キミのすきなところ「なぁなぁタイオン」
「ん?」
「アタシの良いところ挙げて?」
「は?」
「アタシの長所。出来る限り挙げて」
「なんだ急に」
「相方から見てアタシの良いところってどこ?はい、ほら、挙げろっ!」
「はぁ……」
「おい露骨に面倒くさそうな顔するのやめろよ。せっかくアタシと2人きりで話してるんだからもっとウキウキした感じで話せよ」
「実際面倒なんだから仕方ない。というか“出来る限り挙げろ”と言われても困る。せめて個数の制限を設けてくれ」
「じゃあ200個」
「よし分かった。じゃあまずは君のこの髪の毛一本が綺麗だと思う。はい一つ目。こっちの髪一本も綺麗だと思う。はい二つ目。続いてこっちの髪も……」
「細けぇよ。髪1本1本褒められても嬉しくねぇって」
「そう思うならもっと個数を絞ってくれ。長所を200個も挙げられるわけないだろ。イスルギ軍務長相手なら話は別だが……」
「イスルギの長所なら200個挙げられるんだ。キショっ」
「おい」
「じゃあ仕方ねぇ。半分減らして100個にしてやるよ」
「君は本当に優しいな。でもな、100個もまだ無理があると思うんだ僕は」
「はぁ?アタシの長所100個も言えねぇっての?それでもアタシの相方かよ」
「じゃあ聞くが君は僕の長所を100個を言えるのか?」
「何言ってんだお前言えるわけねぇだろ」
「今までこんなにも理不尽を感じたことがあっただろうか」
「タイオンの長所かぁ……。うーん。どう頑張っても2個しか……」
「少なすぎるだろもっと頑張れ。せめて倍の4個くらいは絞り出してくれ」
「んじゃあタイオンはアタシの長所4個は言えるんだな?」
「え?あぁ、まぁ……。言えるんじゃないか?むしろもう少し……」
「ならこうしようぜ。ラリー形式で相手の長所を言っていく。4個挙げて相手をより喜ばせたほうが勝ち」
「はぁ。なんだその羞恥心しか生まないようなゲームは」
「やなの?」
「まぁ別に構わないが……」
「やったぜ。じゃあタイオンからどうぞ」
「え?僕からなのか?普通言い出した君からだろ」
「レディーファーストって言葉知らねぇの?」
「知っているが絶対使いどころ違うぞ」
「いいからほら、はーやーくー!」
「あぁもうわかった分かった。えぇっと、ユーニのいいところ……?」
「そう。アタシの尊敬出来て素晴らしいと思えるところ」
「さりげなくハードルを上げるな。そうだな……。やはりエーテルの取り扱いは一流だと思う。回復エーテルを使わせたら右に出る者はいないだろうな」
「……」
「何だその不満そうな顔は」
「つまんねー回答だなァ。の顔」
「ちゃんと褒めただろ これに面白いとかつまらないとかあるか」
「じゃあ次は?」
「次?えっとそうだな……。いや待て。ラリー形式で言い合う約束だろ。次は君が僕の長所を言う番だ」
「チッ……」
「“バレたか”みたいな舌打ちはやめなさい」
「タイオンの長所かぁ。うーん。いっぱいあるよ?数えきれねぇほどあるよ?」
「なら早く言え」
「そうだなぁ。うーん。えー……」
「……」
「スゥー……。んーっと……」
「もう君がダウンしても助け起こしてやらない」
「ちょ、ごめんて!うそうそ!タイオンのいいところだろ?あれだよあれ!マフラー長すぎて時々地面に引きずっちまってるところ」
「……それのどこが長所なんだ?」
「時々ランツとかに踏んづけられて“グェッ”ってなってるけど平静を装ってるところとかすごく尊敬してる」
「ちょっと馬鹿にしてないか?」
「ほら次タイオンの番」
「納得がいかないが、まぁいい。そうだな……。共感性が高いところだろうか。相手の気持ちに寄り添ってもらい泣きしたり、相手の気持ちをよく知ったうえで接し方を考えるところがあるだろ、君は。そういうのは誰にでも出来る事じゃないと思う」
「ふぅん」
「え……。反応薄過ぎないか?それなりに褒めたつもりなんだが」
「あ、ゴメンあんまり聞いてなかった。なに?“顔が可愛いところ”?」
「言ってない!」
「じゃあ次アタシな?タイオンの好きなところはァー。戦う時の戦略が引くくらいネチネチしてるところかなー」
「それは悪口じゃないのか?」
「粘着質というかしつこいというか性格悪いというか、すっごいよな。よくそんな性悪な作戦思いつくなって毎回感心してる」
「僕は今罵倒されてるのか?」
「違う違う、褒めてる」
「あ、あぁ、そうか。褒められてるのか……。そうか、そうだよな。涙が出そうだ」
「はい次タイオン。アタシの好きなところ3つ目は?」
「そうだな……。口は悪いが、なんだかんだ優しいところだろうか。落ち込んでいる仲間がいればすぐに歩み寄って背中を押しているだろ。自分も繊細なタイプだというのに人のことを気にかけられるところはその……。好ましいと思う」
「そういえばさぁ、タイオンに言ってなかったことがあるんだけどさぁ」
「すごい勢いで話を変えるんだな君は。というか聞け。僕の僕の話を聞け」
「アタシこの前ノアとキスしちまったんだよなぁ」
「は?」
「キス。ノアと」
「きっ……え?き、キスって、あの?」
「うん」
「えっ、あっ、えぇ?いや……、ほ、本当に?」
「嘘だけど」
「は、はあぁぁぁっ なんだその生産性のない嘘は!意味が分からない!」
「何怒ってんの?」
「怒るだろそりゃ!というかそんなろくでもない嘘をつくな!悪いと思わないのか」
「ミオに?」
「僕にだ」
「ははっ、タイオンの好きなところ3つ目はそういうところかな」
「そういうところ?」
「アタシが揶揄って冗談言うと真っ赤になってぷりぷり怒るところ」
「なっ……、き、君はそういう……!」
「じゃあほら、最後。アタシの好きなところ4つ目は?」
「本当に調子がいいな君は。はぁ……。4つ目の好きなところか……」
「うん。なになに?」
「そ、そうだな……。僕のハーブティーを気に入ってくれているところだろうか。差し出すたびに嬉しそうにしているから用意し甲斐があるし、やっぱり自分が拘って作っているものを気に入ってくれるのは、その、嬉しいから……」
「だって美味いもんな、タイオンのハーブティー」
「え?」
「ん?なに?」
「い、いや……。今回はちゃんと聞いてたんだな」
「ずっと聞いてたって。好きなところ1つ目は顔が可愛いところで、2つ目は羽根が綺麗なところ。3つ目は性格がいいところだろ?」
「君が少しも僕の話を聞いていないことはよく分かった」
「じゃあアタシの番な?タイオンの好きなところ4つ目は……」
「はぁ、どうせまた悪口だろ?」
「最初は“お互いの長所”を言い合うルールだったのに、いつの間にか“お互いの好きなところ”を言い合ってる事実に気付いてないところ、とか?」
「えっ……」
「そういう迂闊なところ、結構好きだぜ?タイオン」
「っ……、」
「顔、めちゃくちゃ赤くなってるじゃん」
「だ、騙したのかユーニ!卑怯だぞ!」
「勝手に引っ掛かったのはそっちじゃね?へー。タイオンはアタシのエーテルの扱いが上手いところとか共感性が高いところとか優しいところとかハーブティーを嬉しそうに飲んでるところが好きなのかァー、へぇ~~~?」
「ぜ、全部聞いてるじゃないか!」
「当たり前だろ?5つ目もあるなら聞いてやってもいいんだぜ?」
「だ、誰が言うか!死んでも言わない!」
END