猫みたいな子だと思った。
不意に現れて、膝に乗ってきたかと思うとどこかへ消えて、私の気がないときには寄ってくるのに、手を差し伸べようとすると逃げてしまって。それなのに私のテリトリーには容赦無く入ってきて、私のジャージを履いて、私のベッドで寝息を立てていて。
「………浮奇」
顔にかかった髪を除けると、整えられた眉と、長い睫毛が覗く。眉はいつもより下がっていて、大人びた顔が少し幼く見える。
毛穴のひとつもないつるんとした肌は、頬が少しピンク色に染まっていて、艶めく魅惑的なくちびるは、僅かに開いて小さな歯を見せていた。
首元に華奢なネックレスと、いくつか外されたシャツのボタン。その奥には、服の上からでもわかる豊満なそれが少しだけ見えていて、彼女の呼吸に合わせて上下した。
「………」
私は彼女の、たくさんいるハーレムのうちの一人なだけ。自惚れるな。
そう自分を律しようとしても、私だってただの男だ。好きな女の子が無防備に自分のベッドで寝ていて、下劣な欲望を抑えきれるわけもなかった。
こんなことはよくないとわかっている。気持ちが通じ合っているわけでもない。ただ私が、彼女を想っているだけ。彼女は人気者で、私なんかに本気になるはずもない。
こんな私を許してほしい。
「う、うき、…ごめん」
立ち上がって部屋を出た。これ以上、眠っている浮奇と二人きりでいるのは、…色々とまずかった。
私の唇には、浮奇の頬の感触がまだ残っていた。