それはある日の午前中の出来事だった。
手合わせを終えた籠手切と松井が、豊前と桑名の部屋近くを通りかかった時、そういえばと松井が何かを思い出して足を止めた。
「用事があったの思い出した。桑名がいるみたいだからちょっと済ませてくるよ」
「あっ…松井さん待ってください!」
そう言って部屋へ向かおうとする松井の服の裾を掴み籠手切は制止する。
「おっと…籠手切、どうしたんだい?」
「そのっ、桑名さんがいない可能性もあるので…」
「…?桑名の気配がしたと思ったけど、僕の勘違いってことかな?」
「いえ…実は前にこういう事がありまして…」
籠手切が言うには、前に同じように桑名に用事があり気配がしたので部屋を訪ねたが、そこには豊前しかおらず。
疑問に思っていたら豊前の顔が次第に赤く染まっていき。更に豊前の首筋に鬱血痕があるのを見つけてしまった籠手切も色々と勘づいてしまい。
気まずい雰囲気になってしまった事があったのだと。
「それからは気配がしても本当にいるかちゃんと見てから確認するようにしてますし、そういう事をしたんだろうなって気づいてしまった時も普段通りの接し方をして、りいだあ達と気まずくならないように心がけてるんです」
「いや、気を遣いすぎでは⁉︎あの2人が気をつければいいだけの話でしょ」
どうやら彼らは籠手切に甘えすぎているようだ。これは僕から注意すべきかな…と松井は思いつつ。
「まぁでも豊前の恥ずかしがってる姿なんてそう見れないからね。桑名がいなくても面白いものが見れそうだし、とりあえず部屋を訪ねてみよう」
「えっ、ま、松井さん⁉︎」
慌てる籠手切をよそに、松井はすたすたと豊前達の部屋の前まで行き、襖を開けた。
「桑名いるかい?」
そう言って松井とせめてのっくはしてくださいと言いながら後を追ってきた籠手切が見たものは。
服をはだけさせながら桑名に押し倒されている豊前の姿だった。
「ひぇ…ふぁ、ふぁんさがすぎるっ…!」
「こっ、籠手切!しっかりしろ!」
「くわ!だから止めろって言ったちゃ!」
「ごめんごめん」
刺激が強すぎたのか籠手切は失神して倒れてしまい、豊前は顔を真っ赤にしながら服を戻し、桑名はさほど気にする様子もなく。
松井は今日ほど興味本位で行動してしまった己を悔やむことはなかった。