「おい……これはなんだ」
絶賛、在宅ワーク中でPCと睨み合っている賢王(キャスター・ギルガメッシュ)。その背後に立ち、彼の肩を一定のリズムで叩くセイバー(アルトリア)。
「マ、マッサージです」
「それはわかる。我は理由を聞いておるのだ」
A
「えっと……最近、働き詰めだと聞いたので……」
「ほう?」
「たまにはリラックスして英気を養うのも大事かと思いまして!」
「ふむ。一理あるな」
納得したのか、キャスターは椅子を回転させて後ろを振り返る。
A
そして、セイバーの腰に手を回し、抱きつく体勢となった。さながら母親に甘える子供のようだ。
「なっ、急にどうしたんですか」
「貴様が言ったではないか。リラックスをしろと」
「言いましたけども……」
これはさすがに、と戸惑いを示すセイバーに思わず笑みを溢す。この女もやはり愛い。普段は理知的で大人なキャスターだが、その本質はやはり“ギルガメッシュ”。久しく忘れていた愉悦を思い出す。
すると、急にわざとらしくため息を吐いた。
「はぁ……まだ癒されたりんな」
「えぇ……?」
キャスターはまたわざとらしくため息をつき、チラチラと上目遣いで視線を送る。これには流石のセイバーも、何かをしなければならない気持ちに駆られる。云々と悩んだ末——
「いつも、お疲れ様です」
おずおずと慣れない手つきで、優しく目の前の頭を撫でた。
A
「ん……」
キャスターはその心地良さに目を細める。普段、他人に触れられることのない髪や肌だ。それが今は自分より背の低い少女の手に委ねられている。
そう考えるだけで胸の奥底から湧き上がるものがあった。
「もっと撫でよ」
A
「はいはい。もう、今日の貴方はそういう日だと思うことにします」
今度はセイバーがやれやれといった様子でため息をついた。だが、キャスターに向けるその顔はどことなく嬉しそうであった。
この後、しばらく撫で続けた結果……キャスターが眠ってしまい、身動きが取れなくなったセイバー。その現場を帰宅したランサーが目撃し、彼女に笑われ恥ずかしい思いをするのであった。