【#01】あまのじゃくと恋煩い第1話「今更」
人生は選択の連続だ。
そんなありきたりな格言を何度か聞いたことがあるが、まさにその通りだと僕は思う。
約16年間にわたる僕の人生は実に平凡でドラマ性など微塵もない地味なシナリオだったが、“選択の時”は前触れもなく突然やってきた。
入学したばかりの高校からの帰り道。
数週間前までは満開の桜が咲き誇っていた土手沿いの桜並木を、僕たちは歩いていた。
自転車を押している僕の横には、たまたま帰りが一緒になった別のクラスの同級生。
まだ互いの名前くらいしか知らない間柄の彼女とは、“友達”どころか“知り合い”と呼称するのも違和感があるほど他人に近い距離感だった。
そんな彼女が、すでに葉桜になってしまっている桜並木の真ん中で足を止める。
突然立ち止まった彼女を不思議に思い、数歩歩いた先で僕も立ち止まる。
振り返ってどうしたのか尋ねようとしたその瞬間、“選択の時”はやってきた。
「アタシと付き合ってくんない?」
いつもは健康的な彼女の肌が、少しだけ紅潮している。
真っすぐこちらを見つめる青い目は小さく揺れていて、僕の胸を貫かんばかりに力強いまなざしだった。
それなりに理解力があると自負しているが、この時ばかりは彼女の言葉の意味が瞬時に理解できなかった。
口を小さく開けたまま固まっている僕に、知り合って1ヶ月もたたない彼女は念を押すかのように再び言葉を投げかけてくる。
「タイオンが好き」
そよ風に明るい髪を靡かせる彼女は、誰がどう見ても真剣だった。
家族以外の誰かから、こんなにもはっきりと好意を伝えられたのはこの日が初めてで、まだ15歳の僕には現実離れしすぎたシチュエーションでしかない。
人生で何度もめぐってくる選択のひとつでしかないが、僕はこの日、初めて選択を間違えた。
「……ごめん。そういうのは、その、あまり考えられない」
もしかしたら、彼女は僕の回答を最初から分かっていたのかもしれない。
驚く様子もなく、たいして悲しい様子も見せず、一瞬だけ顔を伏せるとすぐに歯を見せて笑った。
「だよな。ごめん、忘れて」
まだ新品同然のローファーを履いた彼女の足が、再び歩き始める。
僕の隣に並び、追い越す瞬間、青い瞳がほんの一瞬だけ悲し気に揺れたような気がした。
彼女の背を負うように僕も歩き出す。
自転車を挟んで隣を歩く彼女は、さっきより口数が少なくなっているように思えた。
こういう時、どうしたらいいのだろう。
異性に好意を伝えられたことなど一度もなかった僕は、今この場で巻き起こっている甘酸っぱい状況をどこか他人事のように感じていた。
それくらい、現実味がなかったのだ。
出会ってまだ1カ月程度の相手に告白されるだなんて。
彼女の名前はユーニ。
初めてできた女子の友達だった。
***
コーヒー、ジュース、乳飲料、紅茶、炭酸飲料、お茶、そして水。
色とりどりの飲み物が並んでいる自販機を前に、僕は少し悩んでいた。
時刻は12:45。昼休みに突入したばかりの校内は、学食や購買に向かう生徒たちで溢れている。
学食の前に設置された自販機に飲み物を買いにやってきた僕だったが、右から2番目の自販機に小銭を押し込んでから既に10秒ほどが経過している。
ここに来る直前までミルクティーを買おうと心に決めていたのに、いざ自販機の目の前に到着すると心が揺らいでしまう。
やぱり緑茶にしようか。いや、コーヒーもいいかもしれない。
少しの間考え込んだ末に、当初の予定に従いミルクティーを購入することにした。
「おにぎりにミルクティーは合わねぇだろ」
ボタンを押した瞬間、突然背後から声を掛けられる。
ペットボトルが取り出し口に落ちてくるガコンという音を横で聞きながら背後を振り返ると、やはりそこにはユーニの姿があった。
僕の右手に収まっている鮭と梅のおにぎりに視線を向けている彼女は、何故か半笑いだった。
「別にいいだろ」
「せめてストレートティーにすればいいのに」
「糖分が欲しいんだ」
「おにぎりとの飲み合わせ最悪じゃね?」
「そうか?別に気にならないが」
「うわキショー……」
「失礼な」
ふっと笑みを漏らすと、彼女は僕を押しのけ同じ自販機に小銭を投入し始める。
そして少し背を伸ばして押したボタンは、僕が購入したもの同じミルクティー。
「君だってミルクティーじゃないか」
「アタシは今日菓子パンだからな。米と一緒に甘い飲み物飲めるほどやべぇ味覚してねぇし」
派手な音を立てながら取り出し口に落ちてきたミルクティーのボトルを取り出すため、ユーニは身をかがめた。
その拍子に、短く折り込まれた制服のスカートから白い太ももが強調される。
太ももの先に隠れているであろうその場所に視線が吸い込まれてしまうのは、僕が健全な男子高生である証拠なのかもしれない。
取り出し口からボトルを取り上げたユーニが上体を起こしたと同時に視線を逸らす。見えなかった。
「タイオンのクラス次なに?」
「確か現代文だな」
「いいなー寝れるじゃん」
「寝ないだろ普通」
「いや寝るだろ普通」
「そっちのクラスは?」
「体育。グラウンドで走り込みだってさ。このクソ寒いのに地獄だよな」
自販機で飲み物を購入した僕たちは、自然と並んで歩きだしていた。
僕たちのクラスは別々だが、教室は隣り合っている。
わざわざ別々に教室へ帰る方が不自然だ。
廊下を二人並んで歩く速度は、いつも僕一人で歩いている時よりも圧倒的にゆっくりだった。
教室に到着するまでの時間が、なるべく長くなるように。
「そういえば来週期末テストだよな。勉強してる?」
「テストのための勉強はほぼしてないな。普段の予習復習で問題ないだろうし」
「おーおー、秀才はいいねぇ。テストの時だけアタシと脳みそ交換しようぜ」
「授業で寝てるから毎回テスト直前になって焦る羽目になるんだろ」
「正論やめろよなー」
階段を登りながら、特に中身のない会話が続く。
2階と3階を繋ぐ踊り場に差し掛かった時、近い距離でこそこそ話している一組の男女とすれ違った。
頬を赤らめた女子が手に持っているのは、可愛らしくラッピングされた小さな袋。
中身は見ずともわかる。
鼻の下を伸ばしながらその袋を受け取っている男子はやたらと嬉しそうだった。
そんな光景を横目に見ながら、平常心を保つ。
今見た男女とほぼ同じような光景を、今日は朝から何度も見てきた。
下駄箱に押し込められていた袋を発見し歓喜する男子。
群れで教室に押し寄せもじもじしながら意中の男子を呼び出す女子たち。
人気のない場所で秘かに繰り広げられる袋の受け渡し。
校内全体が甘い空気に包まれている今日は、2月14日。
女性が好きな男にチョコを渡すという、メディアが作り上げた特に意味のないイベントの日だ。
僕のように、付き合っている人がいない男にとっては無関係な行事ともいえる。
「タイオンさぁ、ホッカイロ持ってねぇ?体育寒すぎるから持っておきたいんだけど」
「残念ながら持ってないな」
「えー、持っとけよアタシのために」
「自分で買いなさい。全力疾走してればそのうち暖かくなるだろ」
「根性論すぎんだろ」
階段を登り切ってからも、実のない会話は続く。
僕のような男には、バレンタインなんて縁もゆかりっもない行事だが、ユーニにとってはきっと違う。
彼女は女子だし、チョコの一つくらい用意しているだろう。
友チョコだの義理チョコだのとわざわざ定義して、男女関係なくクラス中にチョコを配り歩いているボランティア精神あふれる女子もいる。
ユーニもその類なのではないかと期待している自分がいた。
「体育マフラー巻きながら受けたら怒られっかな?」
「流石にダメだろ」
「手袋ならバレないかも?」
「観念して半袖半ズボンで参加するんだな」
「いやいやせめて長袖のジャージ着させろよ」
廊下を歩いていると、あっという間にユーニの教室の前まで到着してしまった。
実質5分。体感10秒。
あまりにも早く思えたこの時間を何とか引き伸ばしたいけれど、彼女をこのまま教室の外に留めておける大義名分はどこにも見つからなかった。
「じゃあな」
「あぁ」
軽く手を振り、ユーニが教室の中へ引っ込んでいく。
呆気なく背中を向けてきた彼女の様子に落胆を隠せかった。
今日、ユーニと話す機会は3回あった。
1回目は朝下駄箱でばったり会ったとき。2回目は3限目の選択授業で同じになった音楽の授業で隣に座ったとき。そして3回目は今。
3回ともチョコを渡す気配など微塵も見せず、全く違う話題を振ってきた。
ユーニの顔を見るたび、廊下ですれ違うたび無様に期待している自分がなんだか哀れに思える。
まぁいい。別にいい。
既にクラスの女子何人かから義理チョコを貰っている。
クラス全員の男子に平等に配られていたものだが、チョコはチョコだ。
ユーニから貰えなかったとしても、落胆するほどのことじゃない。
代わりのチョコはいくらでもあ
「あっ、ちょっと待ってタイオン!」
突然ユーニに呼び止められたことで、僕の身体は反射的に踵を返す。
彼女が立っている教室の扉の前へ光の速さで戻ると、ユーニは“渡したいものがあるんだった”と言い残し駆け足で自分の席へと向かう。
自席の荷物をごそごそ漁り始めたユーニの姿を見つめながら、期待感が高まっていく。
渡したいものか。2月14日に渡したいものがあるのか。僕に。
緩む口元を必死で抑えていると、手に何かを持ったユーニが足早に駆け寄ってきた。
そしてその“何か”を僕に差し出した彼女は、満面の笑みで言い放つ。
「ノアに借りてた電子辞書。代わりに返しておいてくんない?」
急速に浮き上がった心が、容赦なく地面に叩き落される。
口元の緩みが一瞬で元に戻ったのは、目の前にいる思わせぶりな同級生に腹が立ったからだ。
分かってる。ユーニは悪くない。僕が勝手に期待しただけだ。
差し出された電子辞書を片手で受け取ると、舌打ちしたくなる気持ちを抑えつつ“分かった”と頷く。
結局、ユーニからチョコを渡されることはなかった。
足早に自分の教室に戻ると、窓際の席で先に昼食を食べ始めているノアとランツの姿が目に入った。
机を突き合わせて昼食を楽しんでいる二人に近づき、空いている椅子を引いて腰かけると、ランツが“遅かったな”と声をかけてくる。
ゆっくり歩いていたのだから遅くなったのは当たり前だ。
「ノア、ユーニから電子辞書を預かった。代わりに返す」
「あぁありがとう。ユーニに会ったんだな」
「さっき学食の前でな」
サンドイッチを頬張っているノアに先ほど預かった電子辞書を差し出すと、彼は黒い辞書を片手でひょいと受け取った。
ノアやランツはこの高校に入学して知り合った比較的新しい友人だが、ふたりとも気のいい男で一緒にいて楽だった。
先ほどまで一緒にいたユーニとは幼馴染らしく、それを知ったのは夏ごろのこと。
彼女の幼馴染と親しくなったのは偶然だが、2人のおかげでユーニとは複数人で放課後遊びに行く程度の関係を保てている。
彼女と一緒だったことを知るや否や、おにぎりを頬張っていたランツは前のめりに身を乗り出しニヤニヤしながら聞いてきた。
「チョコ貰ったか?」
絶対に聞かれると思った。
答える気になれず無視しておにぎりの封を開けはじめると、そんな僕の様子に察しがついたらしいランツはゲラゲラと声を挙げて笑う。
「貰えなかったんだな!賭けは俺の勝ちだなノア」
「君たち、僕がチョコを貰えるか貰えないかで賭けをしてたのか」
「まぁな。俺は貰えない方に500円賭けてた」
「はぁ……」
「ごめんごめん。けど貰えなかったのか。ユーニのことだから、タイオンにだけはあげるつもりだと思ってたのに」
ノアからの申し訳程度のフォローが余計に痛い。
どうやらこのふたりもユーニからはチョコを貰っていなかったようで、そこだけが唯一救いに思えた。
きっと誰にもあげていないのだろう。
クラスの男子全員に配る人がいれば、だれにも渡さない人がいてもおかしくはない。
そうだ。きっとそうに違いない。
「まぁ、彼氏以外に渡す気ないって前言ってたからな」
ランツの口からさらりと告げられた事実が、僕の胸を鋭く貫く。
既に承知しているはずの事実なのに、耳にするたび胸を痛めているなんて無駄だ。
そう思っていても、やはり心は痛みに素直なもので、顔が自然と引きつってしまう。
僕の反応を見てランツは焦ったらしく、“やべっ”と小さく呟く声が聞こえてきた。
「き、気にすんなってタイオン!どうせ明日には別れてるって」
「気休めは言わない方がいいと思うぞ、ランツ」
「だってよォ……」
ノアの言う通りだ。
“どうせ別れる”。そう言い聞かせて早くも2カ月以上が経過した。
去年のクリスマス頃、ユーニから彼氏ができたと知らされてから今日まで、破局という名の朗報は未だもたらされてはいない。
それどころか、ユーニは実に幸せそうで生き生きとしている。
彼氏がいなかった頃の彼女を知っているだけに、日々可愛らしさに磨きをかけていくユーニの様子を見るのがつらかった。
ユーニが纏う可愛らしさは全て、“彼氏”のためだけに作られているのだから。
僕が貰えなかったチョコを、“彼氏”とやらは容易に堪能しているのだろう。
腹立たしい。けれど仕方がない。
高校入学直後、桜が散って間もなかったあの頃、ユーニから渡された好意を僕は断ってしまった。
あの時、正しい選択をしていたら今頃ユーニの“彼氏”は僕が名乗っていたのだろう。
考えても仕方がないとわかっていながら、無意味なIFばかり想像してしまうのは、僕があの日の選択を後悔しているからに他ならないからだ。
昼休みが終わると、チャイムと共に現代文の担当教諭が教室に入ってきた。
ユーニは堂々と寝るなんて言っていたが、確かに現代文の授業は眠くなる。
午後の日差しが入ってくるこの時間は、窓側の席に腰かけている僕にとって睡魔と必死に格闘する時間でもある。
教師が黒板に向かって黙々と板書している背中をぼーっと見ていると、不意に遠くから複数人の笑い声が小さく聞こえてきた。
窓の外、グラウンドからの声だ。
視線を向けると、そこには外で走り込みを行っている隣のクラスの生徒たちの姿が見えた。
その中には、ユーニの姿もある。
彼女は目立つから、探さずともすぐに見つかった。
同じクラスで友人のセナと二人並んで楽しそうに笑いながらランニングしている。
あんなに嫌そうにしていた割に、随分と楽しそうじゃないか。
跳ねるような笑顔ではしゃいでいるユーニを見下ろしていると、自然と口元が緩む。
今でも信じられない。あんなに可愛い子が、一瞬でも僕を好きになってくれただなんて。
けれど、彼女の視線が僕へと向かうことはもうない。
ユーニには既に、彼氏がいるのだから。
***
帰りのホームルームが終了し、クラスメイト達は各々の用事へと向かう。
部活へ向かうもの、バイトにいそしむもの、友人と出かけるもの。
部活もバイトもしていない僕は、誰からも誘いがなければまっすぐ家に帰るしかない。
今日は2月14日。恋人と過ごす日としてはクリスマスの次にふさわしい日と言えるだろう。
僕は友人が多い方ではない。
そんな僕でもノアやランツは胸を張って“親しい”と言いきれるが、残念ながら二人とも恋人がいる。
2人の彼女はどちらも僕と同じ中学出身で、ノアの彼女は一つ年上の吹奏楽部部長、ミオ。
ランツの彼女はユーニと同じクラスの同級生、セナだ。
ふたりとも自分の彼女からチョコを貰いに行くのだろう。こちらが放課後の誘いをかける隙もなく、ホームルームが終わった途端即座に教室から消えてしまった。
全く、今日という日は恋人のいない独り身には肩身が狭すぎる。
教室を出て階段を降り、下駄箱で作を履き替えると、隣の下駄箱の陰からひょっこりと見知った顔が現れた。ユーニである。
丸いもふもふのマスコットを着けた革鞄を肩にかけた彼女は、僕の顔を見ると“あっ”と声を漏らす。
彼女と遭遇を果たしたのは今日で4回目だが、3回も空振りを食らっているこの状況のせいであまり喜べなかった。
「今帰り?」
「あぁ」
「ノアに電子辞書渡してくれた?」
「いや。なくした」
「はぁっ?」
「冗談だ。ちゃんと渡した」
「なんだよその無意味な嘘……」
くだらない冗談を言ったのは、なんとなくユーニに苛立ちを感じていたから。
どうせ今から彼氏と出かけるのだろう。
彼氏のためだけに作ったチョコを携えて、可愛らしく微笑みながら渡すのだろう。
苛立ちを感じない方がおかしいだろ、そんなの。
「タイオン、今日もチャリ?」
「あぁ」
「じゃあ一緒に帰る?」
「また足に使う気だろ。断る」
「あー、バレたか」
帰るタイミングが重なると、ユーニはたびたび僕の自転車の後ろに乗りたがった。
彼女は電車通学だから、僕の後ろに乗ることで駅まで歩くための労力を削ろうという魂胆なのだろう。
いつもは快く引き受けている僕だが、今日ばかりは受け入れられない。
彼氏に会いに行くための足なんかに誰がなるか。
ぴしゃりと断ると、ユーニは苦笑いを浮かべながら先に歩き出した。
正面玄関をくぐり、わずかな階段を降り始めたその時。不意にユーニが何かを思い出したかのように足を止め、こちらを振り返る。
「これ食う?」
「ん?」
鞄の中から何かを取り出し掲げているが、視力がそこまでよくない僕にははっきり視認できなかった。
なんだあれ。眉間にしわを寄せてじっと見ていると、彼女は手に持ったその小さな袋を突然投げてきた。
急に投げられた袋に驚き、思わずキャッチする。
手に持った袋には、可愛らしいフォントで“チロルチョコ”と印字されていた。
「なんだこれ」
「ビターチョコだって。あげる」
「思いっきり食べかけじゃないか」
「バレンタインのチョコってことで」
「は、はぁ?これがか?」
「彼氏以外の男はタイオンにしか渡してないからな。感謝しろよー?」
後ろ手に手を振りながら遠ざかっていくユーニに、“こんなのいらない”とは言えなかった。
投げつけられた手元のチロルチョコへと視線を落とす。
こんなスーパーで100円程度で売られているチョコの詰め合わせ、なんの特別感もない。
しかも食べかけだ。どうせ僕のために用意されたものじゃない。
なのに、心のどこかで喜んでいる自分がいる。
彼氏以外の男はタイオンにしか渡してない。
嘘か本当か知らないが、この言葉一つで飛び上がりたくなるくらい喜んでしまっている。
単純な自分が嫌になる。
君が今から彼氏とやらに届けに行くそのチョコレート、何かの手違いで僕のモノになればいいのに。
そんなことを考えてしまうほどに、僕はユーニが好きなのだ。