隣にいる悟飯に語りかけた。
「悟飯。私が敵を引き付ける」
「1号」
相手を威圧する怒りを含んだその声に首を振り、続ける。
「敵は大技が多い。回り込んでから攻撃が当たるまで平均1.28秒の隙がある。お前ならその時間で私と奴の間に飛び込んで、気を放つことができるだろう。私は長距離から攻撃する。敵が私に回り込んだ瞬間に、お前がとどめを刺してくれ」
敵を睨んだまま歯を食いしばった悟飯は、それでも数字的根拠に少し頭を冷やしたのか苦々しそうに、わかったと呟いた。
「行くぞ!」
声をかけて飛び出し、距離をとってレーザーを放つ。
敵は身動きの封じられる攻撃を受けると発散するように後ろに回り込む癖があった。
悟飯もおそらくそれに気づいているだろう。
右腕から顔にかけて連射。
敵が右を庇って左へ重心を寄せた瞬間に、左足を連射する。
がくっと体制を崩し、ついた左腕を狙い打つと、しゅっという音と共に巨体を見失った。
(いまだ!)
心で叫んだ声と同時に、背後に迫る敵とその間に飛び込んできた悟飯。
「か、めーはーめ…」
大技を奮おうと腕を上げた体勢の敵の腹部はガラ空きだ。
波ぁーっと叫ぶ声。
放たれた青い光は敵の腹部を貫通して、壁を砕き、破壊し損ねたと思っていた西のタワーまでもを巻き込んで弾けていった。
--------------
「これで最後だ」
どさ、と拘束した兵士を地面に転がしピッコロは口元を拭う。
窮鼠に噛まれた右腕は断面がむきだし。
かくいう僕も降りそそぐ瓦礫から兵士を庇った時、左足は無くしてしまったのだけど。
まぁ、あれだけの勢力と混乱の中この程度の負傷で済んだのなら上々だろう。
僕の肩を抱くピッコロが腕を生やそうと気を溜めると、遠くの瓦礫の山頂きに見慣れた生体反応が見えた。
そのエネルギー波の強さは戦闘が終わった後とは思えない。
「あー…あれは完全に怒ってるな」
「一緒に怒られてやるといっただろう」
「うーん…そうだね…。じゃあ貴方は悟飯をお願いね」
悟飯?と頭を捻る知恵者は自分のことになると急に疎くなる。
悟飯がそんなになった貴方に何も言わないはずないのに。
どんどんと近づく2人。
近づいてくるほどその勢いが増す。
あー、と口を開けて見上げる僕の目の前に砂埃を巻き上げて降り立った1号の顔は怒りで染まっていた。
「いち、」
「なんで無茶をした!!」
名前を呼ぶより早くがっと掴まれた胸ぐらのせいで、残った片足が少しだけ宙に浮く。
僕は努めて明るい声を出した。
「ま、まあまあ。ね、でもほら結構上手くいったでしょ?死亡者0人!全員拘束できました!」
はなまる!と両手を広げた僕を憎々しげに睨んでぽいっと地べたに放ると1号はふいっと背を向ける。
完全にご機嫌斜めな様子に立ち上がって肩に手を置いた。
1号は何も言わないが、肩に乗せた手は振り払われない。
「1号…ごめんね…」
「…っ…何に謝ってるんだ…」
「…………」
「わたしはっ…」
そこまで叫んだ1号は嘘のように、静かに深呼吸をした。
「わたしは…もう2度とお前を失いたくない…」
その言葉にがつんと殴られたような衝撃を受ける。
ピッコロに疎いと呆れていたが、自分も不器用な1号が大切に想う気持ちに、その対象に自分がなっていることに真の意味で気づけていなかった。
「…ごめん。そうだね。心配してくれてありがとう」
「…次はない」
鞘を収めるようにそういった1号。
そんな不器用で優しい彼の肩を抱いて立つ日が続くように、尽力することを改めて決意した。
--------------
俺の目の前に降り立った悟飯はぎろっと睨みつけると、ピッコロさん?と威圧的な声を出す。
「薬を任せきりになってすまない。そちらは大丈夫だったようだな」
何に怒ってるのか知らないが、その身体に大きな損傷はない。
ほっと胸を撫で下ろし、肩を掴んだ左腕を掴まれて、降ろされる。
「僕、怒ってるんですけど…」
「な、なんだ」
「なんだじゃなくて。揺動作戦はしないって言いましたよね」
またその話かとため息をつくと、なんですか?!と声のトーンを上げた。
「作戦変更についてはすまなかったと言っただろう。いつまで臍を曲げてるんだ」
「そういうことじゃなくて!」
そうじゃなくて、ともどかしそうに歯を食いしばる悟飯は、ぐっと俯いておし黙る。
「どうした?」
「……もう、僕だけじゃ、」
「ん?」
「ピッコロさんを待ってるのは、僕だけじゃないんです。ピッコロさんが強いのも知ってます。知ってますけど…。無茶するのは、やめてください」
ぐっと握る拳を震わせた悟飯に、泣き虫な少年が重なった。
その髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜ、そうだな、すまなかったと返す。
されるがまま撫で回された悟飯の気が許すように落ち着くのを認めて、帰ろうと背中を押した。
--------------
「あっ!!」
警察に連絡して、4人で帰ろうと夕焼けを見上げたとき、2号が大きな声を上げた。
なんだ?と3人で振り返る。
あわわ、と今日1番慌ててる1号はゆっくりとこっちを見た。
「お使い、してない…」
つられて青くなったピッコロさんと事情を飲み込めずに頭を捻った僕と1号さん。
僕達4人がかんかんなビーデルさんに買い物袋を持たされたまま説教をされた後、うちで晩御飯を食べる事になったのはまた別の話だった。
-終-
〜以下蛇足〜
-プロット-
フィールドワークしてる1飯
なんか怪しげな洞窟発見
怪しげな組織に潜入。
(なんか、化学物質的なやばいやつがよい)
中でどうしよーってしてたら2Pと合流
(2Pは修行してたらビーデルさんに買い物を頼まれて、街で怪しげな人影を見つけて潜入)
物陰で4人で作戦会議する。
(ドボあきさんの素晴らしいイラスト参照)
〜〜〜〜〜〜〜
1の作戦
1がステルス潜入
1が1番危険なメインシステム。
2P飯で残りの東西フロアを1つずつ鎮圧して爆破
飯の作戦
飯が揺動+1がステルス潜入(メイン)
Pさんと2号で残りのフロアを鎮圧
Pの作戦
そんなにいう(揉める)なら揺動は俺がやるから
飯1でメインシステム2号がフロア鎮圧でどうか?
→こてんぱんにいわれる。
飯「Pさんが1番危険じゃないですか」
1「2号の負担が大きい!メインフロアは自分1人でいい!」
2の作戦
そもそも1人行動は危険やろ。
1飯と2Pに分かれる。フロアは1つずつ。
全員ステルススタイル。
バレないように。
なんか、敵を引き付ける作戦。(遠隔起爆とか)
最後はメインシステムは4人集まる約束。
2人ずつだからフォローできる。
メインにも全員集まってるから
薬の無事の可能性も高い。
〜〜〜〜〜〜〜
作戦開始
1飯:上手くやって先にメインに辿り着く
でもなんかおかしい(スムーズすぎ?)ので、2人を待つことに。
狭い箱にでも忍んでほしい(ストーリーに関係ない欲望シーン)
2P:上手くやるんだけど、メインに着く直前で潜入がバレてることを知る。
メインに纏まったところで一網打尽にしようとされてる。
というわけで揺動作戦に変えようと思うんだけど、
ピッコロ付き合ってくれる?
あぁ、勿論だ。ってなる。
1号怒るだろうな。
一緒に怒られてやる。
(貴方は悟飯に怒られるよ)
って言う会話入れたい。
そうして無茶する2P。
館内放送で2人が暴れてることを知る1飯。
2人は「はぁ〜〜〜〜???」ってなるけど、
もう後に引けないから作戦を続行する。
2人でばちばち(がんギレ)しながらメインに残ってた敵を蹴散らして薬を奪還。
(この辺で1号直す乱暴飯書きたい。でかいロボとかに腹部やられるとか)
最後集合した4人。
なんで無茶をした!!ってブチギレ1号に
まあまぁ、でも上手くいったでしょ?っていう2号
突然しょぼ…ってなる1号
「もうお前を失いたくない…」
「…ごめん。そうだね。心配してくれてありがとう」
っていう会話ある。
飯「Pさん?」((キレ
P「すまなかったと言ってるだろう。いい加減機嫌を直せ」
飯「ぼくはっ…」
「……もう、僕だけじゃないんですよ…Pさんを待ってるのは…」
P「………そうだな」(かみぐしゃ)
という会話を書く
最後4人で帰る。
2「あっ!!!!!」
なになにどうした!(あわわってする)
2「買い物…してない…」
あー…みんなで行きます?
でハッピーエンド
-終-